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ゾンニート  作者: 竜獅子
第1章 ゾンビになった少年
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それが僕の考えです。

 美桜にそんな過去が、ね。

 初めて出会った時にも確かに神農製薬に復讐する為にとは言っていたけど、ここまで重い過去を持っているようには見えなかった。


 ……いや、隠していたと言う方が正しいのか。

 もしもこの世界が正常なら、『人を殺す』という行為が例え相手が死還人(ゾンビ)であろうともまず許されるものではなかった。

 殺人は人間が最も忌避すべき大罪の一つだ。

 それを何の躊躇いも無く、しかも複数回実行しようとしていたのだとしたら当然そのことをわざわざ誰かに言う必要は無いし、それこそ正気な人間なら協力どころか一緒に居たいとも思わないだろう。


 だから、美桜は今までそのことを隠し続けていた。

 例え僕が感情の殆どを失ってしまった死還人(ゾンビ)だとしても、ある程度の知能を有しているからこの話をすることで僕が離れてしまう可能性があったから。

 それどころか最悪、中途半端に感情や知能が残ってしまっている分変な正義感を出されて襲いかかられてしまう可能性だってある。


 そのリスクを考えれば、僕が美桜の立場でも同じように過去の話は隠し続けていただろう。

 ……でも、そのリスクを鑑みて尚、美桜は忌避すべき自らの過去を僕に話してくれた。

 きっとそこには美桜なりの葛藤はあっただろうし、それ以上にその話を僕にしても大丈夫だという信頼の想いがあったと僕は考える。


 人殺しの共犯になって下さいなんて、まともな人間がまともな人間に頼むことじゃない。

 それこそ、イカれている。


 だからこそ、僕が美桜に言うことは決まっている。



「散々あなたの体を弄くり回して今更こんなことを言うのもあれだけど、私の想いに賛同出来なければ私とここで別れてくれても構わない。勿論、だからと言ってあなたとの約束を反故にする気も無い。ここで他の人の治療している合間に死還人(ゾンビ)の肉体が半永久的に活動出来る為に必要な手術の詳細をまとめた資料を用意しておいたわ。それがあれば、一般的な技術を持った外科医なら誰でもあなたの体をちゃんと手術してもらうことが出来る。だからあなたはもう私の側に居る必要は……いった!ちょっと何するのよ!」



 美桜が何やらグダグダと聞く必要の無いことを話し始めるから面倒になってチョップを食らわしただけだ。

 何か文句があるのかこのやろう。



「何するのよ!じゃない。それは僕の台詞だ。何勝手に適当なことを話しているんだ?いつ、どこで、誰が美桜の考えに賛同出来ないと言った?僕に喋らせる機会を与えず無駄に喋りやがって」

「え……?で、でも私は自らの意思で人を、神崎を殺したのよ!初めから殺そうと思っていた!半死還人(ハーフ)になる以前からそう考えていた!残っている幹部も当然って痛いってばちょっ!?」



 なーんでこんな早とちりをするかなこいつはー



「だーかーらー僕にも喋らせろっての。確かに美桜のその過去は忌避されるべき外道のものだけど、それはあくまでもこの世界が正常である場合に限る。あんな奴の言葉を借りるのは癪だけど、今のこの世界は何をしても許される。法律という概念が現状破綻しているし、生き残っている人も自分が生きることに必死で他のことに余力を割いている暇が無い人が殆どだ。……そんな世界で誰が美桜のことを咎める?居ないだろう。そもそもそんな人は」


「でも私は!」


「安心しろ。美桜。人殺しの共犯になって下さいなんて正常な人間が正常な人間に頼むことじゃないが、生憎僕も美桜も正常な人間では既に無くなっている。だから僕は最後まで美桜と行動を共にするよ」


「いい、の?」


「あぁ勿論。美桜がされたことは第三者の僕でさえ胸糞の悪くものがあるしな。そんな連中なら別に死んだ所でだし、適当にダラダラするのもいつかは飽きが来るしな。美桜と居れば飽きないだろう。それに、どうせならちゃんとした人に手術してもらいたいし。下手すれば実験動物にされかねない他の人間に手術を任せるなんて考えただけでもゾッとする」


「ぷっくくっあはははは!何よ、良いことを言ったと思ったら本音は後半部分だけじゃないの?」


「さぁね。それは美桜の想像に任せるさ」


「ふふ。ありがとね。鈴。嘘でも嬉しいわ」


「それは何より。僕の主治医に機嫌を損ねられたら後が大変だからな。少しはご機嫌取りをしておかないと」


「そうよ?あんまり私を怒らせるとあなたの体、更に魔改造しちゃうわよ?」


「それは勘弁してくれ……」


「冗談よ。でも、言ったからにはちゃんと最後まで付いてくるのよ?患者さん」


「どこまでもお供しますよ。主治医さん」



 これが僕の考えだ。

 実際僕は人を殺すことに抵抗を殆ど感じ無くなっているし、美桜にしたことを考えればそんな連中は本当に死んで当然だと思う。

 自らが尊敬している人を冒涜し、貶める。

 それは許されることじゃない。


 第三者の僕が横から口を出すのも筋違いかもしれないが、僕は美桜に協力する。

 それがどれだけ非道だと罵られるようなことであったとしても。



 はー……本当に僕は一体どうしちゃったんだろうな。

 あれだけ働くのが嫌だったのに今は進んで働こうとしている。

 人間らしくない僕が、人間らしい美桜に影響されたのかな?

 美桜の話を聞いて更に意識するようになったけど……

 まぁ考えてもどうしようもないか。

 やりたいことをやるだけ。

 そこは変わっていないのだし。

 楽しんで行こう!

更新が本当に不定期になってしまって申し訳ありません……

とりあえずこのお話「1章ゾンニート」はおしまいです。


ざっと1章をまとめますと、死んでゾンビとなり、何の目的も持っていなかった鈴が美桜と出会って目的を得た、という感じです。


少し路線が変わってきている気がしないでもありませんが、当初の案とあまり違いは出てきていないので良しとします!(自己完結)


こんな不安定な作品ですが、少しずつ読んで下さる方が増えてきているのは本当に嬉しいことで、私自身のモチベーションにも繋がります!

これからもよろしければ、ゾンニートを読み続けて頂けるとありがたいです!

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