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ゾンニート  作者: 竜獅子
第2章 神農製薬
91/150

急襲です。

「……それじゃあそれで行くわよ。一歩間違えれば如何に死還人ゾンビのタフな肉体とは言えバラバラに引き裂かれて死ぬ事は明確。くれぐれも用心するように」


「「「はい!」」」


「鈴、そんな訳で行くわよ」



 何がそんな訳なのかは全く話を聞いていなかった僕からすると理解が及ばないのだが。

 まぁでもひとまずの話がまとまったのなら僕はそれに従うだけだ。



「再度伝えるわ。触手を持つ巨体の化け物……触手之巨人ギガンテスは一体につき3人以上で対応する事。持ち前の速さで翻弄して隙を見つけ次第鉄パイプでも瓦礫でもなんでも良いから刺すなりぶつけるなりしてダメージを与えて。隙が無ければ無理に攻撃しようとせず、距離を取って安全を確保して。各チームの配置はさっき伝えた通り。待機完了の合図は奥歯を3回カチカチと鳴らす事」



 前言撤回。

 僕が話を聞いていなかった間に具体的な戦略が決められていたようだ。

 しかもRPGよろしく敵の名前を呼びやすいように触手之巨人ギガンテスなんて命名している徹底ぶり。

 それならいっそ原始解放をした獣型の死還人ゾンビにも名前を付けてあげて欲しい。

 呼び名が長いんだよ。アレ。



「ただ、私と錬治と鈴は3人のみで動かさせて貰うわ。長くチームを組んでいるから、変に慣れてない人が増えるより少数でも互いの事を分かっている人だけで動いた方が効果的でやりやすいから。だから基本的に私達の方へ意識を向ける必要はないからそれぞれ自分達の事だけに集中して。良いわね?」


「「「はい!」」」


 そんな僕の考えなんて知らないとばかりに話を進める美桜。 

 いや、実際知らないのは当たり前なんだけどこうも話がトントンと進んでいくと僕の脳では処理が追いつかない。

 今から触手之巨人ギガンテスに挑みに行くの?

 マジ?



天袮あまねさん。先程偵察に向かわせた2人が帰って来ました」


「そう。様子はどんな感じだったって?」


「まだコンテナがある付近をキョロキョロと何かを探すようにしながら留まり続けているみたいです。今のところその場から動く様子は無いと」


「問題はなさそうね。なら、相手がまだこちらの存在に気づいてない今が奇襲をかけるチャンスよ。この付近にある自衛隊が残した物資を確実に回収する為にも、触手之巨人ギガンテスという脅威は排除しなければならない。厳しい戦いになるのは間違いない。だからこそ、確実に仕留めて全員で生き残るわよ!」



 辺りに歓声を響かせて触手之巨人ギガンテス達に位置の特定をされないよう誰もが美桜みおの激励に声を上げる事は無かったが、静かに、そして激しく燃えるような闘志と生き残る為の執念にも似た光が皆んなの瞳の中に見えたような気がした。

 不測の事態が続いているけど、これだけの気合いがたぎっていればなんとかなるだろう。



「行動開始!」



 美桜の号令と共に触手之巨人ギガンテス達の居る場所に向けて移動を開始する。

 とは言え距離は然程も離れておらず、約300m程なので大した距離じゃない。

 逆に言えばたったそれだけの距離しか離れていないから近づくにつれて物音には充分気をつけなければならないし、奴らの視界に入る事も避けなければならない。

 幸いにも触手之巨人ギガンテス達が居るのは開けた広い道路のような場所で、対する僕達は倒壊したビルの物陰からコソコソと移動をしているので奴らからは僕達の動向は把握しにくいが、僕達からは奴らの動向を把握しやすいという奇襲をかけるには絶好の条件が整っていた。

 今が夜中で新月であれば暗闇の中で動けるからより索敵はされにくかったのだけど、残念ながら今は真昼で雲一つない快晴だ。

 一度ひとたび物陰から出てしまえば一目でそこに居るとバレてしまう。

 それ故に、奇襲をかけるタイミングは絶対に逃す事は出来ない。

 もし、タイミングを逃せば背中の触手を伸ばされて一突きで仕留められてしまうか、あるいは薙ぎ払われて肉塊にさせられてしまうかのどちらかだろう。


 ただこれもまた幸いな事に、触手之巨人ギガンテスは6体居る内のそれぞれが密集してその場に留まっているのではなくて、直線の道路に赤いカラーコーンを並べるようにして1体ずつ等間隔に離れてその場に立っている。

