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ゾンニート  作者: 竜獅子
第2章 神農製薬
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リスタートです。

「それでこれからどこに向かうつもりなんだ?」

「一応神農製薬の本社に行くつもりよ。可能性は低いけど、幹部の誰かが立て籠っているかもしれないし。それに誰も居なかったとしても流石に設備はまだ生きているだろうからあなたの身体手術もそこで行えるしね」

「なるほど」

「まぁ気長に行きましょう。交通機関が何一つとして使えない今、本社まで辿り着くにはまだまだ時間がかかることだし。歩きながら詳しいことを決めればいいわ」

「ん。了解」



 僕達は病院に残っていた感染者をあらかた治療し終えると、その中に居た医療関係者の人に美桜がまとめた残りの定期的な簡易治療の方法をまとめた資料を渡してあの病院を去った。


 感染者の人達は頼れる医者である美桜が居なくなることに不安を感じてなんとか引き留めようと騒いでいたが、ちゃんと渡した資料に沿って治療を受ければ元の健康体に絶対に戻れると伝えると渋々と言った感じではあったが最後は笑顔で僕達を見送ってくれた。


 その中には松本も居たのだが、あろうことか松本は僕達と行動を共にしたいと言ってきた時は驚いたものだ。

 松本曰く、大切な友人を殺したきっかけである神農製薬に復讐がしたいからとのこと。


 目指す目標としては美桜とほぼ同じなのだが、美桜は松本の同行を拒否した。

 と言うのも、もしもまた神崎のような人間があそこを訪れた時に、病院に居る人達を守る為に力で対抗しなければならなくなった場合には松本の力が必要らしいのだ。


 本人は自覚していなかったみたいだが、治療を行う際に検査をした結果、何故か神崎が投与したウィルスが松本には適合して、あんな化物になるどころか身体能力が飛躍的に上昇して僕達(ゾンビ)では無いのにも関わらず僕達(ゾンビ)と同等に近い力を手に入れていた。


 松本があのウィルスに生きながらに適合する体質を持つ特別な人間なのか、たまたま適合したのかは分からない。

 けれどもそれだけの力があれば当面の間はあそこに居る人達を守ることが出来るという理由から、松本には渋々と言った感じで残ってもらうことになった。

 若干へっぴり腰な所もあるが、やる時はちゃんとやってくれたのできっと大丈夫だろう。



「そう言えば美桜さ、僕ちょっと疑問に思ってることがあるんだけど聞いてみてもいいか?」

「あら?何かしら?」

「その、若干うろ覚えなんだが、僕達(ゾンビ)のオリジナルが産まれた経緯はともかく、そこからどうやってこんなにも感染爆発(パンデミック)が発生してしまったんだ?最初の段階ではオリジナルは感染力の影響が低かったんだろう?」

「あぁそのこと。理由は多分単純よ。あいつを追いかけた私を含める3人の研究員は甦った死還人(ゾンビ)を止めることが出来ずに気絶させられてしまったの。不完全とは言え死還人(ゾンビ)。力のリミッターは外れていたからね」



 んん?

 それでも感染の影響力は低いから問題無いんじゃ?



「それで私のように半死還人(ハーフ)になった誰かがウィルスの力に負けて、他の人間を襲い始めたのだと思うわ。そこから倍々方式に死還人(ゾンビ)の量産。人は未知の存在に直面したら冷静に事態を対処することは出来ない。ましてや人間が生き返って人を襲うなんて映画染みた現実、誰が信じるものですか。現状の把握が出来て対処が始まった時には既に遅かったのでしょうね」



 あぁなるほど。

 そういうことか。



「ん?なら美桜は他の研究員の行方は知らないのか?」

「知らないわね。目が覚めたらオリジナルも二人の姿も残っていなかったから」

「そうか。……でも待てよ、それなら美桜も人間に噛みついたり引っ掻いたりすれば僕達(ゾンビ)にさせることが出来るのか?」

「出来る筈よ?試したことは無いけれど、そうじゃないとこの感染爆発(パンデミック)に説明がつかないし。言って無かったかしら?」



 聞いたような聞いてないような。

 出会った時の僕は美桜の過去なんて微塵も興味が無かったし死還人(ゾンビ)が発生した経緯にも興味が無かったから適当に話を受け流していたからな。

 ……今思うとなんでそんなに興味が無かったんだ。

 僕。



「悪いけど覚えてない」

「あら。ま、いいわ。若干脳にもダメージがいっている筈だし。そんなものでしょう。また分からなくなったら聞いてくれていいわ。その都度説明してあげる」

「すまん。助かる。……ならそのついでにもう一つ聞いてもいいか?」

「いいわよ」

「これだけ人類を脅かす存在(ゾンビ)が街を闊歩(かっぽ)していると言うのに、軍隊は……自衛隊は何もせずに沈黙を守っているのか?漫画の観すぎかも知れないが、こういう時は自衛隊が出てきて街の死還人(ゾンビ)を撃ち殺すんじゃないのか?」



