働く意思をみせます。
「せいっやぁっ!」
たかだかアルミで出来たような金属の棒だとすぐに壊れて使い物にならないと思っていたが、中々どうしてやるじゃないか。
「凄ぇ。あんな化物相手に一人で互角に戦ってやがる」
松本から棒を受けとると、すぐさま襲いかかってきた化物を近い順に凪ぎ払って退け、一定の距離を確保する。
その動きは普段の美桜からは考えられない程に機敏で、四人相手に遅れをとっていない。
素手だと完全に劣勢だったのに、長い棒一つ得るだけでここまで違うのか。
……僕の知ってる残念美人じゃない。
「な、に!?おい!何をやっている!相手は一人、それも女だぞ!?」
「ご生憎様。これでも私、高校と大学では槍術部のレギュラーだったの。まさかこんな所で役に立つ日が来るとは思ってもいなかったけど、日々の鍛練が実を結んだわね」
槍術部て。
槍術部て。
基本は部活だろう?
実戦でここまでの成果を発揮するって。
一体どんな部活だったんだよ。
「この雌豚めがぁぁ!調子に乗るなよ!」
「あら?化けの皮が剥がれ始めてるわよ。さっきから少し前兆はあったけど、露骨になってきたわね。自慢の手駒が押されて余裕が無くなってきたのかしら?」
「黙れ黙れ黙れ黙れ!こうなれば……更に二体追加だ!」
「しつこいわね。あんまりしつこい男は嫌いよ?」
「貴様のような化物の好みなど聞いてないわ!金崎!御堂!行け!……どうした!?行けと行っているだろう!?」
神崎が新たに戦力を増やそうとまた二人の名前を呼ぶが、先の四人と違いその言葉に応える様子は無い。
反乱でも起こったか?
神崎が狼狽えている間に美桜は峰岸と呼ばれた化物を一人、膝を打ち砕いて行動不能にしてしまった。
「峰岸!クソ!あまりやりたくは無かったのだが……!これでどうだ!行け!金崎!御堂!」
神崎が手にとったリモコンのような物を操作すると、微動だにしなかった金崎と御堂という化物が反応し、ゆっくりと立ち上がる。
「これ以上増えてもらうと、面倒なのだけどね……!」
あのリモコンがどんな役割を持っているのかはちゃんとは分からない。
だが、1つだけ分かったことがある。
「マツモト、ヒトツ、オネガイガアル」
「どうした?」
「カンザキガモッテイルアノリモコンヲ、トッテキテホシイ」
「本気で言っているのか!?最初は俺でもあいつらの相手を出来ると思ったがよ、ありゃ規格外だ!無理せずあの姉ちゃんに任せ―――」
「ムリ。アイツ、ソロソロチカラツキル」
「は?」
「ふぅっふぅっふぅっふぅっ!……よし!まだよ!」
息切れなんて一切起こしていなかった美桜が、今では少し息を切らしては整え、息を切らしては整えを繰り返している。
美桜の言う、自食作用の効果が切れてきているのだろう。
「おいおい。マジかよあの姉ちゃんかなり疲れてきてんじゃねぇか!」
「ダカラハヤク、ボクモハタラキタクハナイケド、アイツガイナイトボクハスゴイコマル」
まだ体をちゃんと改造してもらってないからな。
それに、美桜の護衛という役目もまだちゃんと果たしていない。
こういうときに働いとかないと、後で文句を言われたら言い返せないしな。
本当に不本意だけど、働いてやろう。
「オマエジャアイツラニハカテナイ。ボクガカセイスル」
「だが!あれを奪ったからと言って何が変わる!怪我人のお前が戦えるわけがないだろう!」
「イウコトヲキケ」
影響が弱まった今なら、立って目の前にいる人間の頭を掴んで持ち上げることなど容易い。
「どこに、こんな力がっ……!?」
「イケ」
「分かった!分かったから!離してくれ!」
僕は叫ぶ松本を離してやる。
そこそこ力を入れていたからな。
そりゃ痛かっただろう。
「クソ!だが俺はこれっきり何も言うことを聞かないからな!まだ俺は死ぬわけにはいかないんだ!あいつらの為にも!」
「ゴタクハイイ。イケ」
神崎がリモコンを操作した時に化物が言うことを聞いたのと同時に、僕の頭のフラツキも少し……いや、かなりマシになった。
僕のこのフラツキの原因はあれにある筈だ。
……うん。
ちょっと危機感を持ってきた。
美桜が居ないとマジで僕は困る。
ここで死なすわけにはいかない。




