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蛍狩り編-その1

 「つまんないことになったなぁ」


 手持ち無沙汰にスマホをいじりながら、高田沙奈江たかださなえ、女、ザ・美少女、はボヤいた。

 友人が好きな人を、好きになってしまった。

 少女漫画なんかでよくある、ベッタベタの展開。しかも惚れた相手が、見た目は決してイケメンではなく、一般的な女子からは敬遠されるような、強面のヤンキースタイル男子だ。


 そして何よりつまらないのが、勝ち目ゼロということだ。


 「ちっくしょー」


 惚れた男の名は、斎藤和一さいとうかずいち、男、ザ・ヤンキー。

 友人の名は、宮城早苗みやぎさなえ、女、ザ・武道家。


 この二人、クラスメイトであり、しかも命の恩人である。大げさではなく、ガチで殺されかけたところを助けてくれた。それを思うと、自分の気持ちは封印して身を引くのが、あるべき姿なのかもしれない。


 「あーもー……余計なおせっかい、するんじゃなかった」


 そもそも好きになったきっかけがいけなかった。

 てっきり付き合っていると思っていた二人が、実はID交換すらしていないただの友人関係だと知った。そして女の子の方が、なんとか気付いてもらおうと奮闘している、というのに気付いた。ならば少々ちょっかいを出して、二人をグググイッ、と近付けてあげれば何よりの恩返しだろうと考え、実行に移したのが始まりだった。


 そしてすぐに気付いてしまった。

 見た目は確かにイケメンではないが、かなり高スペックの男の子である、ということに。


 確かにヤンキーでしょっちゅう喧嘩をしているようだが、基本は売られた喧嘩のようである。周りが何を言おうが気にしない、ゴーイング・マイウェイを貫く強さがあり、それでいて周囲に不快感を与えない気配りもできる。成績だって結構いい。とっつきにくいが実は結構フレンドリーで、手作りのお菓子なんぞ持ってくることもある、意外な一面がある。

 そんな彼について、改めてクラスメイトの女子にリサーチしてみたところ、全員が「あまり接点がないだけで、嫌う理由はないね」とのことだった。


 「まあ、弟くんへの愛が重すぎるけど」


 しいて欠点を上げればそれぐらい。友達は少ないようだが、それが欠点かというと違うと思う。


 あれは「ボッチ」ではなく「孤高」というやつだ。


 高田は、アイドル時代にそんな人と何人か出会った。好きになれた人もいたし、ソリの合わない人もいた。だが共通しているのは、彼ら・彼女らは己の意志を貫き、例外なくデビューを勝ち取っていることだ。


 そして、恋のライバルである宮城もそちら側の女の子。


 どう考えたってあの二人はお似合いだ。付き合ってると勘違いしていたのは高田だけではない。同じクラスの誰もがそう思っていて、実は付き合っていないと知って「うそやろ!」と声を合わせて叫んだぐらいだ。


 「あれだけおぜん立てしても告白しないし……」


 つい先日、クラスメイト全員で散々に盛り上げて告白させる寸前まで行ったものの、何やら行き違いがあって、殴り合いのけんかをして終わったという。もはやあきれるしかない状態だ。


 「そんなにひどい振られ方したのか……」


 中学の時にこっぴどく振られ、恋愛に対してすっかり臆病になっている宮城。そんな宮城から告白させるというのは、もう無理かもしれない。

 だとしたら、斎藤から告白させればよいのだが……こいつがまた、わざとやってるんじゃないか、てぐらい恋愛には鈍い男だ。


 「仕方ない」


 高田は決意した。斎藤に恋愛を意識させ、ついでに深入りして傷つく前に自分の想いに決着をつける一石二鳥の手。下手をすれば友人を裏切ることになるが、そうなったらそうなったとき。

 だが、おそらく斎藤なら大丈夫だろう。


 「さっさとコクって、振られてくるか」


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