初めての実習
「線が書けても字を知らなければ手紙は書けない。君たちは座学で最小限の魔法式を学び、知った。その知識を使って、字を書いて、手紙を成してみせろ」
先生が腰に手を当て大きく叫ぶ。校内に設置されたドームにいる我々生徒の中に聞き漏らした者はいないだろう。私ももちろん、ちゃんと聞いた。だからこそ、顔をしかめたい気分なのだ。
舌打ちを我慢しつつ、たまたま隣にいた同級生に耳打ちをする。
「聞いた? 今のって、習った魔法を使ってくださいって意味?」
ノータイムで頷かれると、私の心は下落した。これでは、私がいかに高度な魔法を操れるのか、見せつけられないではないか。
「嫌なことでもあるの?」
「私の実力を見せつけるチャンスだと思ってたのに」
「歯ぎしりが空耳しそうですな。シーレ」
シーレとは私の愛称らしい。セイレナ・マイオム・パスイと私の名前を略さずに呼んでくれるのは、もう先生と極小数しかいない。
入学初日の自己紹介では私の偉大さを理解してもらえなかった。しかし親しみやすさは生まれたらしい。おかげで一度も会話してない人からも愛称が飛んでくる。
この同級生『タルハ・ヤウユウ』もそうだ。私が彼女の名前を知るよりも早く、私を愛称で呼んでくれた。もしかしたら私の愛称は知っていても、本名は知らないかもしれない。
「歯ぎしりって程でもないよ。好きな魔法を使えそうにないのは不満だけどさ」
ちょうど先生が「二人一組になれ」と指示を出しているところだった。タルハにちょいと視線を向けてみる。幸いにもタルハは暇そうだった。あぶれる事態は避けられたようだ。
「習った魔法っていうと、簡単な魔力操作かな。空気に色をつけるってやつ」
私の記憶をたどると、タルハと同じ結論へと向かった。空気に色をつける魔法、幻影系の魔法らしい。派手さはなく、安全性に富んでいる。まさに練習用として相応しい魔法だ。それだけに、つまらない。
「そんなことして何の意味があるの。魔法ってもっと、ばーんってやるものでしょう?」
「わからなくもないです。でも最初だし、こんなものです」
私の時代はまだ先か。先生に申し立てても方針は変わらないだろう。魔法が危険なのは私もよく知っている。塀を壊した一撃を思い出す。もしあれが人に当たったら、ただ事では済まないだろう。基本的な防御法を学ぶのが先だ。そして防御法を学ぶにも、魔法の基礎がなければ話にならない。よく考えれば当然じゃないか。最初の実技で、攻撃性の高い魔法を使わせてもらえるはずがない。
頭を抱えたい気持ちだけれど、我慢しなければ。もし好き勝手にやったら授業態度が悪いと目をつけられるかもしれない。
ダラけた思いを抱きながら、授業の説明を聞き終えた。
「じゃあ、すぐに終わらせちゃおう」
二人組を作らされたのは、空気に色がつくか、お互いに確認するためだそうだ。幻を見せる魔法になるため、術者本人が気づきにくい場合があるとか、ないとか。
タルハから始めることになった。
「余所見は程々でお願いします」
「いいからはよやれ」と促すと、タルハは目を閉じた。今までの間の抜けていた表情から一変して、真剣な面持ちになる。できると思わせる迫力があった。
魔法は体内、もしくは空気中にある魔力を使って発動させる。粘土遊びみたいに魔力で特定の形を作ると、意味を持って魔法になる。その特定の形は魔法式と呼ばれている。
正確に形作れれば良質な魔法に、歪んでいれば劣悪に、もっとずれていれば発動しない、もしくは暴走して意図していない魔法へと変わる。
タルハの魔法はうまくいったようで青色のモヤが現れた。周りも同様なのか、あちらこちらから声が上がる。それぞれ見てみると、様々な色が灯っていた。
