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●atone-07:窮境×グラファイト

 本日は、二限の座学授業にもツクマ先生は補佐で付いていてくれたわけで。例の、専門用語を駆使した質問に対しては、すごいなそんな事まで学んでいるんだ僕も見習わないと、との120点くらいの回答を返してくれたりで、だいぶ私は恍惚のあまりの無表情で午前中を過ごしてきていたのである……


 なんか、うまく行き過ぎている気がする……最近は「夢」の中の方が充実してんじゃないかくらいの生活を送っているように思えてたけど、どっこい実生活の方も充実を見せ始めているじゃあないの、ふぉっふぉっふぉっふぉ……


 思わず全てを達観したかのような長老のような笑い声を脳内で立ててしまうものの、そのくらいの有頂天さの中に、今の私はある。


 ま、あの「夢」は何だろう、とふと思わせられることもあるのだけれど。私が主体になったり、違う人の視点に重なるように「融合」したり。


 でも「夢」を見るようになってから運気は巡ってきたとも言えるし、良しとしとこぉかぁ……と極めて無責任な感じで、そしてそれがまた呼び水となったみたいに、私はまた授業中だというのに、眠りに引き込まれてしまうのであった……あかん……


……


「も、もうアヒィィ、(アヒ)が限界だっつうのぉぉぉぉ、攣ってるぅ、攣ってりゅからぁぁああああ……ッ!!」


――あれ。


「勘弁やぁぁ、勘弁なのやでぇぇぇえ……ッ」


 激しい駆動に伴う、大量の熱の発生に、排出の方が全然追いついていなさそう……不快指数が振り切れる……というかそれを計る計器(メーター)があったのなら、三回転半はしていそうな不快さが身体に纏わりつくように立ち込め、狭苦しいそして薄暗い中に目に来る明滅を繰り返す様々な色の光が、空間を覆いつくしている。こもりにこもった機械油が金属と擦り合わさって発せられる臭気もたいがい凄まじいものがあるわけで。


――あれれー、何か思てたんと違う……困惑のあまり、言葉が定まらなくなってしまう「私」……うん、「今回」もまた違う人の身体に憑りついているような感覚……だけど、何か違和感が……


「野郎ッ!! 『群れで狩る』なんつう芸当、ついぞ前までは見せてやがんなかったくせによぉぉ、学習速度が早すぎるっつーの、つーのつーの」


 荒い呼吸と共に野太い声が手狭い空間に反響する……それだけでもう胸焼けがしそうなほどの私であって、プラス「自分」の発しているのだろう口臭体臭に辟易しながら、その何とも言えない物言いにも、さらにの胃もたれを起こしそう……


 これあれかな、ハズレ回とゆう奴かな……まごうことなき、おっさんに、私は、いま乗り移っている(乗り移らされている)


 どうともならない違和感は、そこに起因するとしか思えないわけで。でも目の前に展開する、おそらくは外部の様子を映し出す画面(ディスプレイ)には、見知った「怪物」が数体、こちらを向いてうごめいていた。またしても戦闘。またしてものっぴきならない空気感……あれだ、名前は「ベザロアディム」だ。「前」のクール眼鏡女子の時も戦った。あれ、そう言えば私と「同期」していた時の最後、向こうの攻撃を喰らっちゃったんじゃなかったっけ……無事だったのだろうか……あ、いや、無事とかはないか、「夢」なんだから。


 でもこの五感に迫るかのような現実感はほんと、何なんだろう……特に嗅覚……夢でにおいって伴うことあるもんなのかな……


「ぐっ……だんだんと攻撃のタイミングがほぼ同時、みたいになってきてやがる……こいつは偶然……とは言い難えな。多方向から同時に飛び掛かった方が『効率』がいいってことを……学習し始めてやがんだ。厄介ぃぃぃ……」


 とは言え、このおっさん、独り言が習い性みたいになってるけど、口調の粗雑さとは逆に、結構戦況を冷静に見ているような……やる時はやる(ヒト)、みたいな性格(キャラ)なのかも……うぅん、ありっちゃあありか……


 肚を決めた私は、改めて冷静に周囲の状況を汲み取ろうと意識をあっちこっちに向けてみる。両腕を広げたら、四方八方全部に指先は届きそうなほどの狭い空間。まず目を引かれるのが、眼前に広がる「操縦桿の群れ」、だよね何これ何でこんなにあるの……?


 まるで植物が生い茂るかのように。いろいろな形や長さ太さの、操縦桿が群生してる。なんだこれ。こんなの見たことないけど。


「……」


 右の方にはまた、緑単色の画面(ディスプレイ)があり、そこにワイヤーのような白線で、おそらくこの機体の「全身図」のようなものが表示されている。


 『ステイブル』……って書いてあるのが読める。見ようによっては全身甲冑を身に纏った「人」の形に見えなくもないけれど、下半身は八本脚という……神話にでも出てきそうな突拍子もない半人半獣的、さらにおっさんを具現化したかのようなでっぷりとしたフォルムだった。右手は何かを掴めるように「三本指」が突き出ているけど、左手はもう腕そのものが「砲身」。ここから何かを発射するんだろうか……いろいろな要素のごった煮感が、先の眼鏡女子が操っていた「蜘蛛球体(ヴェロシティ)」の無駄のないコンセプトとは真逆な感じ……


 まあ用途によって様々な様態があるという設定(コト)なんだろう……あまり深く考えるのは詮無いことだ。


(さてと……どうするべいか)


 このおっさんの思考をも、「私」は共有することが出来ている。この清らかな乙女たる私の思考に土足で侵入されるような感じでそれはそれは(オゾ)気持ちが悪いのだけれども。でもその分、この「世界」への没入感はハンパない。


 全体的に薄汚れていて元の色は分からないもののおそらくカーキ色であっただろう作業着みたいな上着の袖口で、脂ぎった顔をごしりとひと擦りする。無精髭の醸す、ぞりとした感触も初体験なんだけど。いやぁもう、そういうどうでもいいこと(よくもないけど)はいいから!! 私も目の前の窮地らしき状況に対応する気構えだけでも見せなくてはいけないような気がしてきていた。呑まれてるのかも知れないけど。


 ギシュギシュ、のような、何とも耳障りな「声」を上げながら、おっさんの搭乗する「鋼鉄兵機(ステイブル)」を取り囲むようにしているのは、四つん這いの黒鱗の怪物が五匹。うしろ脚で立ち上がったのなら、校舎の二階くらいまでありそうな結構な巨大感だよね……いまはこの体高5mくらいの「機体」に乗っているからそうも感じないけど、生身であったら結構気圧されそうなでかさだ……


 正面に三つ、左右の斜め後ろにひとつずつ。その位置関係はこの操縦席の左方向に設置されたレーダーみたいなのがはっきり「光点」として教えてくれているので、分かる。それはありがたいんだけれど、これ完全に包囲されているってな状況だよね……


 私の思考って、この「夢」での出来事に干渉できたりなんかするのかな……なんてことを思いつつ、既にはまり込んでいるような自分を、おいおいとたしなめる別の自分もいたりする。


 まあ夢であるのならば。思い切りやってやるまで。普段はあまり目立ちたくないから(いやでもツクマ先生には随分ぐいぐい行ってる気もしないでもないけど)、押し殺している自分を、存 分 に 解 放 し て や る っ !!


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