お父さんのサングラス
お子様に読み聞かせられるお話を意識しております。
りっくんはお父さんのサングラスがお気に入りです。
だってお父さんがサングラスをかけるととっても格好良いのです。
「ぼくもサングラスをかけたら、お父さんみたいにカッコよくなれるかな?」
りっくんはお父さんにサングラスを貸してほしいとお願いしました。
「りっくんには少し早いんじゃないかなぁ」
そう言いながらも、お父さんはサングラスを貸してくれました。
「これでぼくもカッコいいぞ!」
りっくんはワクワクしながらサングラスをかけてみます。
でも残念。
お父さんのサングラスは大きくて、りっくんの顔から落ちてしまうのです。
「サングラスは、りっくんがもうちょっと大きくなってからだな」
お父さんは笑いますが、りっくんは面白くありませんでした。
その次の日。
お父さんがいない間に、りっくんはコッソリ、お父さんのサングラスを持ち出しました。
昨日はダメでしたが、今日こそは格好良くなれると思ったのです。
でも残念。
やっぱりサングラスは大きいままです。
りっくんはどうしたらサングラスがかけられるのかあれこれ試してみました。
すると、あら、大変!
お父さんのサングラスがポキリと折れてしまいました。
「どうしよう、壊れちゃった」
怒られたくないりっくんは、壊れたサングラスをおもちゃ箱の底に隠してしまいました。
その夜、お父さんはお母さんに聞きます。
「サングラス、知らないかい?」
お母さんは知らないと答えます。
お父さんはりっくんに聞きます。
「サングラス、知らないかい?」
りっくんは答えます。
「し、知らないよ」
お父さんは不思議そうに、サングラスを探しに他の部屋へ行ってしまいました。
「お父さんが探してる。困ったな」
でもりっくんは正直に謝る勇気がありません。
すると突然、おもちゃ箱から壊れたサングラスが飛び出しました。
サングラスがりっくんに話しかけます。
「こら、りっくん。カッコよくなりたいんじゃなかったのかい?」
「カッコよくなりたいよ。お父さんみたいになりたいんだ」
りっくんがそう答えると、サングラスはりっくんの手に乗って言いました。
「それなら、勇気を出してあやまるんだ。ごめんなさいが言えないなんてカッコ悪いぞ」
りっくんはサングラスの言う通りだと思いました。
「サングラスさん、壊しちゃって、ごめんなさい」
サングラスは笑って許してくれました。
「さぁ、次はお父さんにあやまるんだ」
りっくんはサングラスと一緒にお父さんの所へ行きます。
「お父さん。壊しちゃって、ごめんなさい」
りっくんは壊れたサングラスを見せて正直に謝りました。
「正直に言ってくれたか。ちゃんとごめんなさいが言えるなんて、えらいぞ」
お父さんも笑って許してくれました。
りっくんはコッソリ、サングラスに話しかけます。
「これでぼくも、少しはカッコよくなれたかな?」
サングラスはもう喋りません。
でもりっくんには、「そうだね」と言ってくれたように見えました。