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ゾンニート  作者: 竜獅子
第2章 神農製薬
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ビルの中で起きたことです。

更新が停滞しているうちでもブクマ登録評価をしてくださる方がいて本当に励みになります!

ありがとうございます!

「仲間とはぐれた俺はせめて他の避難所まで移動して別の隊と合流することを考えたのだが、思っていた以上にここは奴らが多く居てな。そう簡単には進むことが出来なかった」

「思った以上に奴らが居た?おかしいわね。私達がここに来るまでの間、死還人(ゾンビ)は一人足りとも見かけなかったけど?」


「あんた達も今日まで生き延びているだけあって運は相当に良いみたいだな。ここを歩いていて奴らに遭遇しないなどまずあり得ない。奴らは例え建物の中に居ても俺達人間を見つけたら襲いかかってくる。奴らに見つからなかったのは本当に偶然さ。ここらにはウヨウヨ居る」

「ウヨウヨねぇ……あーでも、あーうん。なるほど。いいわ。続けて」



 僕達が気にしていなかっただけで本当はここまでの道中も気を巡らしたら結構な数の死還人(ゾンビ)が居たのかもしれないな。

 そもそもの話僕達が死還人(ゾンビ)なんだから襲われる危険性は皆無に等しいし、何よりも僕達は人間じゃないから見つかっていたとしても襲いかかってこない。

 言ってしまえば同族だからな。

 死還人(ぼくたち)は人間を殺したいという欲求はあれど、死還人(どうぞく)を壊したいという欲求は無い。

 ある意味、透明人間みたいな感じなのだろうな。



「……?まぁいい。それで移動し続けてから三日経ったある日、流石に体力の限界を感じた俺は近くのスーパーに逃げ込んだんだ。食料も水も無くなってきた頃だったしな。当然そのスーパーもかなり荒らされてはいたが、幸い少なからずまだ食料は残っていた。だからそれを回収しようと店内を探し回っていた時にこいつらと出会ったんだ」

「こいつら?」


「あぁ。初めて出会った時には三人組だったんだ。田中啓二(たなかけいじ)柊正弥(ひいらぎまさや)の二人の男子に菜絵を加えた三人。発見した時にはかなり体力を疲弊(ひへい)しているようだった。俺達の任務はこの街に残る一般人の保護。だから迷わず菜絵達三人を引き連れて安全な場所へと避難することにした」

「その場所が私達が出会った場所かしら?」



 ここに残りの二人が居ないということは恐らく……



「そうだ。あそこには俺達が訪れるよりも前に他の人達が立て籠っていたようでな、一種の避難所みたいな場所になっていた。幸いにもちゃんとした人間が統治していたみたいでかなり安全な防衛体制が取れていた。立て籠るだけでなく、外の見回りも定期的に行っていたみたいでその見回りの人に偶然出会えて俺達もそこに迎え入れてもらったんだ」

「そこに居たのは全員一般人だったのかしら?」


「多分な。身なりも小綺麗な人が殆どで軍人らしき人は一人も居なかったからな。話を戻そう。そこで俺達も1日過ごさせてもらったんだ。周囲の安全の確認と情報収集もしておきたかったからな」

「何か有力な情報は得られたのかしら?」


「特に収穫は無かったな。聞いた話は全て俺達がここに来る前に基地で行ったブリーフィングと殆ど同じ話だった。あえて言うのなら、全身傷だらけの人間に襲われて、襲われた人が死んだと思ったら動き出して他の人を襲っての繰り返し。事態の異常さに気付いて逃げ始めた時にはかなりの仲間が殺されたってな。神農製薬の話こそ出ていなかったが、一ヶ月経った今でも一般人の認識はその程度だってことぐらいか」



 当たり前と言えば当たり前のことなのだろう。

 外を歩けば死還人(ゾンビ)に襲われる危険があるから迂闊に情報収集を行えないし、かといって内に籠ってばかりでは何が起きているかさえろくに把握出来ない。

 死んで死還人(ゾンビ)になるのが怖いのは分かるが、僕から言わせてもらえばなってしまえばこっちのものだ。

 余程生前の生活に執着が無い限りは殺戮者のように狂うことも無いし、多少知能は低下するかも知れないがそれでもかなり自由な生活をすることが出来る。

 体が壊れるかウィルスが抜けきらない限りは。



「ま、そんなものでしょうね。日本各地にそのような場所はあるでしょうし、どこの認識もその程度の筈。いくらあなた達自衛隊でも一般人に全ての情報を話すわけでは無いでしょう?」

「勿論だ。事態が収束するまでは余計な混乱を招かないよう最低限の情報しか与えないようにしている。だから菜絵、今聞いている話は暫くの間内緒にしておいてくれよ?」

「分かった」


「あんた達も無闇やたらにこのことを喋るのはなるべく控えて欲しい。話すならそれこそ俺のような軍人か、その関係者。本当なら重要参考人として基地まで付いてきて欲しいんだが―――」

