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ゾンニート  作者: 竜獅子
第2章 神農製薬
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武器です。

「そう言えば少し気になってたんだけど、触手之巨人ギガンテス……Type-GFだっけか?あれが入ってたコンテナはどこから来たんだ?重機のようなモノは見当たらないし、気付いたらそこにあったから結構驚いたんだよ。ケリー・ハイル達は転送装置でも開発したのか?」


「あぁ、そんな事。気になるならそこのコンテナをひっくり返してみたら分かるよ」



 ずっと疑問に思っていたType-GFが入ったコンテナの突然の出現。

 久野なら何か知っているかと思って聞いてみたけど、心当たりはあるらしい。

 とりあえず久野に言われるままコンテナをひっくり返してみる。

 ……ちょっと重い。



「それっと。……あぁなるほど。こういう感じね」



 ニチャァ…ゴゴン!とコンテナらしからぬ変な音がしたと思ったら、コンテナの底とコンテナの底に接していた道路に複数体の死還人ゾンビが潰れて一つになったであろう肉塊が所々にへばりついていた。

 当然ながら原型は留めていない。

 ちょっと、どころじゃないな。

 かなりグロい。



「非道を通り越して外道の域ね」


「こいつらにも俺達と同じようにはっきりとした意識があったんですかね……」


「これは廃棄用非適合者(Garbage)/Type-Gと呼ばれていた使い捨ての素体よ。あいつらが鹵獲ろかくしたゾンビや生きた人間に生体兵器の適合試験を行なって、それに適合する事なく肉体に拒絶反応が現れた者に強制洗脳装置を使って物資の運搬や適合者の実戦訓練の為にマトにしていたの」



 コンテナの底にへばり付いている肉塊の中でも、腕や足なんかは人体のパーツとして見れば比較的丈夫な部位だ。

 だからコンテナとType-GFの重みで潰れたとは言え、原型を留めているものは多い。

 そして、確認出来る限りの数を数えてみても一つのコンテナにつき10人近くの人が犠牲になったと思われる。

 コンテナを1つ運ぶ為だけに10人も、だ。

 死還人ゾンビになってから死生観が変わったとは言え、これはあまりにも酷い。



「で、こいつらは重量物運搬専門に洗脳されていたんだろうね。人間は大した事ないけど、ゾンビの身体能力は生きた人間の十数倍近い数値を出すことが出来る。だから多分コンテナみたいに特に重い物を運ぶ時はゾンビベースのType-Gを使って各地の物資の運搬を担わせていた。ゾンビの力なら地形や障害物なんて関係なく進んで行けるし、疲れも無いから最短・最速で運搬が出来る。そして、目的地に着いて役目が終わればその身をクッションにして少しずつコンテナの下敷きになり、最終的には音も無くその場に運搬が完了するって訳。コストも然程かからず使い捨て故に回収の必要もない。それが突然多数のコンテナが現れたトリック。納得してもらえた?」



 今にして思えば、現れたコンテナの下からは何故か赤黒い液体のようなモノが染み出しているモノが多かったし、後ろを振り返って他のコンテナの周りを視てみると全てのコンテナの周りに黒い水溜りが出来ているのが視えた。

 わざわざ確認するまでも無いと思うが、アレが全て潰された重みで染み出した死還人ゾンビ達の体液なのだろう。



「あぁ。納得はした。気分の良いものじゃないけどな」



 僕には既に怒りや哀しみなんて感情はない。

 けれど、死して尚も人として扱われず、道具のように改造された挙句ゴミ同然の扱いを受けて死んでいったこの人達を思うとどうにもやらせない気持ちになる。

 仮にもし、僕が同じように洗脳されてゴミのように捨てられたらどうだろうか?

 消え失せていた怒りや哀しみの感情が戻って反旗を翻す?

