4話 転生後の優理
「まぁ強い理由については大体分かった。スキルというのは?」
誠の質問に優理が答える。
「その人が持っている資格とか特技・・みたいなものかな」
「なるほど・・初級拳闘などは分かるが、このラーニングというのは?」
「ごめん、私はスキルの内容はあんまり詳しくないんだ。リリア分かる?」
「スキルや魔法を覚えやすくなるスキル、だと思います」
ミゲルも口を挟む。
「なんでも他人のスキルや魔法を見ただけで覚えちまうらしいぜ」
「ふーん」
「ふーんじゃない、メチャクチャ凄いスキルだぞ」
ミゲルはそのスキルを説明しようとするが、誠はそれを手で止める。
「まぁそれは後にしよう。先に優理のことについて教えてくれ」
「あ、うん・・私は病気で死んだあと、魔王を倒すための勇者としてこの世界に召喚されて、生まれ変わったの」
「優理が勇者・・そういえば動いても大丈夫そうだし、体も大きくなってるな」
「転生するときに女神様にいくつか特典をもらったの。健康な体とか」
「なるほど。じゃあもう病気は心配ないのか?」
「うんもう大丈、」
「よかった・・!」
「ひゃう!」
誠は優理を抱きしめる。優理は顔を真っ赤にして手足をプルプルさせる。
「よかった・・優理。・・っとごめんな」
「ううん・・兄さんからハグしてくれるなんて嬉しいな。今のは急でよくわからなかったからもっかいやって」
「何を言っている・・」
誠は混乱している優理からそっと離れる。
「それで、召喚されてから今までは?」
「あ、うん・・召喚した国、バーガラ王国っていうんだけど。そこの王様から魔王討伐をお願いされて、今いるメンバーと一緒に魔王軍と戦ってるんだ」
「そうか・・って優理がこっちに来てからどれくらい経つんだ?」
「うーん、1年くらい?」
「え!? 俺の方では優理が亡くなってから10年経ってるぞ?」
「えええ!?」
「そういえば・・」
とリリアが切り出す。
「この世界と異世界では時間の流れが違う、というのを本で見た記憶があります」
「ふーむ・・?」
誠が腕を組み考え込む。突拍子もない話だ。
「俺からもいいか?」
とミゲルが挙手し質問する。
「ユーリがえーと、マコトを召喚したようだが、マコトはずっとこっちにいられるのか? だったら魔王討伐もずいぶん楽になる」
「あ!」
「いえ、それは無理でしょう」
優理が喜色を浮かべるも、リリアは否定する。
「勇者召喚は神の御業で、また異世界でその・・死亡したからこちらの世界に生まれ変わります。
マコトさんは体が異世界のままのようですので、いずれ元の世界に引き戻されるでしょう」
「確かに寝ているときにこっちに来たが、分かるのか?」
「はい。精霊召喚と同じように、ゆらめきがありますので」
注意して見れば誠の輪郭の一部は時折ノイズのように、崩れる砂のように朧げにゆらめいている。
「ゆらめきが大きくなれば元の世界に戻るでしょう。おそらく2、3日程度かと」
「そうか・・」
「えー兄さん帰っちゃうの!? ずっとこっちの世界にいてよ、ねっ!」
優理は誠を必死に引き留める。
「俺も優理と一緒にいたいが・・急に行方不明じゃ両親や周りの人に迷惑になる」
(優理の言葉に悪意はないだろうが、さすがにまだ死にたくはない)
「あっ、そうだよね・・お父さんもお母さんも元気?」
「ああ元気だよ。たまに二人で旅行したり仲もいいよ」
「よかった・・私のせいで仲が悪くなってないか心配だったんだ」
優理がえぐえぐと涙を流す。誠がポンポンと優理の頭を撫でる。
「よくわからんが、俺はまた召喚すればいいんじゃないか?」
「うん・・次はもっと長く召喚できるように頑張ってみる!」
優理は涙目のまま少し噴き出して笑顔になる。
「ところで・・何で兄さんパジャマなの? ププッ」
「寝てる最中、優理の夢を見てるときにこっちに来たんだよ・・」