2人目の追跡者
前回の投稿からかなり時間が経ってしまいました……
書かなければいけないと思いつつも中々筆が進まず……
本当に申し訳ありません…!
「ふふっ。そんなに驚かなくてもいいじゃないか。君達だって僕と同じなんだからさ」
「……あなた、一体何者?」
「だから死還人だよ死還人。三回目だよ?」
「そうじゃない!何故あなたは死還人なのに普通に喋っているのかと聞いているの!」
「さぁ?何故でしょう?と言うか僕が死還人だって言うことには疑問を抱かないんだね」
「そこは疑う余地は無いわ。だって錬治…彼があなたを襲っていないもの」
生身の人間相手だと錬治の死還人としての本能が働くことは既に確認済み。それが発動しない以上、この男は死還人以外にありえない。
でも、何故?私の他にも死還人と共存し、自由に改造を施せる人間が居るの?神農製薬の幹部の誰か?……いや、幹部の中にそんな奴は居ない、筈。なら外部の人間?……分からない。
「あぁ、君はそれを判断基準にして僕を死還人だと認識したのか。なるほどなるほど」
この男の物言いはまるで他にも死還人を見分ける方法があるように聞こえる。少なくとも、私は錬治が居なければこの男が死還人だと言うことは分からなかっただろう。生前と全く変わらない綺麗な体を持つこの男を前にしては。
「……それで?何が狙いなの?食料?資源?情報?戦力?あなた達が私達に求めているのは何?」
「ふふ。流石はこの世界を死還人と共に生き残っている人だ。話が早くて助かるよ。皆、出てきて」
この男……水先が声をかけると物陰に隠れていた人達が、数十体近くの死還人が姿を現した。
「……私達を殺すつもりなのかしら?」
「まぁまぁ、そう警戒しなくても大丈夫だよ。本当に殺すつもりなら奇襲をかけて殺してる。いくら君達でもこの数の死還人を相手にするには厳しい所があるんじゃないかい?それをしていない以上、少なくとも僕達は君達に対して敵対心を持っていないと解釈して欲しい」
ぞろぞろと現れた死還人の数は56体。対する私達は二人+行動不能者の三人。流石にこの人数差では勝敗は見るまでもない。本気で私達を殺そうとしていたのなら奇襲をかけられた時点で殺されていたのだろう。
それを考えると一応は信じてもいいのかもしれない。勿論警戒は解くつもりはないけれど。
「……分かったわ。とりあえずあなたの言い分は信じることにする。だから本題に入ってちょうだい。何故、私達に近づいてきたの?」
「単純さ。僕達は世界に復讐をしたい。その為にはこちら側の人間である天祢美桜、君の協力はかかせないんだ」
「私のことを知っているの……?」
「そこまで知っているわけじゃない。君が神農製薬の幹部で、人間と死還人の中間にあたる存在であり、神農製薬の狂った思想に感化されていないということ。僕が知っているのはそれだけだ」
どこがそこまでよ。殆ど知っているじゃない。
私が神農製薬の幹部であるという事は何かしらの手段を用いて調べれば簡単に分かること。私の顔と名前が分かっているのなら、ネットがまだ通じる所に行けば本社のHPを検索すればすぐに出てくる。
だけど、所詮はそこまで。私が半死還人になったのは最近のことだし、私個人の思想はHPには乗っていない。なのに何故こいつは私が半死還人であり、人体実験をするようなクズ会社の思想に感化されていないと知っているのかしら?
もしかして私が口を滑らすのを誘っている?
「分からないわ」
「何がだい?」
「私の素性をそこまで知っていることよ。あなたとは面識が無い筈。あなたはどこで私の情報を得たのかしら?それを教えてもらえない限りは完全に信じることは難しいわ」
さぁどう答える?