 いや、もしかしたら洗脳をされた時点で思考能力さえ失ってしまうのかもしれない。

 だとしたら反旗を翻すも何も、ただ命令に従って死に行くだけになるだろう。

 ……自由こそ全ての僕からしたら、考えられない程の地獄だ。

 そんな奴がこの世に居る以上、僕の安寧は常に脅かされ続ける事になる。

 なんとしてでも、ケリー・ハイル達を殺さなければ。



「それに一層やる気が出て来たよ。ケリー・ハイル達を生かしてはおけない。何としてでも殺そう。その為なら僕はなんだってするぞ」


「あら。今回は妙にやる気になっているじゃない?普段ならめんどくさいーやりたくないーとか言って脱力しっぱなしのあなたがどうしたの?脳細胞でも崩れ始めた?」



 失礼な。

 そんな訳ないだろう。

 ……ないよな?

 一応自分の頭を触って脳が溶けてきてないか確認する。

 うん。ちゃぽちゃぽいってないから多分大丈夫。



「……流石にそんな事はないと思いたい。ただ、ケリー・ハイル達が生きた人間や死還人ゾンビを鹵獲して生体兵器に改造していると分かった以上、僕も例外じゃないなって思っただけ。洗脳されて無理矢理働かされて、挙句死ぬとなればそんな事は何としてでも回避しなきゃいけない。その為に僕が必要以上に働かなきゃいけないとしても!」


「まぁ、そうね。こうして刺客を送り込んで私達を殺そうとしている以上、あなたが鹵獲されるかどうかは分からないけど、少なくとも殺される可能性があるのは事実。神崎の時とは違って向こうはそれなりに準備を整えているし、私達に対する殺意もある。当然これまでのように都合良くはいかないと思うわ」


「それは分かっている。だからこそ、悪意の芽は早めに摘んでおかないと駄目だろう?これ以上強力な兵士を整えて、僕達だけじゃどうにもならない程に力を蓄える前に」


「……驚いた。あなた、今回は本当にやる気に満ち溢れているのね。見直したわ」



 美桜は普段の僕をどう思っているのだろうか。

 少しばかり失礼過ぎやしないか。

 いや、働きたくないのは事実だし今もそうなんだけど、事が事だからそうも言ってられないだけだから。

 流石に普段からこんな気持ちを維持してはおけない。

 しんどいし面倒だ。

 ……あれ?じゃあ別に美桜の言ってる事間違ってなくない?

 この事について考えるのはやめよう。



「鈴がやる気になってくれるなら幾分勝率は上がりそうだな。なんだかんだ言って鈴はその場の状況把握と行動力が優れているから事が戦闘になったら油断出来ない力を出すからな」



 よせ。

 そう言われるとなんだか気恥ずかしい。



「……そう言えば私と戦った時も、見事なまでに私の触手をそこの男と一緒になって引きちぎってくれたよね。あの時も確かあんたが指示を出してたんでしょ?それも私の触手に貫かれながら。ゾンビとしては規格外の思考能力よね」



 久野まで!



「やれば出来る子よ。鈴は。普段からその気がないだけで。そうじゃなければとうの昔にのたれ死んでるわ」



 美桜!お前もか!



「お前達、僕を上げてどうするつもりだ?何も出てこないぞ?」


「別に鈴から何かをたかるつもりは無いわ。ただ、今回ばかりはいつも以上に頑張って欲しいだけ。あの子は神農製薬の幹部の中でも特に異質な存在なの。気楽に事を構えてたらしっぺ返しを喰らうのは間違いなく私達。だから、お願いね?」


