そろそろ煩いですよ?
「……本当にあれで良かったのかしら。一時の恐怖で彼を追い出してしまって良かったのかしら……?」
はぁ……
拓也と別れてから一時間程歩いているが、美桜はずっとこんなことをぼやき続けている。
「彼は死還人とてちゃんと意思疏通のとれる稀有な個体。その行動や言動は基本、人間と変わらなかった」
正直ウザい。
いつまでもグチグチと。
「何よりも彼は短い間だったけど、この世界を共にした仲間だった!それを私は……痛っ!?」
ほんのちょっとだけ消えた怒りの感情に触れるぐらいには煩いぞ。
「え、ちょ、痛い痛いっ!ちょ!お尻を蹴らないでよ!痛っ!?」
「ガーウ? (ったく、いつまでそんなに悩んでるつもりだ?)」
「え?」
「ガウ (別にお前が拓也を追い出したとか、そんなことは関係ないだろう?確かにお前は遠巻きに拓也に出ていけとは言ったが、それがなんだって言うんだよ」
「だって私は……」
「ゴガウ? (むしろ良いタイミングだったんじゃ無いのか?あいつも自分の罪を償いたいとは言っていたし、それは間違いなく僕達に着いてきていたら叶えられない想いだ)」
「そうだけど……」
「ゴーウ (まだ納得出来ないか。それならもう1つ言ってやる。お前は別に拓也に関して気にすることは既に何も無い」
「どうして?」
本当……頭良いのに馬鹿だよなこいつ。
「ゴガーア (お前、ちゃんと拓也に渡していたじゃないか。足が壊れて活動出来なくなった時の為のメモを)」
「あれは……」
「ガウガ (少なくとも、僕達にとって体が壊れてしまったのにそれを直す手段があるというのはかなり大きい。だってそうだろう?僕達を直せる奴なんてまず居ないし、何よりも僕達だってずっとこの世界に居たい」
「…………」
「ウガー (この世界は何も考えずに好きなことが出来るからな。そんな世界であいつは自分のやりたい好きなことが更に出来たんだ。わざわざ気にする方がおかしい。何、動いていればいつかまた会える。どうせこの街から出る気は無いんだろうしな)」
「……そうね。そうね。あなたの言う通りだわ。ごめんなさい。少し、難しく考え過ぎていたわ」
これだから研究者は。
まぁ、立ち直ったみたいだし良しとしよう。
「アウ (それも気にするな。よし、それじゃ行くぞ)」
「ええ」




