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ゾンニート  作者: 竜獅子
第1章 ゾンビになった少年
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美桜の昔話1です。

『わ、私を幹部にですか!?そんな、いえ、でも!私はまだ新人ですよ!?』



 私は入社してからたった1年で幹部に抜擢された。

 理由は簡単。



『新人かどうかは関係無い。この会社において昇進が可能なのは能力がある者だけだ。君の論文と研究成果を拝見させてもらったよ。これならば、新人と言えども君を幹部に迎えて異を唱える者は居ないだろう』



 私には神農製薬にとって必要な能力が備わっていたから。

 当時は酷く驚いていたのだけど、後から調べてみると私みたいなケースが過去に例が無かったわけでは無いようだった。


 その人達も私と同様に入社してからの短期間に素晴らしい成果を上げた人達ばかりだった。


 ある人は風邪薬の特効薬。

 ある人は初期から末期までの癌の完全な治療法の確立。

 ある人は老化速度を減衰させる特別な薬の開発。


 素人の目から見ても、もの凄い功績だと分かるものばかりなので彼らが幹部に抜擢されたのは当然のことだったのかもしれない。

 だから、私が何故幹部に抜擢されたのかが分からなかった。

 確かに私は話題になるような研究成果を残した。

 けれどもそれは前例にあったような人達のように素晴らしいものではない。


 私のその功績とは、移植手術による拒否反応の完全無効化技術の確立。

 拒否反応って言葉、あなたは知っているかしら?

 簡単に説明すれば、臓器を移植された人が他人の臓器なんか受け入れられるかっ!

 って拒否して不具合が生じること。


 その反応は別に珍しいものでもなんでも無いのだけど、これが起こってしまうと最悪死に至ってしまう。

 死に至らなくても新しい臓器提供者(ドナー)を探さなくてはならないから患者にとっては大事(おおごと)なこと。


 それが発生しないように済む技術を確立したのだから充分凄いじゃないかと思うかも知れないけど、そういう意味で素晴らしい功績ではないと言ったのでは無いの。


 ……少し、私の身内と昔の話をするわね。

 私がこの道に進むきっかけとなった人が私の身内に居たの。

 それが、母方の父親、私のお祖父様。

 お祖父様はかつては多くの功績を残した医学界の権威で、自宅には数多くの論文や古くなって使わなくなった研究資料が山のように保管されていた。


 当時まだ幼く好奇心が旺盛だった私はお祖父様の家に遊びに行く度にその資料を読み漁っていたわ。

 お祖父様もそんな私に好感を持ってくれたのか、分からないことがあればなんでも私に分かりやすいように丁寧に教えてくれた。


 そして気付けば私はお祖父様に勧められるままに高校、大学へと進学し、同期では他の追随を許さない程の医者の卵として優秀な人材に成長していったの。


 それからはもう順中満帆だったわ。

 大学を主席で卒業、お祖父様のツテもあって私の才能を買ってくれた神農製薬の系列の病院の院長の下で数年下働きをした後、お祖父様に私には治療よりも研究の方がお前の才能を咲かせることが出来るだろうって、神農製薬の研究員に転職したの。

 それが私の神農製薬に入社するまでの流れ。


 ……話を戻すわね。

 私が私の残した功績を素晴らしいものでは無いと言ったのは、それが私自信の実力で掴んだ功績では無く、お祖父様が考えた論文を元にそれを実現したからなの。


 お祖父様が高齢になってしまい、ロクに研究が出来なくなってしまった今、後を継ぐような形で研究成果を残すことが出来たことにお祖父様はとても喜んで下さったけど、私からすればそれは言わば盗作。


 私にとってお祖父様との関係が孫であることは当然周知の事実で、それを知らない人は殆ど居ない。

 だから周りの人もお祖父様が成し遂げられなかった研究を私が継いで素晴らしい人だともてはやしていたけれど、私の心中はいつも複雑だった。


 賞賛されるべきは私では無くお祖父様。

 お祖父様の論文があったからこそ私はそれを実現でき、お祖父様がまだ現役でいらっしゃればあの研究で功績を残していたのは間違いなくお祖父様だった。


 それが分かっているからこそ、私はいつもお祖父様に申し訳無い気持ちで一杯だったし、私が幹部に抜擢されてしまってからは不安で不安で仕方が無かった。


 いつ、私のこの功績が私自身のものではなく、他の人のものであるのにお前はそんなにも我が物顔でここに居るんだと言われてしまうことが。


 事実、私が恐れていたことは起こってしまった。

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