21.裏─冒険者の街の行方不明者。
「なぁ、聞いたか? 冒険者ギルドで討伐、捕縛依頼の出ている犯罪者がどんどん消えているらしい」
「なんだ、それは?」
「さぁ、分からねぇ」
そんな噂話が冒険者ギルド内でも噂されるようになったのは、とある犯罪者集団のアジトが森の中の洞窟で見つかったのだが、彼らの物だと思われる犯罪道具や証拠が残されては当人達が消えていたからである。
余りに不自然な事だった為に、皆が不安がったが、その後は個人個人の犯罪者としてクエストにも挙げられたり、賞金首になっている者が頭だけ残されては殺されていたりと、その話には拍車が掛かることになっていく。
ただ、殺された、消えたというのも犯罪者ばかりであり、自分達には関係が無く、むしろ平和になったと喜ぶ住民が増えたくらいだ。
ただ、内容は人殺しに人拐いだ。
衛兵に限っては目を睨めませては犯罪を見逃さないように表の世界に多くの人員を割くことになった。
そんな中で、裏の世界では異変がそこかしこで起きていた。
「父さん! 父さん! お、お前は誰だ?!」
「あー、あー。子供が転がり込んでいたとは予想外だ」
「ッ! おい! 護衛! 護衛! どうした! なんで来ない!」
「護衛とはコレのことか?」
ゴロゴロと首が沢山、男の手から転がり落ちてくる。
「ヒィ?!」
「ああ、1人だから怖いんだな。人間は1人だと生きられないと俺は覚えた。だから、大丈夫だ。皆とお揃いにしてあげよう。皆と一緒だと幸せなのだろう?」
「お、ま、えは……何を言って──」
「どうしたの? 悲鳴なんか、あげて貴方……キャッ」
バチュンッと音がなっては母の首から上が消えていた。
いや、ビュッーと首から血が天井に赤い赤い水を吹き立たせていた。
バタンッと母だった者が床に落ちるのと同時に闇に沈んでいく。
気付けば、あんなに飛び散っていた血も消えていた。
「ああ、予定外だったが。この女は良く学んでいるようだ。なるほど、芸が達者というやつか。ふむ、素晴らしい!」
「お、ま、えはなんなんだ……」
股から、盛大に漏れ出ていたと、冷たい感触で気付くが、もうそんな所の話ではない。
立って逃げないと……でも、足が震えて立てない。動けない。
「ああ、情けない。こんな状態の人間の事を指すのだろう? 合っているか? あぁ、話せないというやつか、なら大丈夫だ。記憶に聞こう。今日は一気に沢山、沢山、食べる予定なんだ。だから、イタダキマス」
「え?」
そうして、俺の意識はそこで消えた。
──幾らかの経験値とスキルを得ました。
その日、一夜にして裏の世界の闇は大きく晴れたのだった。
「なぁ、冒険者の数が減っていないか?」
「いや、迷惑な奴が減ったんだろ? 居心地が悪くなって出ていったんじゃねぇか?」
「よぉ! アメリアちゃん! 最近は平和だな! だが、ダンジョンからの出土品がショボくなって仕方ないぜ。噂のソロ冒険者にでも勝手に攻略されちまったのかね?」
「どうなんでしょう? でも、私はいつか皆様が活躍する日を期待していますよ」
「おお! そうか! なら! 頑張らないとな!」
そんな日常的な冒険者ギルドの一風景がそこにはあった。
けれども、確かに大きな何かが変わったのだ。
陽の光に照らされている者には分からないほど大きく、闇がポッカリと不自然に晴れていたのだ。
そして、大きく路頭に迷う人が出る。
影に生きられなくなった人、そして、影を狩られては孤独になった子供達。
ポッカリと空いた闇には新たな闇が巣食うまで、成長するまで何かは観察することにでもなるのだろう。




