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私、食べる、そして──。  作者: 御伽ノRe:アル


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23/79

23.裏─貧困層の遺児。

親父は死んでしまった。


碌でも無い仕事をしていたのは知っていた。


でも、親父もその部下も母も全員あの夜に居なくなった。


そして、俺は遺児になった。


同じ様な奴は沢山居た。


辺りを見渡せば、俺が見たことのある奴も居た。


けれども、ソイツは現実を受け入れられないのか、ボンヤリと空を見ては、大人に蹴飛ばされては、そのままになっていた。


ああ、ここは貧民街になった。


いや、ゴミの掃き溜めか。

ゴミみたいな世界でゴミのような仕事をしていた奴らの行き着いた場所だ。


金なんて無い。


あの夜に金も、物も、者も、全部一緒くたに消えたんだ。


一度、街中へ入ろうとした大人が居たが、叩きのめされてはまた、こちら側へ放り込まれていた。


俺達の根城はもう無い。


そうか、これが貧困か。


奴隷を見ては濁った目をしてると思ったが、俺もお似合いになったようだ。


ある日、俺より少し下の子供達が苦しく喘いでは、嘔吐と血のような涙を肌から噴き出しては死んでしまった。


それも多数だ。


大人も年寄りも気味悪がっては子供たちを叩き出しては一箇所に纏めては放置した。

その日、子供が俺の前から消えた。


次の日はジジイ共が呼吸困難と尋常じゃない汗とビクビクとずっと身体をのたうち回らせては事切れた。


その時点で大人や、大人になりかけの俺はビビった。


だから、その現実から逃げようと街中へと助けを求めて押し掛けたが、向こうも同じだったのだろう。


門を固く閉ざしては、無理やり入ろうとするものが居たら、最初は威嚇だったが、後半は何人も死んだ。


3日目は脱水症状というやつだったか。

水がどうしても呑みたくて、呑んだり奴が居たが、その瞬間に肌の色が変容しては身体を不規則に震えさせては血や色んなものを全身から噴き出しては事切れていた。


俺達は恐怖した。

俺は知恵があったようだ。

咄嗟にそいつの放った空気を吸ってはいけないと思った。


親父から教わった。麻薬などの取り扱いや、母から教わった劇物の取り扱いを思い出したからだ。


咄嗟に隣りに居た、うずくまっては生きる気力を失くした奴から着ぐるみを剝いではそれを頭に巻きつけて、身体を出来るだけ屈めて空気の入りこまないような場所へと身を隠した。


それが功を成したのだろう。

その後に俺から見える範囲の人間は皆、同じように変容しては死んでいった。


俺はその地獄のような光景を見ては戦慄していた。


生き残った。


そう思った。


でも、違った。


街中の奴らはここを恐れた。


恐れとはどうしょうもないほどに人を狂気にも陥れる。


俺はそれを忘れていた。


奴らは俺達、いや、俺に向かっては火を放っては貧民街を根絶やしに燃やそうとした。


俺は火の手から逃れるように逃げた。


生き残る方へ、生き残る方へ、これが生存戦略だと本能が告げていた。


そんな本能が突然、警告を発したような気がした。


目の前を見たら、妙齢の女性が立っては──アレは子供を喰らっていた。


「おや? 生き残りが居たのですね。素晴らしい」


「凄く、俺が今まで生きてきた中で一番綺麗な女だろう。だけれども、生気を感じない。いや、違う。俺は知らない内に手足が震えては尻もちをついていた」


逃げないと──。


逃げないと──。


本能がけたたましい程に鳴っている。


「ん? あぁ、優秀なはずだ。彼らと彼女の子供か」


「なんだ? どうして、親父と母の名前を、知っ、て……」


「ん? 察しが悪いね。あぁ、人間は環境次第でその能力が十全に活かされないのだっけ? 確か人材教育? だったかな。適材適所っていうやつか。君はこの場所には不慣れなようだね」


「不慣れ? 何、を言って、いる」


こんな地獄のような場所に慣れてる奴は既に人間じゃない。


なら、コイツは人間なのか?


「ああ、イイね。知性を感じる目だ。私を考えてくれてるのかな? それも記憶で知ろう。感じた事や気持ち、経験は私は食べれば幾らかは分かるから。ああ、答え合わせを先に言っちゃったね? こう言うのを、つまらない事を言うな、と言うんだっけ? ごめんなさい」


「な、にを言って──!」


「ちょっと、煩いね。目を向けられると困るから少し黙ろうか?」


ヒュッ、と音がしては。

カヒュカヒュと耳に音が聞こえてくる。


いや、違う。

俺の喉が切られたのだ。


「あれ? あぁ、脆いんだ。死んじゃうのか。大丈夫、この後食べてあげるよ。残さずに出来るだけ食べて、糧にするのが大切らしいよ。お残しは許しませんって、食堂のおばちゃんも良く言っていたからね。私は良く、学んだよ。偉いと思わない?」


「──カヒュ、カヒュ」


あぁ、クソ。なんだ、コレ。なんだ、コイツは。

あぁ、視界が真っ暗になって──。


──イタダキマス。

そう、最期に聴こえた気がした。

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