二幕幕 創世神話
ある神様は創世を任された。
丸い大きな球体のまん中に、丸くて大きなお盆のような台地を作り、山や、川や海、森や花で世界を彩った。
高い山の上から見る、太陽に照らされた世界は、ただ静かで美しい。そこで神様は、風を吹かせ雨を呼び、昼と夜を入れ変え、変化をつけた。
風の音も雨音も、波の音も美しい。が、物足りなくなって、今度は生き物を作った。
様々な昆虫、動物達。群れ集まり、愛を育み、増えていく生き物を眺めているうち、ふと思いついた。
「そうだ。自分に似た生き物を作ってみよう」
真っ白な大きな翼をで空を飛ぶ、今までの四つ足ではなく、2本足で歩ける翼人。
獣のように素早く走れる、獣の耳としっぽを持った2本足の獣人。
空を舞い、木の上に住み、果物や花を好む翼人と、草原や岩影に住み、肉や草を好む獣人は互いに争いあうこともなく、穏やかに挨拶を交わしながら平和に暮らし、時々、山の上の神様とも交流していた。
ある時、神に仕える翼人の娘と、村をまとめていた獣人の青年が、恋に落ちた。
結ばれることの無い二人が駆け落ちしてしまい、娘が神殿から消えた事に慌てた翼人達がようやく探し出した時。
手と口を真っ赤に染めた獣人の青年の傍らに、血まみれの白い翼と娘の頭があったという。
怒った翼人達は青年を殺害し、バラバラにして空から村に投げ捨てた為、今度は獣人達は怒り、近くの森の翼人達を襲撃し、そこから、二つの種族の争いが始まった。
豊かな森は次々と破壊され、草原には火が放たれ、台地は二つの種族の血にまみれ、そこかしこで怒号と悲鳴がこだまする、世界。
神様は嘆き悲しみ、ある時、創世時と同じように台地を丸く削り、森ごと空に浮かべて、浮遊島にした。全ての翼人達を移住させる為、いくつもの島を浮かべ、強制的に二つの種族を切り離した神様は、疲れ切って眠ってしまった。
そうして、世界はようやく平穏を取り戻した。
広大なファルファリアのどこかで眠る神、ファーレン。いつか世界が一つになった時、かの神は目覚めると言われている。
眠る神ファーレンは三百年たった今も目覚めない。世界が本当に平和になるその日まで・・・。