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最短距離

作者: あいうら

会社を経営している父は、僕に合理的に生きることの大切さをよく説いていた。



「回り道だとか、次に繋がる失敗だとか、そんなものは必要ない。ビジネスで必要なのは結論にたどり着くまでのスピードだ。いつだって最短距離を突き進んでいけ。」




幼稚園の運動会では、リレーでトラックを回らずに横切ってしまい失格となったが、父には褒められた。



小中学校では、卒業に必要な出席日数を確保すると学校へは行かなくなり、学習塾で勉強に励んだ。



高校受験は成功したが、入学して半年で退学した。文部科学省が実施している「高卒認定試験」に合格したからだ。


この試験に合格していれば大学の受験資格が得られるため、馬鹿みたいに学校へ行って無駄な時間を過ごす必要がなくなる。



大学に入学すると、すぐに父が病気で亡くなってしまった。父は息絶える直前に、「会社を頼んだぞ」という言葉を僕に残した。


僕はすぐに大学も中退して、父の会社を継ぐことになった。



しかし、経営は甘くなかった。



当初は父の影響力が残っていたが、しばらくすると、人とうまくコミュニケーションが取れない僕は、社員から煙たがられるようになった。



多くの従業員が見切りをつけ会社を辞めてしまうと、いよいよ経営も傾き始めた。



毎日のように僕は考えた。


今の自分にとって成功するための最短距離はどこにあるんだろうか。


それさえ見つけることができれば必ずうまく行くはずだ。今までだってそうしてきたじゃないか。



そして、ある晩ふと閃いた。


これで何もかもが解決する。



「お父さん、人生も最短距離を通ればよかったんだね。気づくのに少し時間がかかってしまったよ。」



首にしっかりとロープが回っていることを確認すると、ためらいなく足元の椅子を蹴り飛ばした。



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