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第五話

「さやかー!

次はこれするぞ!」


「はい、はい」


「ハイは一回!」


「‥‥はぁい」




今日が休みでよかった。


甥っ子の雄太がせっせと新しいゲームを用意するのを見ながら、改めて感じた。


だって‥どんな顔して水上さんに会えばいいのか、、

わかんないよ‥



なんであんな、、あんなコト‥‥



*****



なにかが当たった‥


そう感じた次の瞬間にみえたのは水上さんの伏せた長いまつげだった


「‥‥‥‥えっ」


思わず漏れた声で、思考が呼び戻された



「な‥なに、、‥?!」


抗議しようとした声は


押しつけられた水上さんの肩に吸い込まれていった。



「あっ‥ぁ、、あの‥」



押しつらけた体に手を入れて抵抗を試みるが、


ますます強く抱き締められてしまう。。。



「‥‥‥」


「え‥?」



吐息のような囁きに思わず声が漏れた。。。



「‥か、、さやか‥」



うなさているような呟きに体が動かなくなった。



水上さんの声だけが頭の中をぐるぐる回って、何も考えられない。


抵抗しようとしていた手も硬直するのに、、


心臓だけがバクバクいつもより早く波打っている。




「‥み‥水上、、さ‥ん‥?」



ようやく出た私の声にハッとした水上さんは、


「‥ごめん。忘れて」


と、一言残して、資料室を出て行った。

その姿を見送りながら、私はボーゼンと座り込むことしかできなかった。。




その後、どうやってかえって来たのかあまり覚えてない。。




「さやか」って誰のことだろ?

私‥、、じゃないよね?

彼女とか? 大事な人とか??



なにより‥

私、なんで平気だったんだろう‥??



いつも感じるあの背筋に冷や汗が流れるような嫌悪感がまったくなかった。。



今までにだって付き合った人なら何人かいた。でも誰とも長続きしなかった。

手をつなぐことはできるのに、どうしてもそれ以上に進めないのだ。触れられることにどうしようもない嫌悪感を感じてしまう。


なのに‥なんで、あの人は大丈夫なんだろぅ、、?




「‥やか、‥さやか?」


「へっ?!」


「‥はらいたいのか?」


呼び声にはっとすると、雄太が心配そうに覗きこんでいて、長い間、考え込んでいたことに気付いた。



「ご、ごめんね!大丈夫だよ!

雄太はやさしいねぇ。


お昼ご飯なにかかんがえてたの!」


「さやかはくいしんぼーだな!」


あからさまにホッとした雄太の頭をなでていると、玄関から声がした。


「ただいまー」

「おじゃまします〜」


「パパとママだ!」


その声に雄太はゲームのコントローラーを放り出して駆け出した。


「‥まったくー」


やりかけのゲームを片付けていると、


「紗香ちゃんが雄太と遊んでてくれたの? せっかくのお休みなのにごめんね」


雄太と手をつなぎながら、お腹の大きな涼子さんと大量の荷物を抱えたヤス兄が入って来た。



「涼子さん、ヤス兄、いらっしゃーい。

病院大丈夫でした〜?」


「うん、順調だって。検診のたびに雄太預かってもらっちゃってごめんなさいね」


「全然、大丈夫ですよ〜」


八歳も年の離れたヤス兄、こと望月泰の奥さんである涼子さんは妊娠七ヵ月。


桜が咲く頃に雄太の妹が生まれる予定だ。


「待遠しいですねぇ」




その後、軽くお茶をしてからヤス兄達は帰っていった。


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