5話 誠の帰還
話足りない二人だが、皆の疲労が激しいためひとまず就寝となる。
(まだ夢の中という感じが抜けない・・夢の中で寝るってどうなんだ?)
誠は取り留めのないことを考えつつ、慣れない藁の寝床でも疲労からすぐに寝息を立てる。
隣では優理がその寝顔を幸せそうに見つめ、同じくすぐに眠りに落ちた。
「おやすみ、兄さん」
翌朝、皆で戦場の片付けと破壊された村の復旧作業をすることに決まる。
誠は他人の数倍の速さで穴を掘り、素手のチョップで半壊の民家を取り壊し
その残骸を一人でまとめて持ち運ぶ。
「なんだあれ・・」
「ママー、あの人すごい!」
復旧作業に当たる兵も、村の住人も目を見張る。
「わたしの兄さんなの!」
「すごいでしょ!」
優理は鼻高々に皆に告げて回る。
「なんと勇者様の兄君でしたか・・さすがです」
「かっこいい!」
「優理・・そういうのはちょっと・・控えてくれないか?」
誠は丸太を何本も背負ったまま、顔を手で覆ってしゃがみこむ。
「ごめんね。兄さんが皆に認められるのが嬉しくって!」
ミゲルは丸太を肩にかついで歩きながらその様子をじっと見ている。
「あんなに強いのに、シャイなのか・・」
昼食後も復旧作業を手伝っていた誠だが、自身の輪郭のブレが大きくなっていることに気づく。
「もうすぐ時間切れのようです。思っていたよりかなり早いですね」
リリアが驚き、優理を呼んでくる。
「うう、兄さん・・帰らないで」
優理は誠にしがみつき、戻らせまいとするように腕を引っ張る。
「優理、呼んでくれればまた会えるさ。お前の元気な姿が見れてよかったよ」
「召喚はクールタイム、一定の期間使うことができなくなります。次はこちらの世界で30日くらいはかかるかと」
リリアが手早く告げる。
「なるほど。次はできたら何か持ってきてやるよ。何がいい?」
だんだんと誠の姿がゆらめきが大きくなる。
優理は頭を殴られたような衝撃を受ける。
「えっえっ! どうしよう! カレーとか、カップ麺とか、お菓子とか!」
「食べ物ばっかりだな・・」
「っとそれと・・あっ! あー!」
誠の姿は宙に溶けるように歪み、掻き消えた。
「おーい、もう行っちまったのか?」
走り寄るミゲルに、リリアは頷く。
「スキルとか色々覚えさせたかったが。まぁ次でいいか」
「は、早くまた召喚しないと! って召喚ってどうすればいいんだろ・・リリア?」
「方法は2つ。今回のようにユーリさんのピンチで緊急召喚する手段と、
精霊召喚のように魔法陣を使った儀式召喚ですね」
「じゃ魔法陣を使った召喚を教えて! リリアお願い! お願いします!」
優理はリリアの前で何度も頭を下げる。
「・・こんなにやる気になっているユーリさんは初めて見ます」
「奇遇だな、俺もだ」
ミゲルとリリアは顔を見合わせ、苦笑する。