3話 信じるもの、信じられるもの
テント内で薬草入りのお湯で一息ついた一行。
「さて、何から話そうか・・」
優理は首をかしげ左上を見上げる。小さいころからの考え事をするときの癖だ。
「じゃあまず俺が何でこんなに強くなっているのか教えてくれ」
「うん。もともと異世界から来た人は身体能力が増えてるのもあるけど、
兄さんの場合は私のユニークスキルの影響が大きいと思うよ」
「ユニークスキル?」
「『信じるもの』っていう、仲間全員の能力が底上げされるバフ・・バフって分かるかな、
ずっと効果のある補助魔法みたいなもの」
「ああ、何とかクエストの何とかみたいな・・」
誠はあまり詳しくないゲームの知識に置き換える。
「まぁ簡単に言えば私が信じる人ほど強くなるの!」
誠は自分の両手を開き、それを握ってみる。
確かに体の底からとてつもないエネルギーがあふれているのを感じる。
「なるほど・・何か目に見えるもので表せるのか?」
優理がテント内の神官服を着た長髪の女性に問いかける。
「リリア、ステータス確認できる?」
「では・・初級ステータス確認」
すると目の前に透明なモニターがあるがごとく、文字が宙に映し出される。
そこにはこう表示されている。
キシベマコト
異世界人/兵士見習い
年齢:22歳
レベル12+99
HP:154
MP:082
筋力:12+99
知力:11+99
敏捷:13+99
「やっぱり。この+99というのが私の能力分」
「おいおい・・」
ミゲルが呆れた声をあげる。彼の補正は+30前後。
しかしそれでもただのベテラン戦士から、国のトップレベルの冒険者や騎士団長レベルまで能力が引き上げられているのだ。
「しかしHPやMPは少ないな・・んん? おかしくないか?」
HPやMPも優理の『信じるもの』の分が加算されるため、154や82では少なすぎる。
「もしかして・・リリア、中級か上級で確認ってできるか?」
「はい。上級はできないので・・中級ステータス確認」
キシベマコト
異世界人/兵士見習い
年齢:22歳
レベル12+255
HP:50154
MP:25082
筋力:12+255
知力:11+255
敏捷:13+255
ユニークスキル:ラーニング
一般スキル:中級拳闘術、初級剣術、初級盾術、初級槍術・・
「すみません、スキルは全部表示できないようです・・ってヒッ、何ですかこれ」
とリリアが顔を蒼白にする。
「げえええ!」
ミゲルは素っ頓狂な声を上げ、文字を見たままの姿勢で固まってしまう。
「すごい・・すごいよ兄さん! 魔王にだって勝てるよ!」
優理は興奮し誠に抱き着く。事情がよくわからない誠は困惑顔でやんわりと優理を離す。
「すまないが・・説明してくれないか?」
「じゃあ私が、エヘン」
優理は残念な顔そうで誠から離れると咳払いし
「HPやMPは分かるよね?」
「ああ分かる。生命力と魔力、ヒットポイント・マジックポイントってやつだろう?」
「そう。人族の限界は999みたいなんだ。筋力知力敏捷も内容は分かるよね?」
「基礎能力だろう? この3つだけなのか?」
「本当はもっと種類があるけど、この魔法だとこれしか見れないの。どれも人族の限界は99のはずだよ」
「・・・まだ理解が追い付かないが、つまり俺はかなり強いってことか?」
「かなりなんてもんじゃないよ。一人大怪獣レベルだよ。さすが兄さんだね!」
「なんだそりゃ・・」
「ところでなんで99から255になったんだ?」
「ああ、本来は255だけど、初級だと簡易表示になるから99までしか表示されなかったんじゃないかな。HPやMPも下の桁しか表示されなかったみたいだね」
「ん?」
「あれ?」
ミゲルとリリアはそこで疑問を覚える。誠も
「じゃあ255というのも中級で表示できる限界じゃないのか?」
「あっ」
優理も思い当たる。そういえば昔のゲームではなぜか255までしか表示されなかったと。
つまり+255を超えている可能性が高いということだ。
「ちょっとこれは・・やばいかも。アハハ。兄さん強すぎ」
「なんだか実感がないが、俺がなかなか強いってことはとりあえず分かった」
「いや、分かってないだろ・・」
ミゲルがぼやく。