「おまえたち、見えたか? 何色だった? この魔法は単純だ。だからこそ、個人の質がよく現れる。魔力と一言で表しても、人それぞれに違う。魔力の質によって、得手不得手が変わってくる。その得手不得手を簡単に知る方法がこの魔法、色で判別できる。例えば赤っぽければ己の肉体に干渉する魔法に向いている」
先生の説明を聞いたタルハが、そっぽを向いていた私の袖を引いた。
「どうだったかな?」
「青だったよ。真っ青。藍色っぽい感じ」
先生によると青は一番多く、遠距離タイプだそうだ。遠くへ干渉、もしくは火や物を遠くまで飛ばす魔法に向いているらしい。
タルハは満足しているようだった。
「満足というか、ここで不満を言ってもね」
残りは私だ。きっと素晴らしい結果が出るに違いない。素晴らしい結果とはなんだろう。色が濃ければよいのだろうか。
先生の許しが出るまで、暇だったので周りの様子を見ていた。まだ魔法を使えていない人もいるようだ。うまくいかず首を傾げているところに、先生が補助に入っていた。
他は、私と同じように待っている人や、何度も空気に色を付けている人もいる。真剣に周囲を緑色に染めている姿は、動物がするマーキングのようだった。若葉を思わせる透き通った緑色で、形を持たない宝石にも見える。
そういえば、あいつはどうなっているのだろう。初日の自己紹介で、私に恥をかかせてくれた、あのボサボサ頭はどこだろう。魔法が使えなくて泣いているのではなかろうか。そうでなければ、二人組を作る時点で溢れてしまったのではなかろうか。奴の不幸を想像しながら探してみるが、どこにも見当たらなかった。
同じクラスだからこの授業を受けているはず。それなのに見つけられない。見間違いをしている可能性はどうだろう。考えにくい。私は奴をずっと睨みつけていた。あの頭はよく覚えている。
「あいつがいない」
「あいつ? ……もしかしてハユルノのことかな?」
私の独り言に答えたのは、すぐ近くにいたタルハだった。それよりも『あいつ』で伝わるとは思わなかった。
「あいつ、ハユルノっていうの?」
「アシエル・ハユルノ。自己紹介のとき、シーレに魔法等級の質問をした男の子のことだよね」
「そう、あいつ」
アシエルというのか。覚えておくとしよう。顔を鮮明に思い出すだけで、怒りが蘇る思いだった。
「確かに、見当たらないね。どこ行ったんだろ」
ここに隠れられる場所はない。平で障害物になるのは人影だけだった。タルハも見つけられないなら、私の勘違いではないのだろう。
もし高度な魔法の使用が許可されていても、見せつける相手がいないのでは全く意味がない。つまり授業の形態に関係なしに、私の見返す計画は無駄だったわけだ。
ため息をつきたいところだったけど、それよりも気になった。あいつが、アシエルが授業に出ていない理由が思い浮かばない。まず体調不良を疑いたいところだけれど、今朝も見かけた気がするのでこの線は薄い。私を馬鹿にするだけの知能があるのだから、実習だと知らずに教室で一人佇んでいる想像も難しい。あとは何があるかな?
そこまで考えたところで、先生から魔法を使うように指示が入った。二人組の残った方が空気の色を変える番だ。
「ほら、早く。やってみ」と、タルハが手を叩いて煽る。周りでは待ってましたとばかりに、意気揚々と空気の色を変える様が広がっていた。これが初めての魔法だった人もいるようで、そのはしゃぎようは一回り年下の子供みたいだった。
この程度の魔法、私が自慢げにやるものでもない。さっさと終わらせてしまおう。
授業で覚えた、空気に色をつける魔法、その式を思い出す。非常に単純な式だった。記憶を怪しむ必要はない。
私は手を伸ばし、指先から魔力を放出するイメージで式を紡ぐ。指先にインクを濡らし絵を描くようにして……。
……?
