夢を神格化しちゃってます
かなり短めです。
「あんたの言う声が、僕の思っているものと同じものなのかは分からないけど、1つ思い当たる事がある事を今さっき思い出したよ」
「どんなことだい?」
どうせいつか話さなければいけなくなる羽目になるくらいなら今のうちに話しとこう。
そして後の事は知らんフリを決め込む。
それで大丈夫な筈!
「僕がさっき目覚める前、最早目覚める事すらせずにそのまま眠りにつこうとしていた時にお前は必要とされているんだ!だから目覚めるんだ!みたいな事を誰かに言われた夢を見たんだ」
実際どんな風に言われたかまでは覚えてない。
何せあれは夢だと思っているし、実際今でも記憶はそこまで定かじゃ無い。
そんな感じの夢を見たなと朧げに思い出しただけだし。
「夢……その夢に出てきた、君に語りかけた人はどんな容姿をしていた?性別は?男か?女か?」
「容姿は特に。声だけ聞こえたような感じ。性別は多分女かな?喋り方は何となく女っぽかった気がする」
「そうか……ならやはり」
「ん?」
「君の他にも、一度死にかけた死還人が再度目覚める時に同じような体験をした者が少なからず居る。かく言う私も似たような体験をしている」
え?そうなのか?
「私も君と同じく声の持ち主の容姿は確認していないし、性別も恐らく女のものだろうという予想しか出来ていない。それは同じ体験をした者も同じだ。でも、だからこそ君が今話してくれた事は私達が体験したものと同じものだと裏付ける事が出来る」
皆んなが皆んな似たような夢を見ただけでただの偶然なんじゃないか?
「あの体験が……あの夢が死にかけた死還人の特有の幻覚なのか、何か特別な理由があって体験出来る者が限られているのかはまだ分かっていない。だが、私達の仲間以外にも同じ体験をした者がいると分かった以上ただの偶然で片付けるわけにはいかないだろう」
余計な事言ったかな?
黙ってれば良かったかも。
「実を言うと君から話を聞くまでこの件に関して少し疑念を持っていたからな。同じように死にかけた仲間が話を合わせようと実はそんな体験をしてないのに、あたかもそんな体験をしたと振舞っているんじゃないかって。でも、君はその話を誰かに聞くのはおろか私の仲間と出会った時には既に倒れていた。故に話を合わせる事も、合わせる理由も無い」
いや、まぁ確かにそうなんだけどさ。
「神農製薬の件が片付いたら一度ちゃんと調べてみるのもいいかも知れないな。[女神]の事を」
「女神?」
「あぁ。私達は総じて死にかけた時に彼女の声によってこの世に返ってきている。だから親しみと敬意を込めてそう呼んでいるんだ」
女神て。女神て。
実は本当にただの幻覚かも知れないのにわざわざ名前までつけて敬意を払うなんて。
死還人ってまともな意識を持つと得体の知れないものを神格化して崇拝するんだな。
死還人と特徴追加。
人間と同じように神秘的なものを崇拝する事もある。
「まぁこの事は一先ず置いておこう。これからの事に関係は無いからね。1人で熱くなってしまい申しわけない」
いや、別に構わないんだけどね。
そっちで勝手に自己完結してくれる分には何の問題も無いからさ。
とりあえず早く本題に入って欲しい。




