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ゾンニート  作者: 竜獅子
第2章 神農製薬
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移動開始です。

「そろそろかしらね」



 僕達がキャンプを出発してから約1時間。

 夜間という事もあり少しの物音が周囲に響き渡るからなるべく物音を立てないよう慎重に移動していたけど、それでも死還人ゾンビである僕達の身体能力を持ってすれば人間なら不可能にも近い距離を静かに移動出来た。

 キャンプから目的地までの距離を考えると、確かに美桜みおの言う通りそろそろ到着しても良いような感じはする。



「僕も体感だとかなり近い所まで来ている気がする。でも、なんか変じゃないか?」


「何が?」


「僕達が向かってるのは壊滅した自衛隊のキャンプで、そこに別の部隊の自衛隊が向かってるから先にそこに残ってる物資を僕達が頂こうって計画だったよな?」


「ええそうね。水先の言う通りならその筈よ」


「だよな。でも、ここに来るまでかなりの距離を歩いて来たけど、生きた人間の気配なんか一切感じなかったし、自衛隊が車やヘリを使って大移動をしている音も一切聞こえなかった。普通、何かしらの音は聞こえそうなものだけど僕の勘違いか?」


「言われてみればそうね……」


「なんだか興味深い話をしてるじゃないか。俺も話に混ぜて貰ってもいいかい?」


「東?先頭を歩いていなくても良いのか?」


「何、案内は花木に任せてるから大丈夫さ。それよりれいが言ってた事が俺も気にはなってたからさ。鈴の言う通り、どうも静か過ぎる。もうじき目的地に到着するってのに一向に自衛隊の連中とかち合う気配がない。水先さんの話だと1〜2回は遭遇する可能性があるって話だったから随分と慎重になってたんだけどな」



 どうやら東も道中のあまりの静けさに違和感を感じていたらしい。

 元々僕達は基本的に死還人ゾンビになってからあらゆる五感が研ぎ澄まされ、物音の少ない夜間などは特に聴覚が敏感になっている。

 個人差もあるだろうが数km先の物音まで聞こえる僕達の耳に未だ僕達以外の物音がしないのは流石におかしい。

 よくよく集中して聴いてみれば、水先みずさきが代表の第1班と池森いけもりって人が代表の第2班が別々のルートから進行しているのが分かるけど、それだけだ。

 自衛隊に限らず生きた人間すら近くにいる気配がない。

 時刻は22時を過ぎていて、辺りに居る人達が完全に寝静まってしまったと考える事も出来るが……



「それならそれで別に良いんじゃねぇのか?何事も無く目的を達成出来るならそれに越した事は無いじゃねぇか」


「そうね。錬治の言う通りよ。現状特に問題が無いならこのまま進むべきじゃないかしら?勿論この事を頭に置いておいて周囲を警戒しながらね」


「気にはなるけど僕も美桜みお錬治れんじの意見に賛成だ。考え過ぎて空回りするのも嫌だしな」


「……ふむ。それもそうだな。一度進むのを止めて周囲の索敵をしようかと考えたが、ひとまずは保留にしとこう。よくよく考えれば水先さんと池森さん達の班と足並みを揃える事の方が大事そうだしな。よし!貴重な意見をありがとう!俺は先頭に戻る事にするよ。また何か気がついた事があれば言ってくれ」


「あぁ。そうさせて貰うよ」



 そう言って東は軽快なフットワークで先頭へと戻っていった。



「……実のところ美桜みお的にはこの静けさ、どう思う?」


「嫌な感じ、とだけ言っておくわ。実のところも何も何かを判断する為の情報が全然無いじゃない。今回の計画は私達が事前に調べて得た情報元に立案されているんじゃなくて、第三者が用意した情報と計画に便乗させて貰ってるだけだから、どこまで正確でどこまで信用出来るか全く分からないもの」


「それもそうか」


「えぇ。まぁ別に深く考える必要はないんじゃないかしら?多少の事なら私達だけでも対処出来るだろうし、最悪この人達を見捨てて私達だけで逃げちゃえばいいし」


「……一応世話になってる人達に対して酷い言い草だな。美桜みおには人の心が無いのか?」


「死んで半死還人ハーフになったからそんなものとうの昔にどこかへ落としてきたわ」


「……そうか」



 まぁかく言う僕も最悪の場合は美桜みおと大体同じ事を考えていたからあんまり人の事を言えないのだけど。



「ん?なんだ?」



 急に前の方が騒がしくなってきたな。

 何かあったのか?



「全員撤退だ!近くのビルへ逃げ込むぞ!」


「は、おい!なんだってんだ!」


れい!話は後だ!今は全力で俺達に付いて来てくれ!」



 東が班員に声を掛けると、全員がきびすを返すようにしてこれまで来た道を戻るように駆け始めた。

 これまで足音でさえなるべく立てないようにしていたのに、そんなものはお構い無しでただひたすらに後退する事だけを考えているようだった。



美桜みお錬治れんじ!なんだかよく分からないけど僕達も東達に続いて戻ろう!」


「お、おう!」


「一体何があったのかしら?」



 僕には何か異変があったようには思えないが、東のあの焦りようはただ事じゃない。

 何がどうなってるのかはさっぱり分からないけど、今は何も考えず指示に従った方が良さそうだ。



「行こう!」



 僕達は班の最後尾に付いて、そのまま近くにあった数十階程あるビルへと駆け込んだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] おかえりなさい さて、どうやら罠っぽいですが何があったのやら
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