午前4時 神社の狛犬の横
午前4時。まだ朝日が昇るにははやい時間だ。僕は毎日この時間に家を抜け出して近所の神社に行っている。目当ては神社にいる女の子。いつもセーラー服で少し前の髪型をして、狛犬のそばに座っている。
「あ、やっと来た。きみいつも遅くない?」
「遅くないから。今以上はやいと補導に引っかかるんだよ。」
「そっか。じゃあこれからも気長に待ってるよ。」
女の子の名前はレイコ、今の時代で言うなら高校1年生らしい。
「今日はなんの話してくれるの?」
「いつも僕が話してる気がするんだけど…」
「私の話なんて楽しくないでしょ?」
「教科書の話が正しいかわかるし面白いかもよ。」
「でも今日はきみの番。ね?」
「わかった。じゃあ今日は……」
神社に通い始めてだいたい2ヶ月くらい経つが、一度もレイコの話をしてくれない。なぜ話してくれないのか聞くことはもう諦めた。聞いたところでレイコは話を逸らす。
「…みたいな感じで行方不明者が多発してるんだよね。」
「その行方不明者って今何人くらいなの?」
「今は…3人かな。」
「共通点は身長が160cmくらいで視力が悪い人。」
「そう。でもなんで共通点が身長と視力なんだ…?」
最近学校周辺の地域で行方不明者が多発している。年齢や性別は関係なく、身長が160cm前後で視力が悪い人が行方不明になっている。
「視力が悪いって言うのが引っかかるんだよね。」
「僕は全く引っかからなかった。なにが引っかかったの?」
「だって、メガネをかけてるんじゃなくて“視力が悪い“なんだよ。前に話してたコンタクト?をつけている人も対象ってことでしょ?」
確かに、メガネをかけている人だったら簡単に見分けられるが、行方不明者のうち2人がコンタクトなのだ。
「確かにそうだな。…レイコはこの話の原因なんだと思う?」
「可能性として高いのは八尺様かな。私の時代も行方不明系の事件あったんだけどその時に死亡者ゼロで帰ってきた人たちが口を合わせて八尺様のご加護だと言い続けてた。」
「八尺様って…最終的には殺されて終わるんじゃなかった…?」
八尺様とは身長が約240cmと高く、白や黒のワンピース姿が多く、女性の場合が多い。インターネット上には男性化した八尺様が存在する…らしい。
「そうなんだけど、全員が死んでない上にご加護だって言ってたんだよね。」
「ご加護っていうのも本当に加護だったのかわからないよな。」
「昔の失踪事件は失踪から1ヶ月して帰ってきたんだけど今回も同じ状態なのかはわからないから、調べるなら私も協力するよ。」
「気になることが多いし調べてみるよ。レイコは昔八尺様が発生していた場所を調べてもらえる?」
「わかった。情報が得られたら随時教えるね。」
「じゃあ時間になったから帰るね。」
「了解。じゃあ情報得たらまた。」
「OK。じゃ、また。」