学園のモンスターからの招待ー拉致して強制はダメだと思いますー
【登場人物】
主人公:リオ・ツヴァイク
シャドウ学園へ憧れ、転入してきたばかりの中等部2年生。
噂に聞いていたモンスターと対峙し、なぜか高等部へ拉致され今に至る。
パンプキンマダム:ランナジ・ミルニフ
モンスターと対峙したリオが迷い込んだ学園の敷地内に住んでいる女性。
リオが受け取った飴玉にまじないをかけ、ハイクラスの動向を見守っている。
高等部のモンスター
月夜に姿を現した生徒:バルマ・イリベスタ
漆黒の髪に深紅の瞳で人々を魅了する高等部3年生。
一目見た時からリオに異常な興味を持つ。黒服に拉致を命じた張本人。
小柄な少年:ミアン・フェリペ
バルマが招き入れたリオに対抗心むき出しのバルマ信者。
素直になれないのが本人曰く直せない性質らしい。
前髪をかき上げた大柄な生徒:シオン・バルトル
目元が鋭く大きな口で笑う大雑把な青年。バルマと同級生で唯一の良心的存在。
ミアンを常に気にかけている。
フードを深く被った生徒:イーグル・ワーグナー
基本的に無口で人と目線と合わせることはあまりないが
興味のあるものに対しての執着が強め。
「跡形もなく消えたね…これで邪魔者はいなくなったわけだ。さて、仲間を紹介するって言ったね」
バルマは左手に持っていた筈の元々紙だったものが炎に消え去ると、四方にいる”モンスター”を丁寧に指を揃えた指先で指し示した。
「長身の彼はシオン、小柄な彼はミアン、フードを被っている彼はイーグル。皆、高等部の生徒でね、あともう一人いるんだけれどその子はまた後で紹介するね」
「あの、僕は中等部に転入したばかりで…!!」
「ボクが君を気に入ったから、無理強いで悪いんだけれど今日からここへ住んで通ってもらうよ」
「え``~~~~っ!!?」
覆すことのできない決定事項とでもいうように、爽やかに微笑むバルマにリオはもう何も言えなかった。
硬直してしまったリオにバルマは追い打ちをかける。
「そしてもう一つ…ボクに君の血を頂戴…」
「…っ!!」
リオは首筋にバルマの気配を感じると目を思わずつぶってしまった。
パンッ
そこでふと大きな拍手が鳴った。
「そこまでだ、バルマ。食事は後にしろ」
長身で体格のいいシオンが低い声でバルマを制止する。
「味見くらい許してよ…ずっとこの刻を待っていたんだ」
「分かってる、でも今後の事もある。まずはこの子に伝えるべきことが有んだろうが」
そこで小柄なリアンが空中に浮かんで、吹き抜けの二階へと上がっていく。
「バルマ様が何をしたいのか分かるなんて、流石とか言われたいわけ?バルトル」
「けっ、そんなわけねえだろう。リオ、とか言ったな」
「は、はい…!!」
急な話進行相手が自分となり思わず驚いてしまう。
「お前、バルマが何者か…俺たちが何なのか知ってるか?」
大柄な割にこちらの心情を聞いてきてくれるのはありがたいが、いかんせん身長差がありすぎて見下ろされる。ビクつきながらリオは首を横に振った。
「そうか…バルマ、まだ契約はしてないんだろうな」
「味見ついでに準備に入ろうとしていたよ」
「ふー…ギリギリセーフだったか。リオ、今度バルマに血を吸われそうになったら全力で逃げろ。いいな?全力で、だ」
バルマも迫力のある美人だが、高身長でなかなかの上からの圧にリオは軽く頷くことしかできなかった。
シオンはそのままリオの肩を掴み、バルマから引き離す。
「バルマ、契約前の人間なんてこの校舎に入れたなんて知れたら、伯爵が怒る。…まーた説教部屋行きになるぞ」
「平気だよ、リオくんをボクと同じにすればいい」
目の前でやり取りをする二人に、今まで黙っていた疑問やら不満やら謎がふつふつと湧き上がってくる。
「あ、あのっ!!さっきから分からないことだらけで…!バルマ、様はモンスターで、あなたも彼もあちらの彼もモンスターって…高等部って何なんですか!!?」
かなり早口に投げかけたことに対して、バルマはふふと笑みを浮かべながらこう返した。
「モンスターって言葉の通りだよ。リオくん」
え…?とため息のような声しか発せられないまま、リオは目の前の高等部たちを見渡す。
「ボクは何百年もこの学園に通っていてね、学園に入学してくる子たちの試練の場を設けてる。イーグル、君もこちらへおいで」
「……」
言葉を発することなく、階段から降りていくとひっそりとバルマの後ろへ立つイーグル。顔全体に包帯が巻かれていて表情が全く見ることが出来ない。そして近くで見れば見るほど不思議な雰囲気をまとっているが、白く伸びる両腕にも同じように包帯が巻かれていた。
「皆さんは…何のモンスターなんですか…?」
聞いたところで簡単には教えてもらえないであろう質問に、バルマはにっこりと妖しく笑みを浮かべながらポツリ、と呟いた。
「イーグルは見ての通り包帯男、シオンは狼男、さっき二階に飛んで行ったのはミアンで魔族の子だよ」
「何で自分が最後になるようにもったいぶってんだ」
雑な物言いだが何となくシオンは悪い人ではないとリオの中で納得した。一番気になっていたバルマは何なのか、ゆっくりと近づいてきながらバルマは正体を口にした。
「ボクは吸血鬼、君に吸血維持者になってほしい」
突然の要求に、リオはゴクリと喉を鳴らした。