「それはお断りね。私にはやらなければいけないことがある。それを終えるまでは余計な回り道はしていられないの」


「どうしてもか?」

「どうしても。さ、話を続けて」


「まぁそれで一時的とは言えそこで生活する以上俺にも当然役割が与えられた。その役割はビル近辺の警護と安全の確保。銃を持っているのだから当たり前の話だな。俺もそれを引き受けて毎日定時には外に出て奴らが居ないか見回っていたんだ。今日も同じように見回っていた時だ。ふいにビルから悲鳴が聞こえた」



 僕達が聞いたあれか。



「悲鳴が菜絵のものだということはすぐに分かった。俺は急いで皆が集まっている場所に行ったのだが、そこには既に生きた人間は菜絵以外に居らず、全員が死還人(ゾンビ)になって菜絵を襲おうとしていた」

「よく生き残っていたわね。あいつらの俊敏さは人間のそれより遥かに上だと思うのだけど?」


「よく、分かりません。皆が奴らになったことはすぐに分かりました。でも、皆はゆっくりと私に近づいてきて徐々に追い詰めるだけで直接襲ってくる人は居ませんでした」



 考えられない話ではないな。

 神崎の時もリーダーの死還人(ゾンビ)が行動を抑止していた。

 僕のように殺人衝動を抑えられる死還人(ゾンビ)の誰かが襲わないように指示を出していたとも考えられる。

 真相は分からないが、この人が生きている以上何らかの理由があってすぐには襲えなかったのは間違いないだろう。



「奴らは俺がその場に着いたことに気づくとうってかわって俺に襲いかかってきた。……たった一夜ではあったが世話になった人が奴らとなったからと言って躊躇すれば死ぬのは分かりきったこと。だから俺は……」

「なるほどね。とりあえず合点はいったわ。悲鳴と銃声はあなた達のもの。あの部屋の惨状はあなたが死還人(ゾンビ)を撃ち殺したから」


「……そうだ。身を守る為には仕方が無かった」

「ま、当然ね。その判断は間違ってはいないわ。でも、だからこそ同じことを繰り返さないように今回の過ちを次に活かさなければならない。そうでしょう?」

「……あぁ。そうだな」



 今回の過ちを次に活かす?

 何の話をしているんだ?



「中で何が起こっていたのかしら?人は死還人(ゾンビ)になる。けれどもほんの僅かな間に……あなたが見回りに行っている間にあんなにも大勢の人が死還人(ゾンビ)になるわけが無い。ましてや菜絵さん以外の誰もが悲鳴一つ出さずになんてね」

「そうだ。俺達は騙されていたんだ」


「騙されていた?誰に?」

「……ビルの中に居た全員さ」



 どう言うことだ?

 ビルの中に居た人達全員に騙されていた?

 話が見えてこないぞ。



「俺が一般人だと思っていたのは全員奴らだったんだ。奴らは生きている人間を装って本当に生きている人間をおびき寄せて、油断させてから喰らう。一日に二人ずつゆっくりと」

「待って。どういうことかしら?死還人(ゾンビ)が一般人のフリを人間をおびき寄せる?」


「そうだ」

「馬鹿な!死還人(ゾンビ)は言葉でのコミュニケーションが取れないわ!アーとかウーとかしか言えない筈!でも、あなたの話を聞く限りではその人達は普通に喋っていたのでしょう?死還人(ゾンビ)は喋れない!」


「だが事実だ。お前達が来る前に俺は殺した人達の体を調べた。そうしたら全員背中のど真ん中に(・・・)が空いていた。奴らに殺された時に出来た傷だろう」


「でも、それだけじゃ本当にあなた達が出会った時には既に死還人(ゾンビ)になっていたかは分からないじゃない!それに、どうして一日に二人ずつ殺されたって分かるのよ!」

「お前達は見てないかも知れないが、あの階には狡猾に隠された別の部屋があったんだ。俺達も奴らが襲ってきた後調べて初めて分かった。その部屋には人間の頭が一つのテーブルに二つずつ、ご丁寧に殺したであろう日付まで添えて並べられていた」



 それじゃまさか一日に二人ってのは……



「一番新しい日付は今日のもの。並べられていた頭は田中と柊のものだった」

「……!」



 マジか。

 そんなことをする死還人(ゾンビ)が本当に……?

