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初デート編-その2

 女の子を待たせるなんて言語道断、必ず早めに待ち合わせ場所へ行くように、という家族のアドバイスに従い、斎藤は待ち合わせ時間の十分前に到着した。


 そして、とても驚いた。


 待ち合わせの相手、宮城早苗みやぎさなえ、十七歳、女、恋に臆病、は、十分前だというのにもう来ていた。駅に隣接するコンビニの前に立ち、ガラスに映った自分の姿を見て「大丈夫かな?」なんてそわそわした感じで身だしなみをチェックしている。斎藤にはまだ気づいていないようだが、斎藤もまた、それが宮城だとはすぐに気づかなかった。


 水色のストライプ柄のシャツワンピースに、白いズボンにスニーカー、ボブカットの頭にはおしゃれな麦わら帽子。


 ボーイッシュでラフな服装を好む宮城とはかけ離れた、少し大人な雰囲気のコーディネート。ただ遊びに行くにしてはかなり気合が入っている服装だ。


 「おお……」


 斎藤の口から、思わず感嘆の声が漏れた。

 クリクリとした目の可愛らしい顔立ちと少し大人っぽい服装のアンバランスさが、ちょっと背伸びをした女の子感を醸し出していて、とても似合っている……とでも弟の亮二なら言語化したであろうが、残念ながら斎藤にそのスキルはない。

 ただ、宮城の気合の入った服装を見て、斎藤は急に緊張してきた。

 仲の良いクラスメイトと遊びに行くだけのはずなのに、なぜに緊張するのか。その理由がわからぬまま、斎藤はなぜか「よし、勝負だ」と思い、「うしっ!」と気合を入れ直して宮城に近づいていった。


 「え……斎藤くん?」

 「よ、おはよ」

 「あ、うん、おはよ」


 斎藤が声をかけると、宮城は「うわあ」という感じで、目を丸くして斎藤を見つめた。


 「……なんだよ」

 「うん……斎藤くんが黒くないなあ、と思って」


 ひょろりと背の高い、ガイコツ顔の天然パーマ男。そんな斎藤は好んで黒い服を着ており、上から下まで真っ黒、というのがいつものスタイルだ。

 しかし今日は違う。家族一同に猛反対された。

 そんなわけで今日の斎藤は、白のロングTシャツにカーキ色のカラーシャツを羽織り、デニムパンツという姿である。いずれも父親のクローゼットより拝借したものだ。スニーカーだけは黒となったが、総じて見れば、ごく普通の男子高校生のデートコーデといえよう。


 「お、おかしいか?」

 「ううん、似合ってるよ。ちょっと大人っぽい感じだね」

 「み、宮城もな」


 斎藤の脳裏に「会ったら宮城おねーちゃんの服装、ちゃんと褒めるんだよ」という亮二の言葉がよみがえる。


 「なんか……かわいいお姉さん、て感じで、いいな」

 「え……あ、ありがと……」


 ほんのりと顔を赤らめて笑顔になった宮城を見て、斎藤はドギマギする。謎の緊張が高まり、次に何を言えばいいかわからない。

 どうしたもんか、と戸惑いつつ目を泳がせると、コンビニの窓に映った二人が目に入った。

 いつもと違う、ちょっと気合の入った服を着て、並んで立っている斎藤と宮城。ああこんな風に見えるのか、これってどう見てもデートしてるカップルだなあ、と思うと、斎藤の心臓が「ぴょんこ」と飛び跳ねた。


 「お、おおう?」

 「どうしたの?」

 「あ、いや、なんでもねえ」


 斎藤は慌ててごまかすと、一度深呼吸をして気持ちを落ち着けた。


 「と、とりあえず、N駅まで行こうぜ」

 「うん、そうだね」


   ◇   ◇   ◇


 そんな二人を、少し離れたところから見ていた三人の女子高生がいた。

 斎藤と宮城のクラスメイト、酒井智美さかいともみ下田結衣しもだゆい瀬戸美南せとみなみ、である。


 「あれは、どう見てもデートですな」

 「とうとうくっついたかー」

 「おめでたいねー」


 並んで歩き出した斎藤と宮城を見て、感慨深げにうなずく三人。小学生のような二人の恋模様を見守ってきた身としては、感無量であった。


 「で、どうします? ちょっとつけてみます?」

 「魅力的なご提案ですが、さすがにやめときますか」

 「宮城さん、半径百メートル以内なら気づきそうだしねー」


 何の根拠もない冗談であったが、くしくも正しい宮城のスキル判定であった。


 「あの二人もN駅かな」

 「でしょうね。んじゃまあ、お邪魔しないよう電車一本遅らせる、てことで」

 「りょうかーい」

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