おかしい。何も起こらない。空気は透明のまま、正面にいるタルハの顔が鮮明に見える。空気に色が付けば、タルハの顔はその色に染まるはずなのだけど。
首をかしげる前に思い出す。そういえば、先生が自分ではわかりにくいと説明をしていた。つまり術者の私自身には、変化がわからなくても自然なのだ。周りのはしゃいでいる連中を見る限り、自分でもわかる場合があるみたいだけど、私には先生の言葉が当てはまったようだ。
きっとタルハから見ると、私の顔が何色かに染まっているに違いない。魔法を使った際にある独特の倦怠感がないのは不自然だけど、簡単な魔法だからわかりにくいのだろう。
「どう?」
「どうって?」
「何色?」
「えっ? 色はついていませんが」
タルハと見つめ合った短い間、私の思考は停止していた。予想していない言葉を聞いた気がしたからだ。きっと気のせいだ、と思いたい。
「どうしたの? 早くやりなさいな。さあて何色かな?」
タルハに冗談の空気はなかった。『色がついていない』もきっと空耳ではない。それを認めるなら……まさか、私が失敗した?
私は確かに魔力を動かした。式も正確に書けたはずだ。それなのに、魔法は効果を見せなかった。周りを見てみるとわかる通り、この魔法は初心者が一発で成功させる程度の簡単な魔法のはずだ。それを失敗するはずがない。
もう一度手を伸ばし、魔力を流す。今度は成功させる。
さっきは、すぐに終わらせようと思うばかりで、真面目に取り組んでいなかったから、ミスをしてしまったのだろう。そうに違いない。だから今回は真剣にやる。失敗にはならないはずだ。
しかし、何も起こらなかった。
タルハが違和感を抱きだし、私の口数は減った。今ここで確認できる限りでは、私と同じ悩みを抱えている人は見当たらない。魔法を使えていないのは私だけだ。
「あら、パスイさん。苦戦しているようですね」
私を愛称で呼ばないとは珍しい。突然声をかけてきたのは、腰まである艷やかな髪をもつ同級生だった。顔は見覚えがある。しかし名前は知らない。
「どちら様ですか」
「まぁ、わたくしを知らないなんて」
こういった場面ではタルハの知識が役に立つかもしれない。
「それでは名乗らせてもらいます」
そういう彼女を無視して、私はタルハに問いかけた。
「フェネシェア・スメタ・ディア・ハユレ、さんだっけ。あのハユレ家の人らしいです」
「なんで名乗りに割り込むのですか。まあいいでしょう。その通りです。わたくしはフェネシェア・スメタ・ディア・ハユレと申します。ハユレ家に属しますが、末席ですから。そう自慢できるものでもありません」
ハユレ家と言えば、名家だったはずだ。魔法に関する才を輩出している。
「そのハユレさんが何のご用件ですか?」
「パスイさん、お話するのは初めてでしたね。でも自己紹介は聞いていましたよ。確か、魔法がお得意だとか」
フェネシェアは毛量がある頭を揺らしながら、細目で私を縛り付ける。笑顔ではあるけれど、きっと好意的ではないのだろうと感じた。
魔法の名家として、私の魔法が得意発言は許容できなかったのだろうか。だとしたら、随分と狭量なものだ。
タルハが私とフェネシェアの間に割って入る。決して口には出さないけれど、ありがたかった。もう話題に困っていたところだったから。
「なるほど。つまりシーレに対抗心を燃やしたと?」
「違います。あなたは?」
「タルハ・ヤウユウです。別に名家でもない一般人です」
よろしくとタルハが右手を出すと、握手が交わされた。それからだ。フェネシェアの細かった目が見開かれるようになったのは。
「では、ヤウユウさん――」
「タルハでいいよ。呼び捨てで十分」
きっとフェネシェアは友達がいないか、少ないに違いない。タルハの言葉に数秒でも呆然としていたのがその証だ。
