プロローグ
プロトタイプになります。
後で全体を書き直した全く別の話が書かれるかも知れません。
あらかじめご了承下さい。
優理が義理の妹になったのは誠が10歳のときだった。
母親を病気で亡くした誠と、父親が交通事故で亡くなった優理の親同士が再婚したのである。
優理は母親に似て儚げな美少女で、父親を亡くしたショックが大きかったのか
顔合わせの食事のときも母親の影に隠れ、怯えているような様子だった。
誠は優理を、新しい妹を守ると心に誓い、根気よく何度も優しく話しかけた。
二人は徐々に打ち解け、まるで元からの兄妹のように、もしくはそれ以上親密な間柄となった。
優理は誠を兄さんと呼び、大きくなったら兄さんと結婚するの!
と将来の夢を回りに大いに語り、明るい笑いに包まれるのであった。
しかし誠が中学に入学したころ、優理に病が判明する。
学校を休みがちになり、通院が増え、やがて入院になってしまった。
両親も伝手を頼って治療を探すも、非常に珍しい難病で完治した例は無い
ということが分かっただけだった。
誠は毎日見舞いにいった。
誠が来ると優理は元気な姿を見せるが、日に日に衰弱し
遂にはベッドから起き上がることもできず、やがて呼吸器やチューブでつながれ
会話することもできなくなってしまった。
限られた面会時間のなかで、誠は優理の手を握り話しかける。
優理は軽く頷いたり、微かな表情や目線で誠に反応する。
言葉はなくとも会話をしているような、心が通じ合ったひとときであった。
優理の病気はやがてその小さな体を致命的に蝕み、優理は帰らぬ人となる。
だが臨終の際に不思議な出来事があった。
まさに命の灯が消えるという瞬間、優理の体の上にまるで天使や女神のような形をした
煙がゆらめき、こう告げる
「人の子よ、悲しむことはありません。この魂は救われます」
あまりのことにあっけに取られる両親や医者をよそに、誠は必死に声をかける。
「優理を助けてくれるのか?」
「残念ながらこの身を治すことはできません。しかしこの魂は違う世界で幸福な人生を送るでしょう」
「生まれ変わるってことか?」
「そう考えて差し支えありません」
「じゃあ優理にまた会えるのか?」
「生まれ変わる地はこれより遥か遠く、会うことは不可能でしょう」
煙はかき消え、それと同時に優理は息を引き取った。
両親は何もできなかった自分の無力を責め、優理に詫び、悲しんだが
あの天使のような煙が告げた言葉で少しは心が救われているようだった。
誠も自身に誓った妹を守る誓いを果たせず、しばらくは無力感でいっぱいだったが
(優理は生きている)
(必ず会いに行き、今度こそ守る)
(そのためには強くならなくては)
恐ろしいほどストイックに、学業や習い事、スポーツに取り組むようになる。
また旅に必要なアウトドアやサバイバル、バイクや車や船の運転、料理や裁縫まで
知らないこと、できないことはとりあえず体験する、という形で浅く広く身につけるようになる。
誠は体を鍛えられ、サバイバル等の知識も蓄えられる自国防御隊への入隊を考えるようになり、
その前身の自防大学へ入学を果たす。
そして卒業間近、誠は22歳となった。