推理をしています。
「ここなら大丈夫かしら?鈴、辺りに死還人の気配はある?」
「んー……どうだろう?今は昼間だし、ちらほらと色んな音が聴こえるから一概に気配が無いとは言えないかも。まぁでもそんなに音は近くないし余程油断してない限りは大丈夫だと思うよ」
5~600m先を中心に人が集まってる感じがあるな。
何かの避難所でもあるのかな?
「そう。ありがとう。他に何か気になることはある?」
「あー5~600m先に人が集まってる感じがあるよ。多分避難所。しっかり集中したらどんな集団なのか分かると思うけど。どうする?」
ちょっと障害物が邪魔だけど、多分会話もギリギリ聴こえるんじゃ無いかな?
やってみないと分からないけど。
「……おいおい。藤堂、とか言ったか?お前さん、本当にそんな先の音が聴こえているのか?」
しまった。
あまり不用意にこんな所を見せるべきじゃ無かったか?
「確かにお前さんが言う先には陸上自衛隊が展開している一時的な避難所がある。俺達もそこに行こうとしていたんだ。間違いない。……それにしても、凄いな。何か特殊な機器でも身に付けているのか?」
「いえ、そう言う訳では」
「はいはいちょっとストップストップ。色々気になることはあるだろうけど、まずはお互いの素性を明かすのが筋ってものじゃないの?私達も得体の知れない人を信用して情報を流す訳にはいかないし、これから行動を共にするのなら少しでも知っておいた方が何かと親しみやすいんじゃないかしら?」
「む。そうだな。申し訳ない。少し不粋だった」
危ない危ない。
美桜に助けられたな。
時間と余裕があれば適当な嘘は吐けるけど、いきなりだとしどろもどろになるのは間違いないからな。
「分かってくれれば別にいいのよ。……それじゃ私達から先に詳しい自己紹介をするわね。まず、私は神農製薬の社員で―――」
「ちょっと待った!?神農製薬の社員だと!?世界がこんな惨状になってしまった元凶じゃないか!?」
おぉ?
やっぱりそこら辺の情報は一般にも漏れているんだな。
「えぇそうよ。ついでに言えば私はそこの幹部で、勿論生きた人間が死還人になるウィルスの存在も知っていた。……あぁそうそう。この世界に死還人が蔓延する発端となった場面に出くわした数少ない張本人でもあるわ」
「な、!な、!な、!?」
葉崎があんぐり、と言う表現が正にぴったりなぐらいに大きく口を開いて美桜のカミングアウトに驚いてる。
そんなに驚く……ことなんだろうなぁ。
僕はもう慣れてしまったから別にどうでもいいけど、これ、実際はかなり重要な情報なんだろうし。
久野は……特に驚くわけでも無く、別段変わった様子は無いな。
ほぼ無表情だな。
「後は……まぁ天才にして美人のこの私には未だ彼氏が居ないと言うことかしら?」
あ、それやっぱり言うんだ。
キャラ付け……じゃなさそうだな。
そんなに恋人が欲しいなら自衛隊の人達が言い寄って来たときにめぼしい人を探せば良かったのに。
「はぁ!?お前、今そんなことどうでもいいだろう!?」
「そう、かしら?ねぇ?」
「ちょまっ!?」
あ、違う。
これハニートラップの類いだ。
「こんな世界だからこそ、子孫を残す為にも心から体を許せる恋人が必要なんじゃ無いかしら?」
美桜が葉崎の隣に移動して、腕に絡み付く。
「ま、ま、ま、ま、!?」
それに動揺して顔を真っ赤にする葉崎。
「………………」
憎悪にも似た目で美桜を睨む久野。
え、何この茶番。
僕どんな顔をしてこの場に居ればいいの?
「私なんかどうかしら?頭脳明晰、容姿端麗、将来有望の優良物件よ?」
「い、いや!あのだな!今はそんなことをしている場合では無いわけでだなそういうアレは困るというかわけでそのあれだそな」
「……一旦落ち着こうか。何言っているか分からなくなってきているぞ。はい深呼吸深呼吸」
純情、なのか?葉崎は?
確かに美桜程の美人なら慌てふためくのもなんとなく理解出来ないでもないが……
まぁ、いいか。
とりあえず美桜のハニートラップには引っかかってるみたいだし。
「…………チッ」
久野の方も引っかかってるしな。
僕は知らないぞ。
変な三角関係が出来た所で助け船は出さないからな。
「ふぅ……それで?あんたの目的は一体何なんだ?何が目的で俺達に近づいてきた?」
うわー
めっちゃ警戒されてるじゃん。
そりゃそうだよねー
「いや別に?ただ単に陸上自衛隊員を取り込んでおけば何かと役に立つかと思って」
ん?
この人陸上自衛隊なの?
確かに銃は持ってるけど服装は普通の私服だし。
「俺が陸上自衛隊だと言った覚えは無いが?」
「えぇ。確かに言ってないわ。でも、あなたが持っているその銃、5.56mm機関銃MINIMI、通称MINIMIでしょう?普通科部隊の機関銃の装備の一つ」
「確かにこれはお前の言う通りの銃だが……殺された陸上自衛隊から調達した物だとは考えないのか?」
「まさか。いくら死還人が厄介な存在だとしても、機関銃を装備している隊員が簡単に殺されるわけが無い。殺されるとしても、弾を全弾撃ち尽くした後でしょうし、本体に血が付いている筈だもの」
あー……言われてみれば確かに。
「私達は多分その銃から発せられた銃声を頼りにあなた達の元まで来たのだから弾が残っていた証明になるし、見たところそこまで血は付着していないみたいだしね」
「……観察力が鋭いことだな。まぁ別に隠す必要も無いことだからな。今度は俺の自己紹介をするとしよう」
んー……
美桜の目的が分からん。




