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挙動不審編-その7

 「……なにやってんの、あんた」


 その夜、電話で宮城から事の顛末を聞いた高田は、あきれ返って頭を抱えてしまった。


 「告白しに行って、その相手と殴り合いする女子がどこにいる?」

 『……ここに』

 「男子高校生がエロいこと考えるのなんて普通でしょう。斎藤くんのエッチィ~、とか言って流しなさいよ」

 『だ、だって、今日一日そういう目で見られてたんだよ? 嫌だよ!』


 まあ、わからんでもないか、と高田はため息をつく。アイドル活動をしていたころ、ファンの男性にそういう目で見られているのはひしひしと感じていた。人気のため、と割り切っていたつもりだが、心地よいものでなかったのは確かだ。


 「でもあんたの場合、好きな人にでしょ? 付き合ったらそのうち全部見せるんだからいいじゃない」

 『そ、それとこれとは、別でしょっ!』


 高田は大きくため息をついた。


 「あんたさあ……マジで私、オトしに行っちゃうよ?」


 宮城からは十秒待っても返事がなかった。ああもうこの恋愛小学生め、と高田は腹が立ってくる。


 「とにかく。明日もう一度作戦会議よ!」

 『え、ええー、もういいよぉ……』

 「ざけんな。一組全員巻き込んでこの結末、つるし上げ食らっても文句言えないからね!」

 『そ、そしたら反撃してやるもん!』


 うーん、それは怖い、と高田の頬を汗が流れた。腕っぷしで宮城に勝てる人なんてそうはいない。ガチで来られたらけがをするのはこっちだ。


 「……あーもー」


 電話を切り、高田はベッドに倒れこんだ。

 弟最優先にしてゴーイング・マイウェイの斎藤の鈍さもだが、宮城の恋愛に対する臆病さもまた難物だ。どうやら中学生の時にこっぴどく振られたのがトラウマになっているらしいが、それを克服させない限り、宮城が恋愛に積極的になるのは難しいだろう。


 「どうしたもんか」


 もうほっとくかな、と高田は枕に顔をうずめた。

 ほっといたってあの二人はくっつく、というのがクラスメイト全員の意見だ。高田自身もそう思うが、なにせ二人は命の恩人、恩返しも兼ねて二人の恋の成就に協力してあげようと決めた以上、途中で投げ出すわけにはいかない。


 「やっかいなことに手を出しちゃったなあ」


 何よりもやっかいなことは、斎藤が思った以上に「いい男」だったことだ。ガイコツみたいな個性的な顔立ちであることを除けば、高田が過去に出会ったどんな男子よりも斎藤は「いい男」なのだ。


 「あーもう……さっさとしないと、ガチで斎藤くんに惚れちゃうよ?」


 私だって素敵な恋愛したいんだからね。


 高田はちょっとだけ宮城に恨みがましい想いを抱きながら、静かに眠りの泉に沈んでいった。

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