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ゾンニート  作者: 竜獅子
第2章 神農製薬
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妙に静かです。 鈴side

「それじゃ私達は先に行ってるわね。後は任せたわ」


「行ってきます」


「あぁ。やばくなったらすぐ引き返してこいよ」



 僕の身の安全の為にも。



 ☆★☆★☆



「……さて、それじゃ僕達も行こうか」


「あぁ。行こう」


「なんだか楽しみだね。今までこんな事は無かったから少しワクワクしてきたよ」


「……花木、遊びじゃないんだぞ?」


「分かってるよ。でも、やっぱりこう言った非日常的な事が訪れると楽しくなってこない?ね?鈴君?」



 ん?僕に話が飛んでくるのか。



「どうだろうな。僕は……2人もそうかも知れないけど、死還人ゾンビになってから楽しいとか嬉しいといった感情が欠如しているんだ。何かを楽しむ事は出来ても、結果として楽しいという感情には至らない。今の僕にはワクワクやドキドキと言った普通の人間なら誰でも持っていた感情がないんだ。だからよく分からない」



 思えば死還人ゾンビになってから本当に何かを楽しむ事はなくなったな。

 遠藤とゲームをしたり、ショッピングモールでエスカレーターから落ちた瀕死の死還人ゾンビが必死になって這い上がる姿を応援したり、色々あったけどそれまでだ。

 僕の心の奥底では実際は別にどうでも良いといった感情しか生まれてこなかった。

 別にそれさえもどうでもいいのだけど、やっぱりそれは少し寂しい事なのかも知れないな。

 東と花木も何かしらの感情を欠如している筈だけど、2人はどうなのだろう?



「なるほどねぇ。私はあれかな。怖いとか悲しいとか、そういった感情が無くなったかな。別に誰が死のうとどうでもいいし、私が死ぬとしてもやっぱりどうでもいい。それ以上に以前にも増して世界に対する興味が湧いてきたかな」


「俺は……そうだな。辛いとか苦しいとかそんな感じの感情がなくなったな。人を殺しても心は痛まないし、夜通し働いていても苦痛には感じなくなった」



 やっぱり感情の欠如には個人差があるんだな。

 僕は死にたくないし、身の危険が迫る事に対して恐怖を感じるし、出来れば生きた人間は殺したくないし働きたくもない。

 この感情の欠如が生前の生き方に関係しているのかは分からないけど、多分わざわざそれを解明しようとする人は居ないだろうからどうでもいいか。



「自分はこの感情がなくなったーとか、仲間内で話したりはしたのか?」


「んー特には?と言うより私自身今、鈴君に言われて気付いたくらいだし。案外他の人は気付いてない人の方が多いんじゃないかな?」


「俺は薄々感じてたけど、わざわざそんな事を話す必要もないし自信も無かったから大して気にも留めずに頭から消してたな」


「そんなもんか」



 まぁ感情があろうと無かろうと、死還人ゾンビになった時点で本来なら大した意味はないもんな。

 そもそも意識をはっきり持ってる死還人ゾンビの方が珍しいし。

 今でこそ普通に喋れるようにはなったけど、最初はアーとかガーとかしか言えなかったから今一つ気持ちを伝えにくかったし、何故かは知らないけど、そんな言葉でも意思の疎通は出来たけど。

 それでもやっぱり、改めて考えたらそんな状態なら結局感情ってあまり必要じゃないんだよな。

 本能のままに生きた人間を襲うのが死還人ゾンビの特徴だし。

 うん。

 面倒だからこの辺の事について考えるのはもうよそう。



「それにしても」


「どうした?」


「静かだな」


「まぁ、そりゃな。人っ子1人居ないんだし」


「だからだよ。さっきの話じゃ原始回帰した化け物が居るって話だったじゃないか?でも、僕達の聴力なら近くに居るなら息づかいの1つくらい聴こえても良いような気がしないか?」


「あ……」


「それもそうだね」



 実際今聴こえるのは前を歩いてる美桜と錬治の足音と、僕達の後ろをついて来ている仲間達の足音だ。

 後は、建物が火事で焼ける音や、ビルの一部が崩落して崩れ落ちる音ぐらいだ。生物の気配なんかこれっぽっちも聴こえない。

 死還人(僕達)の発達した聴力なら数km先の人間の立てた物音でさえ拾う事が出来るから、近くにいるのなら聞き間違う筈がない。



「もしかしてもうここには居ないのか?それならそれで僕としては嬉しいんだけど」


「俺達が過剰に反応し過ぎただけだったのか……?」


「だといいね。何も無いのが1番!」



 他の人達に聞いても、やっぱり不審な物音は聴こえないらしい。

 んー……これは、良い兆候なのか?悪い兆候なのか?



「とりあえずは何もないんだし、ひとまず警戒だけはしつつ前へ進めばいいじゃないか。何か異常があれば天祢達も戻ってくるだろ」


「それもそうだな」



 少しの安心と、嫌な流れを感じながら僕達は周りを警戒しつつ前へ進む事にした。


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