 これ、地味に気になってたんだよな。

 僕はまだ未だに銃を装備した人間に出くわしていないし、銃声も聞いたことが無い。

 あのような出来事は漫画の中の話だけで、実際は違うだろうか?



「……殺されたいの?」

「違う!単純な疑問だ!」



 そんな物騒なことを言わないでくれ!



「冗談よ。質問の解答としては、よく分からないというのが私の解答ね」

「よく分からない?」

「えぇ。自衛隊もむやみやたらに『人』を撃ち殺せるわけじゃない。人を襲い殺すだけなら精神がいかれた一般人の『犯罪』として警察が処理するからね。勿論ここまであなた達の存在が知れ渡った今、あなた達を無条件で破壊・殺すことは罪には問われないし、それこそ自衛隊やSWATが出動していてもおかしくは無い」

「なら……」

「あなたも分かるでしょう?世界がこんなになってしまった時にはテレビは愚か、ネットやラジオの情報端末は意味を為さなくなっている。どれだけ情報を知ろうとしてもそれを更新する人間が皆無に等しいから中々情報が流れてこないのよ」



 ……なるほど。

 言われてみれば確かにその通りだな。



「だから、敢えて言うならその手の組織は全国に出動して活動を開始している筈だけど、それがどのくらいの規模でどこまで出動しているのかは分からない、ね。これでいいかしら?」

「あぁ。ありがとう」



 そう、か。

 ならもしかするとこの街にどこかの部隊が展開しているかも知れないし、そもそも来ていないのかも知れないな。



「まぁ私としてはあんな奴らと出くわしたいとは思わないけどね」

「ん?知り合いでも居るのか?」

「えぇ。同期に軍医の道を選んだ友達が居て、その友達の紹介で何人か自衛隊には知り合いが居るのよ。ほら、私美人だし?」



 久々に聞いたなその自意識過剰。

 演技じゃ無かったのか。



「それでよく食事に行ったり遊んだりしたのだけど、もう女が少ないせいかグイグイくるのよ。どれだけ拒んでも次は次はって」

「うわぁ……」

「あのしつこさが無ければ頭脳肉体共に優れた素晴らしい人達なのだけどね。だから私の中の自衛隊のイメージは恋愛欲求の強い人達よ。……そんな人達に偏見をしているだけだって頭では理解していても、会いたくは無いでしょう?」

「まぁ、美桜の立場なら、そう、かな?」



 美桜の恋愛に対する価値観はよく分からないけど、そう言えば男っ気無いよな。

 確か彼氏とかも居ないんだっけ。

 ……まぁ僕には関係の無い話だな。



「それはさておき、と。これからの方針なんだけど――――」



『いやぁぁぁぁぁ!!!?だ、誰か!誰か助けてぇぇ!!!』



「何、今の叫び声?」

「どこから聞こえてきた……?」



 周囲の音が無いせいで女性のものらしい甲高い声が周りの建物に反響して位置を特定するのが難しい。



『ズガガガガガガガガ!!!』



「!今のって……」

「えぇ。間違いなく銃声よ」



 おいおい。

 話していた矢先にこれかよ。

 でも、今の銃声で大体の位置は掴めた。



「どうする?行ってみるか?」

「どこから聞こえてきたのか分かったの?」

「あぁ。大体の位置だがな」

「なら、行ってみましょう。あまりは気は進まないけれど、悲鳴の後に銃声が聞こえたとあってはね」



 一般人を助ける為に銃を持つ誰かが死還人(ゾンビ)を撃ったのならまだしも、銃を持つ誰かが普通の一般人を撃ったのだとしたら、これほど胸糞の悪いことは無い。



「分かった。僕に着いてきてくれ」



 以前は他人がどうなろうと知ったことではなかったような気がするが……

 今はそんなことはどうでもいい。

 とにかく急ごう。

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