「言われなくても分かってるよ」



 普段は冷静沈着に、それでいてあっけらかんとしている美桜があからさまに緊張していて身構えている。

 生きた人間や死還人ゾンビを平気で改造する奴が相手だから仕方がないのかも知れないけど、どうにも過剰に反応し過ぎている気がしないでもない。

 ……まぁ、僕の気のせいかも知れないのだけど。


 そんな事を考えながら久野に導かれるままに東達と別れた場所から北にしばらく歩いていると、ふいに久野がある場所を指差して口を開く。



「さて。そろそろ目当ての場所に着くよ。……ほら。あそこ」



 久野が指を刺した場所はお寺だった。

 と言ってもここは都会のど真ん中。

 土地の広い田舎にあるような大多数の人がイメージするようなお寺では無く、ビルとビルの間の狭いスペースに建てられた小さなお寺だ。

 見た目は古風、というよりは都会の景観に合わせた感じの現代風のお寺で、左右のビルが醸し出す無機質な感じも相まって見事に景観にマッチしている。

 都会の路地を歩いていると、ふとした時に目に止まるようなタイプのお寺だ。



「お寺に隠したのか?」


「ええ。お寺って意外と人が来ないみたいだから。食料や武器になるものが無いからかな。何かを隠すには結構適してるの」



 そう言いながら久野はズカズカと土足で中に入っていく。

 罰当たりめ、と言いたい所だけどこんな世界じゃ土足かどうかなんて何の意味もない。

 僕達は久野に続いてそのまま土足でお寺の中に入って行く。



「えーっと……まず、そこ」


「ここか?……あったぞ」



 本堂に入るとまず左右の両側に備えてあった1mくらいの葛籠つづらを指差し、中を開けるように指示を出す。

 葛籠つづらの中にはお坊さんが着るであろう法衣や袈裟が綺麗に畳まれて収められており、その1番下にアサルトライフルのような形状の銃と弾薬が隠されてあった。



「で、次にそこ」


「これね」



 美桜が入り口に飾られてあったデカい壺をひっくり返すと、中からガチャガチャと音を立てて三丁のハンドガンと弾薬が落ちてきた。

 美桜はそれらを拾い上げるとズボンのポケットの中にしまい込む。



「でもってそれの中。頭を回したら取れるから」


「こいつか?……うわっ。マジか。こんなの入れるか普通?」



 錬治は部屋の奥側に鎮座していた金ピカで厳かな造りの仏像の頭をキコキコと回すと、頭がネジのようになっていたみたいで一定数回したらスポッと取れてしまった。

 そして、仏像の中からは小型のロケットランチャーが一本と予備の弾頭が1つ出てきた。

 仏像からロケランという何ともシュールな絵面。

 錬治が驚くのも無理はない。



「で、残りは下の階にある。ついてきて」



 まだあるのか。

 お寺の地下は納骨堂になっていたみたいで、壁一面に正方形の小さな扉が均等に備えられていて、その1つ1つが骨壷を入れるスペースのようだ。

 いくつかの扉は壊されて中のモノが散らばってしまっている。



「どの扉だったかな……多分、これかな。うん。あってる。はい。開けて取り出して」


「え……」



 久野が迷いつつも開けた扉の中には当然のように無地で白い一般的な骨壷が1つ入っていて、それを取り出すと美桜に渡す。

 骨壷という死体や死還人ゾンビとはまた違った意味で死をリアルに実感させるモノを渡されたせいか、触れたくないモノに触れてしまったような顔で美桜が硬直してしまう。

 まぁ、普通に生きていたら他人の骨壷を抱える事なんてないし、そんな物を持ってしまえば正直気持ちが悪いに決まっている。

 でもこのままでは美桜も動き出しそうにないから美桜から骨壷を奪い取って蓋を開ける。



「……久野、これの中身は?」


「え?入ってない?」


「いや、入ってるけどそうじゃない。元々あった中身だ」


「あー……どうだったかな。初めは何か入ってたような、何も入ってなかったような。手頃な大きさだったから適当に拾ってそれを入れたから、中身の所在は覚えてない」



 骨壷の中には骨は一切入っておらず、代わりに手榴弾が5つ入っていた。

 これに眠っていた人がその辺にばら撒かれていない事を祈ろう。



「とりあえずこれで全部。他にも色々持ち出したけど残りがある場所はさっきどっか行った人達に教えたから多分もう無くなってるだろうね。でも、沢山あり過ぎても扱い切れないし問題ないでしょ?」


