葉崎という男です。
短くてごめんなさい……!
「俺はあんたの言う通り、陸上自衛隊員だ。所属は西日本中国地方第七中隊、階級は曹長を勤めている」
「はい。嘘ね」
判断するの早いな!
「……美桜?まだ嘘と決めつけるのは早いんじゃないか?」
「早くないわ。言ったでしょう?私に自衛隊の知り合いが居るって。でも、そんな部隊の名前は聞いたことが無いわ。間違いなくデタラメよ」
「おいおい、話はちゃんと最後まで聞いてくれ。確かにあんたの言うことは間違っちゃいない。本来ならそんな部隊は存在しないさ」
「本来なら?」
「あぁ。情けないことに俺達自衛隊ですら事の重大さに気づくのに時間がかかってな。フル装備で奴らを迎え撃とうかと言う時にはかなりの数の隊員が奴らになっていた」
テロでも戦争でも無い完全な生物災害。
それも相手が同じ人間ときたものだ。
悪意の無い、ただひたすらに人を襲う死還人に発砲許可を出すにはかなりの時間がかかったのだろう。
下手をすれば殺人だからな。
葉崎の話は信憑性があると思うのだが。
「なるほどね。それじゃ今のあなた達は各地方で集められた隊員で構成した寄せ集めの部隊ってことかしら?」
「言い方は悪いが……まぁそう言うことになる。あまり人に見せるものじゃ無いんだが……ほら。これなら俺が陸上自衛隊だと証明出来る立派な証拠だろう?」
そう言って葉崎が胸ポケットから取り出したのはパスケースのような入れ物だ。
警察で言う警察手帳のような物だろうか?
自衛隊にはそう手の手帳は無いが身分証明書を自費でパスケースを購買で買ってその中に入れると言うのを聞いたことがある。
あれがそうなのかも知れないな。
「……これ以外に現物を見たことが無いから何とも言えないけど、とりあえずあなたが自衛隊だと言うことは信じるわ。でもそれなら他の部隊の人はどうなったのかしら?単独行動?死還人にやられた?そこは答えられるのかしら?」
「自己紹介と話はズレるが……それも話さなきゃいけないことだろうしな。菜絵、話すぞ?いいな?」
「……構わない」
誘導尋問……?
美桜のペースだな。
「元々俺達は数百人単位で空路からこの付近に降りたって任務を行うように指示をされていたんだ」
「任務の内容は?」
「主に人命救助だ。さっき藤堂君が確認したように、簡易的な避難所をいくつか設けてそこを拠点にして一般人を匿い、必要があれば奴らと感染者の排除を行う」
「排除、ね。感染した時点で国はその人を人間とは見なさないことにしたのかしら?」
「……そう言うことになる」
国の決断は正しい。
が、感染した人からすれば絶望的なものだろう。
治療すら受けさせて貰えず、それどころか国の許可の下殺されるのだから。
……まぁ、死還人になった所で一概にそれが悪いとも言い切れないのだけどな。
「それで?」
「俺は一つの部隊長を任せられていたのだが、決められたポイントに避難所を設立している最中に運悪く奴らの群れに襲われてな。応戦はしたものの仲間は霧散。持ってきた装備や資源は滅茶苦茶に。唯一無事だったのがケースに保管されていたこの銃と弾だけだった」
「連絡は取れないの?」
「残念ながら無線も携帯も壊してしまってな。今の俺には仲間との連絡手段は無い」
しょうがないと言えばしょうがないことか。
葉崎も生き残る為に必死だったのだろう。
「そう。なら他の銃器は?」
「もしかしたらまだ無事な物が残っているかも知れないが……仮に残っていてたとしても回収は不可能だろう。前に1度同じことを俺も考えて回収に行ったんだが、昼夜問わず奴らが辺りを徘徊していて近づくことさえ出来なかった」
ミリタリー系の死還人でも集まって来ていたのだろうか?
もしまだ残っているのがあれば僕達なら回収出来るかも知れないな。
「へぇ……一応その場所を教えてもらってもいいかしら?」
「別に構わないが……そこに行くつもりなら死にに行くも同然だぞ?」
「無茶はしないわ。……もしかしたらの希望的観測の意味を込めてよ」
あ、美桜の顔若干笑ってるな。
絶対僕と同じことを考えてるぞ。
悪い顔だ。
「……まぁ後で地図をやるよ。無意味だとは思うがな」
ごめんなさい。
多分最大限有効活用します。
「えぇ。ありがとう。……とりあえずあなたが何者で、どうやってここまで来たのかは分かったし、一応信用もするわ。それで次の疑問なんだけれど、私達が出会ったあの場所で一体何が起こっていたの?」
!
そうだな。
ざっと見ただけでも十数の死還人……若しくは人間の死体があった。
状況から考えて、葉崎が銃で撃ち殺したと考えるのが妥当だろうが……
雰囲気から察するにそう簡単な話では無さそうだな。




