今日が世界最後の日だったら(ロマンシス)
夜中、何かもぞもぞする物体を胸元に感じて目を覚ました。
見れば、同居人のナオが私の胸に顔をうずめている。
ため息を吐いて「何でいんの」と問いかければ。
「眠れない」
しれっと答えた。
「……だからって、人のベッドに黙って潜りこむか普通?」
「人肌があると眠れるんだもん」
「はあ」
当然、と言いたげな態度に、もはや怒りは無かった。
「マキはあったかくて良いねぇ」
「アンタが体温低すぎんだよ」
布団に隙間が出来ている所為もあるだろうが、正直私はちょっと寒い。
「そうだね」
恨めし気に見やっても、ナオはどこ吹く風。
まったく。
仕方ないので、ぽんぽんと背中を叩いてやる。
この不眠症め。
しばらくやっていたら、ナオが微かに欠伸をした。
「……今日が、世界最後の日だったらいいのに」
「は?」
「気持ち好く眠って、朝目が覚めたらもう天国って倖せじゃない?」
「ヤダよ。気持ち好く眠るのがいいのは、目が覚めるからだよ。覚めなかったら意味無い」
「それもそうかあ」
ナオの声が、ぼやけた感じになる。もう眠りに落ちかけているのだろう。
「おやすみ」
「はい、おやすみ」
溶けた声を最後に、寝息が聞こえ出す。
私も最後のため息を吐くと、また目を瞑り、眠る体勢に入った。
背中を叩くのは、意識が完璧に落ちるまで続けようと思いながら。
どうか、私も彼女も良い夢を見られますように。
そんな、願いを込めて。
END.