「くっく…!君は疑ぐり深い性格のようだね。でも、それぐらいが丁度いい。君の質問に答えよう。さぁ!対面の時間だ!葉君!」
「葉……?まさか!?」
「お久しぶりです。天袮さん。あれからどうなったのかと心配していたのですが、無事なようで安心しました」
葉……
まさか彼がこの男の側に居たなんて。
でも、無事で良かった。
「美桜さん。この男は…?」
「錬治にはまだ話していなかったかしらね。この人は品本葉。神農製薬では私の部下だった人よ。それに、この様子だと彼も半死還人よ」
「半死還人!?美桜さんと同じですか!?」
「ええ。そうなのよね?葉?」
「はい。天袮さんは私達のこの状態の事を半死還人と呼んでいるのですね。別段私はこの状態についての名前を気にしてはいませんでしたが…言われてみるとしっくりくるので私もそう呼ばせてもらいましょう。勿論、私も死還人です」
なるほど、ね。
葉がこの男に付いているのならこれまでの話は全て納得いくわ。
葉なら死還人を手術して声帯を直すことは可能だし、私のことを知っていてもおかしくない。
たまにある飲み会でよく葉に愚痴っていたし。
「理解してもらえたかな?」
「ええ。完全に理解したわ。疑いの余地があるかどうかはともかく、私の素性を知っていることや、あなたが死還人なのに話せることについては納得がいった」
「なら、私達に協力してくれるかい?」
「でもそれはまた別の話。私も神農製薬の幹部は全員殺してやろうとは思っているけど、あなた達に協力することが私の意に反するようであれば協力は出来ない。だから、まずは話を聞いてから。どうするかの判断はそれから決めるわ」
まぁでも、実の所彼らに協力することについてはまんざらでも無いというのが正直な気持ちね。
どんな場合であれ、前回みたいに化物を生み出している馬鹿が居ないとも限らないし、そうなのであれば味方は出来るだけ多い方がいいに決まっている。
勿論だからといって何にも話を聞かずにほいほいと相手の話に乗る程私も馬鹿では無い。
一応聞くだけ聞いてみましょう。
鈴も早く治療をしなければならないし。
「君は…本当に疑り深い、と言うか慎重と言うべきなのかな?ふむ。少し分かりかねるが……君が味方になってくれた時のことを考えるとその方が都合がいいのも間違い無い。ふふ。よし。なら是非とも話を聞いてくれ」
「ええ。出来たらなるべく短めにお願いね。鈴が…連れがちょっとマズイ状態になっているから早く治療をしなければいけないの」
「!そこに横たわっている彼か!なんでもっと早く言わないんだ!そんな大事なこと、話を中断させてでも言うべきだろう!楠木!白玉
!」
「「はい!」」
「そこの彼の治療を!」
「「了解です!」」
「あっちょ!何を勝手に!ふざけな」
「天袮さん。大丈夫です。彼の治療は二人に任せて下さい。彼も死還人なのでしょう?」
「そうだけど!まだ完全に信用していないあなた達に鈴を自由にさせるわけには!」
「天袮美桜さん。ここはどうか我々を信用して欲しい。我々のことを完全に信用してもらう為にも、彼の治療はミスなく完璧に行わせてもらう。だからどうか、信じて欲しい」
水先の言葉と表情に嘘は無いように思える。
突然のことで焦ってしまったけど、ここまで私達に危害を一切加えていないのも事実。
不安はあるけど、葉が付いている人の言うことなら本当に大丈夫なのかも知れない。
「……分かったわ。でももし鈴を死なせでもしたら!」
「私のことを好きにするといい。四肢を切断してもいい。殺してくれてもいい」
「……鈴を任せたわ」
「ありがとう。楠木!白玉!どれだけ物資や人手を使ってもいい!彼を完全に治してやれ!」
「「勿論です!」」
「美桜さん、大丈夫でしょうか?」
「彼らを信じましょう。少なくとも、嘘を吐いているようには見えないから」
「分かりました」
「あの二人なら大丈夫さ。生前は優秀な外科医だったからね。さぁ、彼の治療を行っている間に話をさせてもらおう。ゆっくりとね」