 目測だけど大体10mは離れているように見える。

 これだけ離れていれば一斉に襲いかかってしまえば各自一体ずつ相手をする事は可能かも知れない。

 少なくとも、不可能ではないと言い切れる。


 美桜もこれを見越していたのか、20人いる僕達Cグループを3人・3人・3人・3人・4人・4人ずつに更に小分けにしたチームをそれぞれのチームが合図と同時に襲いかかれるように触手之巨人ギガンテスのすぐ近くに移動するよう指示を出し、数分もしないうちに1番近いチームから順に待機完了の合図である奥歯を3回カチカチと鳴らす音が5回聴こえた。

 これぐらいの音なら触手之巨人ギガンテスも聴こえないだろうし、聴こえたとしてもただの物音として認識する筈。

 死還人ゾンビの特性の1つである異常に敏感になった聴覚を活かした美桜らしい発想の状況伝達方法だ。

 スマホやトランシーバーが使えない以上、原始的だけど誰でも出来るこのやり方は非常に有効だと言える。



「まだ……まだよ……」



 触手之巨人ギガンテス達の視線を確認しながら、一斉に奇襲をかけても失敗しないであろうタイミングを美桜は冷静に見計らっている。

 僕と錬治はそんな美桜を邪魔する事のないよう少し離れた位置で待機、美桜の号令がかかればすぐに動き出せるように武器を構える。

 錬治は倒壊したビルの瓦礫からもぎ取った元は鉄筋である長さが1m程の鉄の棒を。

 僕は工事現場にあるような少しゴツめの鎖を。

 互いに準備が出来た事を目配せで知らせ合い、美桜の号令を待つ。



「今!攻撃開始!」



 そして美桜の号令がかかると同時に触手之巨人ギガンテスの前に飛び出す。

 身長が5m程とは言え、巨人の名に違わずその身長差から放たれる威圧感が凄い。

 けど、その等の触手之巨人ギガンテスはまだ僕達が至近距離に近づいた事に気づいていない。

 どうやら想像していたよりも思考は鈍いし索敵能力は低いのかも知れない。



「おら!」


「よっと!」


「はっ!」



 錬治は鉄の棒を心臓を目掛けて突き刺し、僕は鎖を両足が絡まるように巻きつける。

 美桜は割れた4枚のガラスを手裏剣のように両肩と両膝を目掛けて投げつける。

 そして見事に4枚全てが両肩と両膝に突き刺さり、人体の構造上傷ついてはならない場所が傷つけられたのかバランスを崩してその場に前のめりで倒れ込む。



「油断しないで!次が来るわ!」



 前のめりで触手之巨人ギガンテスが倒れたという事は、背中の触手が僕達に一層近づくという事。

 触手之巨人ギガンテスは前のめりで倒れたせいで前を見る事が出来なくなった。

 その為僕達がどこにいるのかハッキリ分からないから見えない視界をカバーするように、手当たり次第に触手を暴れさせて僕達を攻撃しようとする。

 けど、触手が危険だと言う事は既に分かっているので触手之巨人ギガンテスが倒れた時点で僕達は側から離れていたのでその攻撃を食らう事はない。


 こうして近づいて観察してみると、色々分かってきた事がある。

 まず、触手之巨人ギガンテス死還人ゾンビのような発達した聴覚は無いし、俊敏性も無い。

 背中の触手の攻撃範囲は6m程で、全部で8本生えている。

 触れたコンクリートがえぐれている事から少なくともコンクリート以上の硬度は備えていて、それぞれの触手が個別に動いているから触手の一本一本を自分の意思で動かせるという事。

