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ゾンニート  作者: 竜獅子
第1章 ゾンビになった少年
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手術と言う名の人体改造です。

「はいお仕舞いっと。……どうかしら?」



 や……やっと終わった……!

 3割の手術をするのにこんなに大変な思いを味わうことになるとは……!



「まだ動けない?一応縫合はしたし、治癒能力が無くても問題無いように筋肉や骨の接合・補強はしたからすぐに動ける筈なのだけど?」



 いや、多分動けるけどさ、動けるけどさ?

 あれが終わった直後に動きたいとは思えないんだ。

 体中に弄くり回された時の感触が残っててまだ気持ち悪さが残ってるんだよ?


 ほら、背中とか特に。

 うーわー!

 なんかもーモゾモゾするしー!


 それに喉!

 なんで喉を弄ったのかは分からないけど喉に手を突っ込まれてグリグリされたのは気持ち悪さで本当に死ぬかと思った!

 死んでるけど!


 はぁ……悶えてもしょうがないか。

 とりあえず、台から降りよう。



「……ん、よし。動く分には何も問題無いわね。それじゃ今回の手術で修復した点を説明するわ」



 修復した点?

 疲れが溜まっても活動出来る体にするだけじゃ無いのか?



「まず、あなたの死亡時に破壊されてしまった声帯を出来る限り直しておいたわ。多分喋れる筈よ?生前と同じように喋ってみて」



 え?

 喋れるのか?



「アーアー……ホンジツ……ハ、セイテン……ナリ」



 !!!

 声が出た!

 マジか!



「今はまだカタコトでしか喋れないかも知れないけど、練習すればかなりマシになる筈よ」

「コレハ……タスカル」



 と言うことはこれからは美桜以外の人間にもちゃんと自分の意思が伝えれるようになるのか。

 ……いや、これ結構凄いぞ。



「ミオ……ボク、オマエノコト、アナドッテタ」

「ふふ。誉めなさい讃えなさい。私だってこの若さで神農製薬の幹部にまで登り詰めた天才なんだから!」

「ジイシキカジョウ……トイイタイケド……ジジツダカラ……ナニモ……イエナイ」



 幹部の座、伊達じゃないな。



「後は三半規管の代用ね。三半規管は「前半規管」「後半規管」「外半規管」この3つの半規管から出来ていて、それぞれがおよそ90度の角度で傾いて、X軸・Y軸・Z軸のように三次元的なあらゆる回転運動を……って、理解出来るわけが無いわよね」

「サッパリダ」


「ザックリ言うと三半規管には液体があって、それが体が動く際に液体も一緒に動いてその動きを脳が感知して平衡感覚を掴むの。……少しは分かるかしら?」

「……ナントナク」


「それで、その液体なんだけど、どうも死還人(ゾンビ)になった時点で失われてしまっているのよ。理由はまだ分からないわ」

「ソレガナイカラ……ボクタチハバランスガトリニクイ?」


「そう。だからその代わりにあなたの背中には三半規管の構造によく似た道具を作成して埋め込んだわ。どんな物なのかは聞かないで。どうせ理解出来ないでしょうから」

「……ソノトオリダナ。リョウカイ」


「まぁそれが三半規管の役割を果たして体から直接脳に振動……信号が行くようにしたから以前よりは階段とかの登り降りが楽になってる筈よ」



 え、何こいつ。

 スペック高過ぎじゃない?



「勿論あくまでも代用品だから完全にとはいかないし、生きている人間でそれをやったら各臓器が圧迫されて歩くどころの話じゃない失敗作だからまたいずれちゃんと直してあげるわ。元々三半規管は身体じゃなくて頭にあるものだしね」



 いや、充分っす。

 確かにちょっと違和感はあるけどそこまで酷いものでは無いし。


 んーでも僕達(ゾンビ)ならではの手術かー

 なんか好き放題改造できるっていいな。

 ちょっとロマンを感じるぞ。

 やっぱゾンビ最高。



「ま、今回はこんな所ね。また不具合があったら教えてちょうだい」

「ワカッタ」


「それじゃ外に出ましょうか。……あ、一応手術をした人間の体だから車椅子に乗って。流石に手術直後の人間が平然と歩いていたら怪しまれるでしょうし」

「ダナ」



 僕は手術室から出ると、すぐ近くにあった車椅子に乗って男が来るまで待機することにした。

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