やぶをつつくと蛇が出そうです。
「……ごめんなさい。気がつかなくて。(まさか死還人が垂直移動が出来ないとは思いもしなかったのよ)」
「ウ (気にするな。降りるのはまだ、余裕がある」
「あぁ……兄ちゃんにはちょっと負担をかけちまったな。大丈夫か?凄い勢いで落ちていったが……怪我に響いてないか?」
結論から言うと、僕は下に降りることが出来た。
ただし、ほぼ落ちるといった形で。
下に降りる為の梯子が使えないことは分かっていたので、僕は梯子のサイドを掴むとそのまま重力に任せて落下した。
ある程度力を込めて摩擦を出して速度を落としながら。
それでも強すぎると梯子を破壊するか手が壊れてしまうので少し弱めに、かといって弱すぎると落下時に激突の衝撃が強すぎて肉体が壊れてしまう。
結局その中間辺りの速度で落ちてなんとも言えない感じになったのだけど……
動けることには動けるのでよしとしよう。
あーもー帰りたいー
「……大丈夫みたいね。でも、それでも危険な状態には違いないわ。鈴、傷に障るからあまり喋っちゃ駄目よ?言いたいことがあるのなら私が代わり言うから。それじゃ急ぎましょう」
「ん、あ、そうだな。急ごう。兄ちゃんも無理せずにゆっくりと着いて来てくれ」
「…………」
美桜のフォローのお陰で僕は喋らなくても不自然ではない立場を得ることが出来た。
これは大きい。
喋るだけでも僕がゾンビだと言うことがバレかねないからな。
いずれは怪しまれてしまうからどうしようかと考えていたが、これなら終始僕が喋る機会は訪れないだろう。
……それにしても、地下にある通路というから映画とかに出てくる下水道を想像していたのだが、これは下水道と言うよりは迷宮と言った方がまだ正しいような気がするな。
天井に灯りがついていて、数十m進むごとに出てくる分かれ道。
所々にある謎の部屋。
下水道のわりには全く水は流れておらず、代わりに妙な配管がうねるように通路を網羅している。
秘密基地かよ。
「相変わらずごちゃごちゃして分かりにくい場所ね。むしろ以前より酷くなったのじゃないかしら?」
「そうなのか?……まぁ進みにくいことには違いないな」
「こんな所、こんな事態じゃ無かったら入りたいとも思わないわ。何の準備も無しに入ったら絶対に迷うもの」
「神農製薬の社員がそう言うのか……。聞くがこの通路、もしかして病院の敷地より広いのか?」
「えぇ。そうよ。確か隣街まで広がってるとか聞いたけど、詳しい広さまでは把握してないわ。興味なかったから必要な図面しか見なかったし。でも、この病院の敷地より広いのは間違いないわ」
おいおいマジか。
神農君って何物なんだ?
街にこんな迷宮じみた通路があるだけでも驚きなのに、それがもっと巨大なものなのか?
……なんか余計なことに首突っ込んでしまった感が凄いなー
これでもし、悪の組織と戦うゾンビとそれを使役する女社員!
みたいな展開になったら速攻で逃げてやる。
あー……




