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第4話

【山マンドラゴラ】とは

通常のマンドラゴラはニンジンのような姿をした植物だ。ただ根の部分は人の形をしている。引き抜かれた時に絶叫を上げるためにその声にぶつかると死ぬ。

だが山マンドラゴラはそれとは違い、根の部分を使って自分で徘徊できる。栄養価の高い地面に移動したり、日のよく当たる場所に移動できる。

それがために成長が早く、大きい。そして凶暴だ。危機を悟ると絶叫を叫び続ける。それを仲間が聞くと絶叫の合唱だ。絶叫の波動はあらゆるものを粉々に破壊してしまう。


「やっかいな」


「ええ。耳栓とエビルウサギが必要ですな」


エビルウサギは山マンドラゴラの天敵。寝ている山マンドラゴラを探して食べてしまう。採取する側はそのおこぼれにあずかろうというのだ。

耳栓は万が一のためだ。


二人は城下で耳栓とエビルウサギを二匹買った。

それを麻袋に入れると、ウサギはバタバタと力強くもがいていた。


一刻の猶予もならない。二人はキャロト山に入った。

山の中はうっそうとしていて、薄暗い。二人はすぐにウサギに紐を結わえて放った。

ウサギは何かを悟ったように走り出して行った。

二人は紐をたどりながら山の中を進む。


いた!


ウサギは一つの山マンドラゴラに噛み付いてシャリシャリコリコリと音を立てながらうまそうに食べていた。


「ふーん。少し小さくはあるが……」


体の大部分を食べられ、絶命している山マンドラゴラを手に取ろうとしたとき、ジャックの足のしたから「ムギュ」という声が聞こえた。


それは大きな山マンドラゴラの根の一部だった。


敵だ。敵がいる。


と、察した山マンドラゴラは大絶叫をした!


「ウゴァーーーッ!!」


そうすると、回りにいた、たくさんの山マンドラゴラが跳ね起きて同じく大絶叫を上げる!


「ウゴァーーーッ!!」

「ウゴァーーーッ!!」

「ウゴァーーーッ!!」


耳の大きなエビルウサギはあっという間に砕け散ってしまった。

ダルブとジャックも耳栓をしているとはいえ、それでも砕け散りそうだった。


耳を両手でさらにふさいでも体の穴と言う穴から絶叫が入り込む……!

二人の短髪が上下左右に揺れ動く。

体もガクガクと震えた。

歯を食いしばって地面に伏していないと吹き飛ばされそうだ。

骨も歯も固い部分が砕けてしまいそうになってきた。


「うるさーーーい!!!」


そう叫んだのはダルブだった。

絶叫で叫び返したのだ。


余りの声に、山マンドラゴラは土の中に入り込んで小さくなってしまった。


「ハァ、ハァ、ハァ」


ダルブが肩で息をしている間に、ジャックはそそくさとエビルウサギにかじられた山マンドラゴラの欠片を手に取った。


「アニキ! さすがですぜ! 山マンドラゴラもだまらせちまうなんて!」


「……いや……。今のはマジでやばかったな……」


「へへ。ホントですねぇ!」


二人は山を駆け下りた。次は飛竜の巣だ!



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



【飛竜】とは

通常のドラゴンは四つ足だが、飛竜は二つ足。そして、前足に当たる部分にはコウモリのような飛膜があり見事に空を滑空し、口からは炎を吐く。性格は獰猛で凶暴。巣に近づくものは容赦しない。狙う物は命の危険が大きい。


「それの血をとって、薬に調合できるんですから人間もあなどれませんねぇ」


「まぁ、協力する種族が多いから眠らせたり魔法でなんとかするのかもしれんな」


二人の手には大弓が握られていた。これで飛竜を撃ち落とそうというのだ。

谷間から空を見上げると、数頭の飛竜が遥か上空を飛んでいた。


「クゥ……15mほどの大きさだな。やっかいな……」


「半分くらいなら戦闘になってもなんとかなるんですがねぇ」


「とりあえず、巣に小さい子供の飛竜でもいないか探そう」


二人はそう相談をして、切り立った山を登ることにした。


しかし、そんな大きな飛竜がなにで生命を維持しているのか?

当然食料だ。数頭の飛竜にしてみれば、大きな豚が二頭も谷に舞い込んで来たという思いだったろう。

徐々に徐々に間合いを詰めて来る。

だが二人は山を登る場所を探してそれに気付かない。


二人が崖を登り始めてしばらく立ってからだった。



ワサ……


ワサ……



羽音とともに、二人に影が覆う。


飛竜だ。


3頭の飛竜に囲まれている。

崖を登っているので両手は塞がれている。

大弓など今は使えない。


かといって手を放せば崖下に落ちる。

八方ふさがりだった。


「わわわわわ! あ、アニキ!」


いくら二人が魔王軍において、百戦錬磨の将軍だったとしても、こちらは勝手が違う。

自分たちの体格の何倍も有り、なおかつこちらは武器が使えない。


二人は腰から短刀を取り出したが、飛竜の爪よりも短い。

勝ち目がなかった。



ビュウ!


ビュウ!



と二人の近くに接近する飛竜。


「な、なんとかできねぇんですかい!」


「出来ればとっくにしてる!」


「なんか、魔王様みたいな魔法とか使えねぇんですかい!」


ダルブの動きが止まった。


「あ、ある……。だが農業ばかししてたんでうまく使えるかどうか……」


「なんでもいい、早くやってくだせぇ!」


「わ、わかった! ウィザローン!!」


ダルブがそう魔法の言葉を唱えると、少しだけ静寂が訪れた。


「な、なんですかい……?」


「……し、失敗??」


「失敗!? 失敗ですかい!?」


その時だった。二人の矢筒から矢が飛び出し、二人の短刀も飛竜目掛けて飛んで行く。

この魔法は、手持ちの武器が敵に向かって追尾するものだったのだ!


驚いた飛竜は空高く舞い上がって行く。


「い、今ですぜ!」


二人は崖を登っても危険が増すだけだと思い、崖の下に駆け下りた。

すると、そこに



ボタ!


ボタ!



飛竜の血が落ちて来たのだ。

追尾した武器が、竜を体をかすめ傷つけたのだろう。

二人は岩の窪みにたまっているそれを瓶にすくい入れて飛竜の谷を抜け出した!


こうして二人は、エルフ風邪の薬に必要な物を手に入れたのであった。


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