 僕がこれまで見てきた死還人(ゾンビ)はそこまで高度なことは出来なかった。

 誰もがどこか欠落していて映画さながらのゾンビ。

 人に成り済まして騙して喰らうなんて高度なことを出来る筈が……



「……それであの時こう言ったのね。『人を信じた結果がこれだ』って」

「あぁ。こればかりは軍のブリーフィングにも無かった。人に成り済まして計画的に襲ってくる奴らが居るなんて思いもしなかった。正気を保っている人間が必ずしも生きた人間とは限らないって思い知ったよ」


「みたいね。あなたのその答えは私の予想の斜め上を行ってくれたわ。てっきり私は誰かが全員を睡眠薬か何かで眠らせているうちに死還人(ゾンビ)を中に入れて襲わせたのかと」

「はっは。それが本当ならどれだけ良かったことだろうな。この事実を知ってしまった以上、目の前に居る人間が本当に生きた人間なのかどうかは分からない。早急に本部に報告して対策を練ってもらわなければならない」


「でも本部に報告する手段は無いのよね?」

「あぁ。だから俺はこれから他の避難所に移動するつもりだ。そこなら通信設備も整っているだろうからな。菜絵もお前達も一緒に来るだろう?」

「私は、一緒に行く」


「美桜、どうする?」

「私は行かないわ。あなた達だけで行きなさい」


「何故だ?ここに残っても危険なだけだぞ!」

「そう。ここに残るべきじゃない。私達と一緒に行こう?」


「さっきも言ったけど、私にはやらなければいけないことがある。避難所に行けば私は重要参考人として暫く拘束されてしまう。そうでしょう?」

「それはそうだが……奴らに襲われて死ぬよりはマシだろう?」


「残念。私は今の世界で生き残る術を身に付けている。だから死なないわ。鈴もそう。ね?」

「申し訳ありませんが、僕も行きません。僕にもやらなければいけないことがあるので」



 美桜が行かない以上僕も一緒に着いていく理由が無い。

 美桜の言う通り僕達は死還人(ゾンビ)に襲われないから 死ぬわけでもない。

 それに、美桜に着いていくことが僕の目的を達成する唯一の方法だからな。

 例えどんな選択でも着いていくさ。



「おいおいお前もか!?……ったく、でもそれならこれからどうするつもりなんだ?それだけでも聞かせてくれないか?」

「私はあのビルに戻るつもりよ。あなたの話が嘘とは思えないけど、少し不可解なこともあるからね。それを調べることにするわ」


「馬鹿なことを言うんじゃない!あそこがどんな場所か今説明したばかりだろう!?一応は全滅させた筈だがまた奴らが集まっているとも限らない!死ににいくようなもんだぞ!?」


「だから何?私は死なない。今の世界で生き残る術を身に付けているから。それに、私は世界をこんな風にしてしまった神農製薬の社員で幹部。あなたには分からなくても私が調べれば分かることもあるかもしれない。気になって仕方が無いのよ。あなた達が出くわした明らかにイレギュラーな死還人(ゾンビ)のことが」



 まぁ僕も気になる所ではあるな。

 人間のように振る舞い、言葉を喋って計画的に人を喰らう死還人(ゾンビ)

 背中に空いてあるという傷では無く穴。

 調べてみて損は無いだろう。

 美桜なら新しく分かったことが僕の体に活かせるかもしれないしな。



「……はぁ。そこまで言うなら止めない。専門的なことは専門家に任せるのが一番だろうしな」

「そう言うこと。あぁそれと、どうせ確認するから別にいいのだけどあなたが見た背中の穴ってのはどんなものだったのかしら?鉄パイプで貫いたような穴?えぐりとられたような穴?」


「えぐりとられたいたかどうかまでは分からないが、鉄パイプのように筒状の何かに貫かれたような感じでは無かったな」

「そう。それだけ分かれば充分よ」



 えぐり取られたような傷ねぇ。

 僕達の力なら確かに可能だろうけどわざわざ喰べもせずにそんなことをする理由が分からない。

 ……謎だ。


「まぁそれなら期待はしないが何か分かればどこかの避難所にでも立ち寄って情報を降ろしてくれ。避難所を設立する予定のポイントをマークした地図の写しをやるからそれを頼りに向かってくれ」

「気が向けばそうすることにするわ」


「それとさっき話した俺達が担当する筈だった避難所はここだ。こここそ向かうことはお奨めしないがな」

「どうも。一応肝に命じておくわ」


「軽いこったな。ま、それだけ自信ありげに言うんだ。死ぬんじゃ無いぞ?」

「あなたもね。しっかりと守ってあげるのよ?」


「任せろ。もう……あんなヘマはしないさ。だから安心しろ。何があっても守ってやるからな!」

「お願い、します。頼りにしてます」



 訓練を積んだ軍人ならたった一人ぐらいなら完璧に守り通して目的の場所まで移動出来るだろう。

 距離も数百mなんだ。

 きっと大丈夫。



「それじゃあな。生きていたらまた会おう」

「生きていればまた会いましょう」



 僕達は二人を見送ると、まずはあのビルへと向った。

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