どうするべきか悩んでいるみたいです。
「どうやら俺達が思っていた程単純な話じゃなさそうだな」
「えっと……何がかしら?」
美桜は東が何を言ってるのかまだちゃんと理解出来ていないようだけど、少し考えたらすぐ気付く筈だ。
「死還人は死還人になってから五感のいずれかが発達するか機能が失われるかで身体に何かしらの変化があるのは勿論知っているだろう?その中でも死還人が共通して発達しているのは聴覚なんだ。数km先の人の話し声なんかだと聞き耳を立てれば余裕で聞こえる程にな」
「あっ……そう言えば」
美桜に会ってから死還人がどんな存在なのかを説明する時に、その辺の特徴も話した筈だけどこの様子じゃすっかり忘れてたな。
実際東達が居た部屋の真向かいの部屋に入ったぐらいじゃ死還人の聴覚は誤魔化せない。
僕はそれに気づいていたけどわざわざ言うのも面倒だから黙ってたけど。
「話を聞きながら正直ちょっと冷や冷やしてたぜ。もしこのまま鈴達が今話してた話の内容を俺達に告げずにこのまま先へ進んで、何かあった時の蜥蜴の尻尾切りにされたらどうしようかってな。でもどうやらその心配は杞憂だったみたいだ。な?花木」
「うん。多分だけどこの3人はそんな事しない。良くも悪くも素直で良い人達だから行動を共にしてる私達を見捨てて裏切るような真似はしないと思う」
僕達の知らない所で勝手に評価が上がってるけど、まぁ信頼されないよりかは全然良いし、そもそも東達を裏切るつもりも無かったから結果オーライだな。
「他の皆んなも当然話は聞いていたし、皆んな3人の事を信用するって言ってるから安心してくれ。俺たちも3人の事を裏切るような真似はしないと全員を代表して俺が誓おう。その上で、天祢さんに1つ頼みたい事がある」
「何かしら?」
「どうやら俺たちが発見した奇妙な化物については天祢さんの方が余程よく知っているらしい。そうなると、何も知らない俺たちが指示を出して前へ進むより、天祢さんに指示を仰いだ方が今回の計画は滞りなく成功しそうだ。要するに、今回の計画は俺じゃなく、天祢さんに指揮を取って欲しいんだ」
「……わ、私が?」
珍しく美桜が目を泳がせて慌てている。
そう言えば美桜って普段から頼りになるような知識と言動を繰り返しているから疑問に思った事が無かったけど、美桜ってあまり自分を中心にして人を動かすって事をしないんだよな。
勿論全くって訳じゃなくて、たまにはあーしろこーしろって言うけど、こと戦闘になると殆どの場合が各自がその場の状況に応じて遊撃せよ、みたいな感じになって美桜自身が指示を出すって事が滅多にないし、なんなら美桜自身が戦闘に参加する事もある。
そういう所を考えると美桜は指揮官よりも兵士の方が気質的に向いてるんじゃないだろうか?
だから急に東に指揮を代わりに取って貰えないかって言われて目が泳いでるんだろうし。
「き、気持ちは嬉しいのだけど、私はまだ皆さんと出会って数日程度しか経ってないし、まだ他の人の事を全然知らないから指揮なんて出せないわ。信頼関係だって築いていないし、いざ何かあった時私の指示を聞いてくれるとも限らないから、現状を考えると不安要素が多過ぎて私に指揮を取らせるのは悪手だと思う。だから気持ちだけは受け取るから全体の指揮はこのまま東さんが取って欲しいわ」
美桜の言う事も一理ある。
新参者の僕達の誰かが急に指揮を取る……リーダーのような役割を担う事を快く思わない人も居る筈だ。
死還人の僕達にそんな感情が残っている人が居るのかは分からないけど、それが分からないからこそ容易にこういった話を受けるべきじゃない。
実際、美桜が指揮を取る事でどこまでの人がその指示通りに動くは分からないし、この先に危険が待ち受けている以上なるべく万全な状態で先へ進むのがベストだろう。
「……そうか。まぁ、言われてみればそうかも知れないな。良し。だったら代わりに何か気になる事や気づいた事があったら遠慮なく言ってくれ。これからの行動に変更が加わりそうな事でも何でもいいから」
「えぇ。それなら全然大丈夫よ。むしろそう言ってくれた方が意見を伝えやすくて助かるわ」
「ありがとう。花木もそれでいいか?」
「私は別にどっちでも良いよ。水先さんの計画した行動通りに事を為せればそれで良いし」
「よし。それじゃ一度全員で集まってこれからどう進むかを考えよう」




