第一話
「はじめまして。本社から来ました大沢直人です。
今日からしばらくお世話になります。どうぞ宜しくお願いします。」
「同じく水上圭吾です。よろしくお願いします。」
月一の朝会でそう言った彼らに、ウチの部の女の子は浮き足だった。
それもそのはず。ハンパない美形の二人が揃ったのだ。
180cmはありそうな身長と長い手足。整った顔でニッコリ笑う大沢さんと、至極真面目な顔してペコリと頭を下げる水上さん。
しかも、ウチの事業所なんかじゃ滅多にお目にかかれない本社エリート。
目の保養だわ~
その後、一緒にいた彼らの部長の挨拶後、ウチの部長から
「大沢くんと水上くんは今度の本社との合同プロジェクトのメンバーだ。
しばらくこの部にいることになるから、よろしく」
と、紹介があった。
その後も延々と続く話を右から左に聞き流して、
なにが「よろしく」なんだろー?
やっぱり本社から来たってくらいだし、『粗相がないように』ってことかなー。
二人ともいかにもできますって感じだし、エリートだしなー
それにしても美形だな~‥本社ってこんな人達ばっかりなのかな?!
なんてとりとめもないこと考えながら、ぼんやり二人を眺めてると、、
不意に水上さんと目が合った。
その途端、驚くようなものを見たかのように
一瞬、目を見開かれ、、
目を逸らされた。。
なッ!!
‥ちょっと、、失礼じゃない?! たしかに美人でも可愛いくもないけど‥
化け物見たみたいな顔しなくてもいいじゃん!
その時、
「では、合同プロジェクトの顔合せ会議は十時から第三会議室で。メンバーは遅れないように」
と、長かった部長の話が終わって、彼らは出張者用席へついた。
*****
えーーっと、今日の仕事は‥と、、
昨晩のウチに溜まったメールを読みながら、返信をしていると、一件の新着メール。
隣りの部の同期・カナからで、
『ちょっとー!なにあの美形!!
合同プロジェクトのメンバーってことは、紗香一緒に仕事するんでしょ?!
うらやましー!』
と、完全に私用メール。
そうなのだ、私―望月紗香は合同プロジェクトメンバーに選ばれている。
望月紗香―もちづきさやか
地元女子大を卒業して、この会社に入って二年目。
別にトップ入社したとか、実は社長の娘とかなんて全くない、見掛けもフツーの一般社員。
そんな私がそんな大それたプロジェクトになんで?!と思ったりもしたが、、
なんだかんだと忙しいウチの部で一番手が空いてるのが私だったのだ。
‥上司や先輩に『雑用がメインになるだろうけど、今後の良い勉強になるよ』と否応なく押しつけられた。。ま、いーけど。
でも一度、引き受けたからには真面目に取組むつもり。
カナには
『いーでしょー!
役得?(笑)』
って返信してから、十時の会議に遅れないようにパソコンを閉じた。