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田舎令嬢は帝国上級貴族

作者: 桜井正宗

「婚約破棄してくれ」


 それが田舎での出来事だった。

 私は絶望した。

 もうこの田舎にはいられない……。


 深いショックを受けながらも、私は田舎を捨てて帝国へ移住した。

 田舎者ではきっと不遇の扱いを受ける。

 でも、田舎にいるよりはずっといいと思った。

 だから。


 帝国の街を歩いていると、複数の人たちから見られ笑われた。



「なにあれ、ダサーイ」「あれ、田舎令嬢じゃない?」「あれが田舎のドレスなの? 何百年前の流行りなの?」「古臭いわね」「アハハ、笑っちゃう」



 同じくらいの歳の女性貴族が私を馬鹿にしているように見えた。……ああ、やっぱり、田舎令嬢は笑われるんだ。

 来なければよかった。


 耳を塞いで立ち去ろうとした時だった。


「そこの貴女、待ってくれ……!」

「は、はい……?」


 振り向くと、そこには爽やかな笑みを浮かべる金髪の男性がいた。清潔感に溢れ、気品があった。貴族で間違いない。

 こんな立派な人が私に何の用だろう?


「君、名前は?」

「わ、私はレイナ。レイナ・エレイソンです」

「おぉ、エレイソンといえば田舎の……」


 なんだ、この男性も私を馬鹿にしに来たんだ。やっぱり、帝国には来なければよかった……。更に落ち込んでいると、男性は私の手を握った。


「ひゃ!? な、なんですか!?」

「素晴らしい。素晴らしいよ、君は」

「はい……?」

「田舎令嬢はね、帝国貴族よりも『上』なんだ」

「上? ですか……」

「うん、つまりね。田舎令嬢はとても重宝される存在なんだ。帝国貴族の男性にしてみれば、憧れの存在。しかも君はとても美しい……! 僕の心は君に奪われてしまったよ」


 ぎゅうぎゅうと手を握られ、私は顔が爆発しそうになるほど真っ赤になった。いきなり、この人なんなの……!?


 田舎令嬢が憧れの存在?


 うそでしょ!?


 信じれなかった。


 だって、周りの女性たちは明らかに敵意を剥きだしにしているし……。いえ、男性は考え方が違うのかも。

 そうか、それで女性たちは私をよく思っていなかったんだ。


「そ、そんな!!」「あの方はクレイトス様……」「うそー!! クレイトス・アームストロング様があんな田舎令嬢を!」「信じらんない!!」



 そうか、この人は『クレイトス』というのね。



「あ、あの……私は」

「結婚しよう」

「い、いきなり!?」

「僕は気持ちに嘘をつきたくない。だから素直なんだ」



 素直すぎるっていうか、ストレートすぎるっていうか……嬉しいけど。



「でも……」

「大丈夫。僕が必ず幸せにしてあげるから」

「分かりました。私でよければ」

「不便はさせない。さあ、行こうか」


 手を優しく引っ張れ、私は少し嬉しかった。

 こんなカッコいい人と出会えるだなんて、思ってもみなかった。


 その後、私はクレイトス様のお屋敷に。


 とても大きくてお城みたいな広さだった。

 田舎出身である私にとっては、驚きの広さだった。庭が大草原のように広い。カラフルな植物も美しくて可愛い。



「クレイトス様……」

「レイナ、今日から好きに暮らしていい。欲しいモノはなんでも言ってくれ」

「そ、そんな! 迷惑は掛けたくありません」

「いや、問題ないさ。近い将来、僕と君はきっと幸せになっているはずだから」



 ――その通り、一週間後……私は彼と婚約を果たした。


 それから一ヶ月、半年と同じ時間を過ごし、お互いを知った。そして、幸せになった。

『クレイトス・アームストロング』

独身貴族の侯爵。

多くの帝国女性貴族からアプローチを受けるが、田舎令嬢に憧れるあまり全て拒否。レイナと出会い、心を奪われてしまった。後に婚約を果たす。

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