「そうね。私はこのままハンドガンを貰ってもいいかしら?アサルトライフルやロケットランチャーよりかはこれの方が扱いやすいの」


「別にいいんじゃないか?錬治はどうする?」


「そうだな。なら俺もこのままロケットランチャーを貰ってもいいか?どうにも俺はいざって時の火力に欠けるからな」


「そうか。なら僕はアサルトライフルを貰おう」


「誰が何を持つか決まった?なら一緒に手榴弾も持っていて」



 手榴弾は美桜が3個、僕と錬治が1個ずつ持つ事が決まった。

 久野は自前の触手だけで充分なようで、余計な武器は持たないそうだ。

 変に武器を持って重量を増やすより、極力持ち物を減らして身軽になった方が戦いやすいらしい。

 実際久野はサンダルにミニスカート、薄手の少しタイトなシャツという軽量化に特化したような服装をしている。

 髪もセミロングだから縛る事をせずそのまま遊ばせている。

 見た目だけでも動きやすそうなのがよく分かる。



「とりあえずはこんなものかな。武器の扱い方は分かる?」


「私は大丈夫よ」


「僕はまぁ、勘でなんとかする」


「俺も大丈夫だろ。引き金を引くだけだ」


「そ。弾薬にも限りはあるし、無駄打ちは避けたいからその言葉を信じるわ」



 銃はともかくロケランなんか早々手に入るものじゃないしな。

 ……あれ?そう言えば美桜ってどこかで銃を手に入れてなかったっけ?



「なぁ美桜」


「?」


「美桜は他にも銃を持ってなかったっけか?久野との戦闘の時に使ってたような記憶があるんだが」


「あぁアレ?アレは鈴が昏睡している2ヶ月の間に使い切ったわ。私達を普通の死還人ゾンビと思って武装した人間が襲撃に来た事が何度かあったからその時にね。弾薬を使い切った後は銃の本体も捨てちゃったわ」


「マジ?」


「嘘ついてどうするのよ」



 僕が寝ている間に襲撃されたなんて話は聞いてない。



「錬治、今の話マジ?」


「美桜さんが肯定してるのになんで俺にも聞くんだよ。マジよマジ。まぁ武装した人間って言っても大した事はない連中ばっかりだったから簡単に殲滅出来たけどな。あの時は俺達だけじゃなくて水先達も居たし」



 あー……知能を保っている統率された死還人ゾンビが人間に牙を剥くってなったらそれはもう局所的な災害にも等しい。

 それも僕を除いたとしても59人も死還人ゾンビが相手だったとしたら向こうもたまったものじゃなかっただろうな。

 可哀想に。

 顔も存在も知らない誰かの為に一応拝んでおく。

 ご愁傷様でした。



「ま、そんな訳でさっきまでの私は普通に丸腰よ。じゃなきゃ触手之巨人ギガンテスと対峙した時に使って楽に仕留めてたわ」



 それもそうか。

 無駄に危険を冒すよりそうしたほうが余程安全だし効率も良い。



「それもそうだな。まぁ何にしても無事に新しく武器が手に入って良かった。ありがとな。久野」


「別にあんた達の為に用意した訳じゃない。いつかの為に備えていただけ。……ほら。後は特に用事がないなら外に出るよ」



 そう言って久野は1人でさっさと上に上がって行ってしまった。



「僕達も行こうか」


「そうね」


「こんな所に長居はしたくないしな」



 僕達は納骨堂を足早に出ると、久野を追いかけてお寺の外へと出た。










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― 新着の感想 ―
[一言] 運搬専用のゾンビ……もったいないなあ 目的の場所まで運んで潰れるのを是とする判断力・実行力あるなら普段はちゃんと帰らせていざという時には爆弾抱えて自爆とかできそうなのに
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