「いいのですか。そうですか。ではわたくしも、フェネシェアと呼んでいただければ、あの、幸いです。こほん、ではタルハ……さん」
私は後ろからタルハの耳元で囁く。
「こほん、ってわざわざ口で言ったよ」
「わたくしは対抗心なんて燃やしていません」
フェネシェアが無駄に大きな声で宣言するものだから、視線が集まってしまった。注目されるのは嫌いではない。しかし今は駄目だ。魔法の話になったら私はきっと答えられない。
今の所、二度ほど空気に色をつけられないでいる。三回目で成功するなら問題はないけれど、そうとも限らないから困る。答えに困って無言はもう自己紹介でやらかしているのだ。二度目はつらい。
周りからの視線を気にしているのは私くらいで、タルハもフェネシェアも変わっていなかった。
「シーレに用があるんだっけ」
フェネシェアが「はい」と頷くと、タルハが私の前から退いた。
「それではパスイさん、お聞きします。あなたは何色でしたか?」
今、聞かれる色はきっと魔法でアレしたアレだ。無色になりましたと言ったら信じてもらえるだろうか。実際は本当に魔法を使えていなかったのだと考えている。魔法を使った倦怠感が少しでもあれば、無色を自分で信じられたかもしれないのに。
「ハユレさんには関係ないでしょ」
言い逃れに点数を付けるなら落第になるだろうと自分で確信した。
「見ていたので知っていますが、まだ魔法を使っていないだけですよね。使わないのですか? 得意なのに」
何度も首を縦にふるタルハが視界の端で鬱陶しい。
「別に、もっと派手な魔法じゃないとやる気がでないだけだし」
「派手な魔法がお好きなんですか。それなら、派手にやればいいのに」
フェネシェアの言葉には、タルハとの会話では見当たらなかった棘があった。
フェネシェアが何歩か下がる。踵を返したなら開放されたと喜ぶところだけれど、まだフェネシェアの両目は私を捕らえていた。
いくらか間が空いたかと思うと、フェネシェアは左手を突き出す。魔法を使うかのように。その手を振り上げると、辺り一面が輝いた。
空気に色をつける魔法。この空間で何人もが何度も行った魔法と同じものだ。しかし圧倒的に違っていた。その色は美しく、何よりも大きい。複数の色が瞬き、まるで虹の中に潜ったかのうに錯覚する。空気に色をつける魔法なのだけれど、これを見てその答えを出せる人は少ないかもしれない。どちらかと言えば、虹色の空を作り出す魔法。その表現が的確に思えた。
「さあ、わたくしに続いて」
空いていたフェネシェアの右手が私に差し出される。しかし手を取れるはずがない。私は既に二度も失敗している。周りの歓声に水を差して、英雄になれるのならば手を取ろう。私には悲惨な未来しか見えなかった。
「いいえ、結構です」と、断ったところで、私への救いの手が差し伸べられた。
「なにをしている」
先生の拳がフェネシェアの後頭部に押し当てられる。フェネシェアは押されよろめき、魔法を維持できなくなったのか、徐々に虹色の空は消えていった。
「いけませんでしたか?」
「実力を示すのは結構。だがこれじゃ他の奴らがパートナーの色を見間違えるだろうが」
「ハッ」と口に出したフェネシェアは、小さくまとまると先生に頭を下げる。
「考えが至りませんでした。申し訳ありません」
「謝る必要はないが、さすがハユレの名前を持つだけある。自分のだけではなく空気中の魔力も利用したな?」
「はい。ここには有望な魔法使いが多数いますから。みんなが魔法を使った際に溢れた魔力を借りて多色を再現しました」
辺りがざわめく。自分たちがうまく魔力を操れていなかった、余分に流していたと知っての声だった。
全くたじろいでいないのは、それどころではない私と、実行したフェネシェア、それと先生だけだった。先生に至っては、ため息をするくらいだ。