 そしてやっぱりと言うべきか、コイツからは意思や感情のようなものを全く感じない。

 僕達に攻撃されてからずっと『ウォォォ!』とか『グゴァァァ!』とか叫んでるけどその叫びから一切言葉が通じてこない。

 死還人ゾンビ語を使わない以上、死還人ゾンビとは全く別物の個体であるという事が確定した。

 死還人ゾンビであればどんな状況であれ、何かしら声を発すればまるでテレパシーのように今思っている言葉がそのまま頭に伝わるから間違いない。

 それが分かったからと言って現状の何かが変わる訳では無いのだけれども。



「次はどうする?美桜?」


「このまましばらく観察していたい所だけど、私達以外の戦況はあまり良くないようだからそうも言っていられないのよね」


「美桜さんの許可が出れば他のチームに加勢に行きますが、どうしますか?」



 僕達が相手をした触手之巨人ギガンテスは美桜に両肩と両膝をガラスで貫かれた際に靭帯でも切れたのかロクに動かす事が出来ず、立ち上がる事も出来ていない。僕の巻いたチェーンも両足を開こうともがいている様を見るにそれなりに効果があったようで、余力を尽くして立ち上がるのを防ぐ役目を果たしてくれている。

 錬治の突き刺した鉄の棒も心臓かその付近を貫いたお陰で僅かながらではあるが触手之巨人ギガンテスの動きが鈍くなり始めている。

 恐らくウィルスを全身に行き届けさせる心臓の力が弱まり、加えてウィルスが傷口から腐敗した血液から漏れ出ているからだろう。

 背中の触手だけは馬鹿みたいに元気に暴れているけど、その場から移動する事が出来ない以上距離さえ取っておけば問題ない。


 対して他のチームが相手をしている触手之巨人ギガンテスはと言うと。

 僕達から1番近いチームに入った東は少し攻撃を当てたら距離を取るヒット&アウェイの戦法を取っているが、目立った負傷がない代わりに決定的なダメージを与えられずどちらが先に限界を迎えるかの消耗戦になっている。

 その次に離れている花木が入っているチームは触手之巨人ギガンテスに近づく事なく触手が届かない距離を保ってその周りをグルグルと周りながら鉄片や瓦礫を投げつけて遠距離ダメージを与えている。

 上手くやり続ければこのまま押し切れるだろう。


 ただ、比較的安定した戦略を実践出来ているのは東と花木のチームだけであり、その他は触手之巨人ギガンテスからの攻撃を避けるばかりで中々攻撃に転じる事が出来ないでいる。

 僕ら3チーム以外の戦況は悪いと言っていい。



「まずは確実に今私達が相手をしている触手之巨人ギガンテスを仕留めましょう。生きたまま放置して後からしっぺ返しを食らうなんて間抜けを晒す訳にはいかないわ」


「了解」


「了解しました」



 僕と錬治は近くで崩れているビルから鉄筋をそれぞれ1つずつ手に入れる。

 そして、それを道路でのたうち回っている触手之巨人ギガンテスの頭に向けて投げ槍の要領で投擲とうてきし、頭部を破壊する。

 そして触手之巨人ギガンテスは何度かは痙攣をした後ピクリとも動かなくなった。



「私達はこれで良し。後は苦戦している他のチームに1人ずつ加勢に行くわよ。花木さんと東くんの所は任せておいても大丈夫。私が3人でチームを組んでいる所に行くから、鈴と錬治は1番端で4人で組んでいるチームと、端から2番目の4人で組んでいるチームに加勢してあげて。被害なく倒す事が出来れば手段は問わないわ」


「りょーかい。さっさと終わらせて、ゆっくりしよう」


「分かりました。……さて、どうやって加勢しますかね」



 僕達は美桜の指示通り、苦戦しているチームに加勢に向かった。

自衛隊が残した物資を回収するに当たり、鈴達のチームは20人で行動していました。

そして触手之巨人ギガンテスを各個撃破する為にそこから更に6つのチームに分けたのですが、その内訳は

《鈴・美桜・錬治》

《東・その他2人》

《花木・その他2人》

《その他3人》

《その他4人》

《その他4人》

となっており、鈴達の戦闘後に加勢に向かった後は


《東・その他2人》

《花木・その他2人》

《その他3人+美桜》

《その他4人+錬治》

《その他4人+鈴》

になります。

別に内訳が分からなくても物語的には全く支障はありませんが一応補足で書いておきます。

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― 新着の感想 ―
[一言] さてさて、まずは幸先よく一匹倒しましたが、このまま押し切れるかな?相手に増援があると厳しそうですが……
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