第三話
「‥はい。
‥‥‥‥はい、完了しました。宜しくお願いします。」
そう言って、電話をおいて、
「おわったぁぁぁ」
思わず出たセリフに隣の先輩のクスクス笑い。
だってなんかよく分からない揉め方してたんだもーーん!!
とりあえず、次のトラブル電話が来る前に休憩室にプチ逃避。
休憩室着くとなんか聞いたことある声‥
「あ、赤坂先輩!
と、大沢さん、沖田さんもどうしたんですか~? こんなとこで。」
「あら、もっちゃん。いいところに! 明日の夜お暇?」
「明日ですか? 暇ですよ~! 何かあるんですか??」
「明日金曜だし、せっかくだから結成会ってことで飲みに行こうっていってたのよ~
どう?」
「結成会ってプロジェクトの? 大賛成です~」
みんながうんうんうなずくのをみて言った私に、
「じゃぁ、そーゆーことで!詳細はメールするね!」
と赤坂先輩と沖田さんは仕事があるからと席に戻っていった。
残された私と大沢さん。
き‥気まずい。。。
人見知りじゃないけど、、こんな美形を目の前にしたらなに話していいかわんないし!!
「望月さんは、入社して何年目なの?」
「え? あ、二年目です。」
突然の質問になんとか答えると
「そーなんだ、若いんだねぇ。てっきり水上と同じくらいかと思ってたよ」
「水上さんって‥」
「確か四年目くらいだったかな。」
「四年目‥、老けてるってことですか?」
思わず顔をしかめてしまう。
「いやいや、そーゆー意味じゃないよ!
プロジェクトメンバーなんて入ってるからそれくらいかなーとね。」
「あぁ、、そぅですよね。フツーそうですもんね。
なんかうち、最近、寿事が多くて、なんの予定もない私にまわってきたんです。」
苦笑しながら答えるわたしに、大沢さんも笑った。
「そぅだ、もしかしたらもう聞いてるかもですが、
大沢さんと水上さんがこっちにいる間のアシスタント、私になったんです。
よろしくお願いします」
と握手の手を差し出すと握り返された。
「こちらこそよろしくね。
水上、そーゆーことらしいから。
じゃぁ、俺は先もどるね」
と、水上さんを休憩室に押し入れて帰っていった。
水上さんってばいつの間にきたんだろう‥
えー‥っと、、やっぱり挨拶かな?
「あ、水上さん、よろしくお願いします。」
握手のために手を出したけど、、
相手に動く気配はない。むしろ手をガン見されてる‥?
「あ、、あのー‥水上さん?」
「‥‥おまえ、、」
「え?」
いや、不機嫌な顔されても‥
まぁ、それすら絵になりますけど。。
「あのー‥」
段々、手出してるの空しいんですけど‥
彼はふと我に帰ると、
「あ、、あぁ‥よろしく」
と握手だけして来た道を帰っていった。。。
何しにきたんだ、あの人‥?
私の中であの人への疑問だけが重なっていった。
*****
「「「「かんぱ~~~い!」」」」
がちゃん、がちゃんとグラスを合わせてからのみんなの飲む勢い――すごいなぁ。。。
甘いカシスオレンジを啜りながら、傍観する。
「うまい!」
「やっぱり仕事の後はこれだよねぇ~」
と口々にいうアダルト組のジョッキは半分くらいに減っていた。
「‥おやじ」
ぼそっと呟いた水上さん‥
彼のジョッキも三分の一くらい減っている。。。
ちなみに今日の参加者は
大沢さん、水上さん、沖田さん、赤坂先輩、私の五人。
根本さんは『子供の誕生日だから、今日だけは!』って帰っていった。
たしか、35歳も過ぎてから生まれたカワイイ女の子。『高齢出産の上、難産で大変だった』ってきいたことがある。
優しいパパさんなんだろうなー
「それにしても、根本さんにはびっくりしたなぁ」
「あー、あれなぁ。。俺もびびった」
大沢さんと沖田さんの会話にに『なにが??』と疑問符をうかべていると、
「根本さんって前まではほんと仕事一筋で、すごい厳しかったんだよ。」
「そうそう、聞きにいくのすらこわいほどに」
二人が苦笑しながら教えてくれた。
「え、根本さんが?!信じられない‥
でも休憩室とかで会ったら話しかけたりしてくれますよ~」
だって、お子さんの話も休憩室でたまたま会った時、教えてもらったんだもん。
「そーそー、なのにあの豹変ぶり。こっちがびっくりだよな」
「あれは、結婚して子供生まれてからよね~
娘が可愛くて仕方ないって感じだもんね」
そーなんだぁ、、でも優しいパパなのは間違いなさそう!
話はそのままみんなの子供や奥さんの話になっていった。
どーやら、独身なのは大沢さんと水上さん、私だけらしい。。
「へー、大沢さんも独身!モテまくりでしょ~」
赤坂先輩のセリフにうんうん頷いてると、
「望月ちゃん、気をつけなきゃダメだよ~~。コイツ、誠実そうに見えてタラシだから」
ニヤニヤしながら沖田さん。
「‥タラシなんですか?」
「そぅそう、俺が知ってる限りでは、いつも違う子つれてたし」
「オイオイ、勝手なこと言ってるなよ~。
ただ、結婚したくなるような子と出会わなかっただけだって‥
でも望月さんに誤解されるだろ~、ね?」
うっ!その満面スマイルは反則です!!
「もっちゃん、真っ赤だよ~」
自分でも分かってることを赤坂先輩に笑いながら指摘されると、ますます赤くなっちゃうよ~!
しかも大沢さんまで笑ってるし!
「もぅ、からかわないでください~!
水上さんもなにかいって‥」
時間が一瞬‥‥止まった気がした。
でも止まった時を動かすように、、心臓が一回大きくはねたのが自分でも分かった。。
ただ、、唯一笑ってなかった水上さんに助けを求めようとしただけなのに
なんで、、そんな怒ったような眼でみるの‥?
怖いのに、怖いはずなのに‥
なんで私は‥心の底に安心感が広がるの‥??
あなたは‥誰なの??