「そんな畏まるほど、私は偉くないぞ。もっと楽にしたらどうだ」
「お心遣いありがとうございます」
フェネシェアは再び頭を下げる。それを見下ろす先生の目は、厄介者を思う困り顔だった。気持ちはわからなくもない。畏まるなと言ってすぐに畏まるのだから、全く伝わっていないと感じたのだろう。
「いや、だからそんな……この辺りでやめておこう。イタチごっこになりそうだ。ともかく、周りに影響が出る魔法は控えろ。ここはおまえの家じゃない」
「以後、改めます」
先生はフェネシェアの肩を叩く。ぽんぽんと二回、ホコリが舞う程度の力で。それは先生がフェネシェアの横を抜ける際に行われた。先生はとてもゆっくりとした足取りのはずなのに、私には高速に見える。なぜそう感じるのか、理由はきっと先生の目が私とタルハへ向いているからだ。
「そっちの二人は終わったのか?」
何がと問いかけて時間稼ぎになるだろうか。アホだと認識されるだけではないだろうか。
そんな一瞬の葛藤を持たないタルハは、平然と告げる。
「シーレがまだですよ」
私の名前は『シーレ』ではありません。と言い放ちたい気分だ。しかし先生にはもうバレている。私を真っ直ぐ見る目が『間違いなくこいつがシーレだ』と言っていた。
「そうか。よし、見てやろう」
勘弁してください。
なんて言い分は通らない。まず、口にもできない。顔を手で覆いたい気分だけれど、それを許す状況でもない。やるしかないのだ。
しかし、なんとかならないものか。先生しかいない場で失敗をするなら構わない。習うという名目がある以上、先生の前での失敗は恥にはならないからだ。
だが、この場は駄目だ。みんな私の自己紹介を聞いた同級生ばかりだから。魔法が得意だと言ってしまった人たちの前で、超初級の失敗はまずい。
各々、自分の魔法に感動していればいいものを。フェネシェアが素晴らしい魔法で人目を集めてくれたために、私は群衆の前で恥をかく恐れがある。
「ほら、早くやれ。授業にも時間制限があるんだ。難しいようなら教えるし、魔力操作を間違えて、意図しない魔法が出ても抑えてやるから」
無意識に威圧する先生。急かすタルハ。じっと見つめてくるフェネシェアと他多数。これ以上の抵抗は難しかった。ならば、もう祈るしか道は残されていない。
今度ばかりはちゃんと魔法を使えますように。
手を伸ばす。指の間から先生の顔を覗きながら、体内の魔力に問いかけた。もう何度も魔法は使っている。これが初めてではない。魔法書にあった魔法は、どれも空気の色を変えるよりも高度だ。その高度な魔法を操れるのだから、より低レベルな魔法など軽くこなせるはず。指が震えるほどに力を入れ、うまくいけと願い続けた。
私の正面に変化があった。私が望んだのは魔法の発現だ。しかし魔法は見当たらない。起きたのは、私の集中を乱す変化だった。先生が近づいてきているのだ。手で触れられるほど近くまで。
先生は天気の話をするように、ごく普通に言った。
「魔力を操れていないな」
世界が反転したかと思うほど、ぐらりと揺れた。顔が火照り、先生が何かを言っているようだったのに、私の耳には届かない。
見られているだけで辛かった。『得意と言っておいてこのザマか』と馬鹿にされているのではなかろうか。誰もそんな言葉は口にしていないし、きっと被害妄想なのだ。そう考えてみても、顔の火照りは収まらない。
逃げ出したいと思い、私の自制心はその思いを抑えきれそうになかった。察したかのように授業終了の時間を告げるベルが鳴る。私には何のベルか認識する余裕すらなかった。ただ、合図になる音があったから動いただけだ。
急ぎ足ではあったけれども、駆けてはいないと思う。私は何も言わずにその場から立ち去った。