僕にはもうどうしようもないです。
「ガーゴ (よし。着いたぞ)」
「アー…… (ここにあいつらは……)」
あれからも朝になってから活動を始めた人間もそれなりに居たようだけど、僕と拓也が集中して周りの音を聴いて危なそうな所を避けて進んでいったお陰があれ以来人間に遭遇することは無かった。
因みに、今は美桜が拓也の車椅子を押している。
僕はのんびりフラフラと。
「ま、分かってはいたけどここもそれなりに荒れているわね。市街地から離れているから少しはマシなのかと思ったのだけれど」
何を期待しているのやら。
そんな場所があるわけ無いじゃないか。
「それで?今私達の目の前にあるのがあなたが最後にこの子の仲間を見たという本屋なのよね?」
「ガー (あぁ)」
「確かそれが昨日の昼過ぎだったわね。なら、まだ近くに居る可能性はあるわ。どうかしら?あなたのその人喰い衝動は何も反応しないかしら?」
「ガーウ…… (いや、僕のその衝動はまず人間を視認しないと出ないのですが……」
「あら?そうなの?てっきり近くに人間が居たら自動的に反応するレーダーのようなものかと思っていたわ」
お前は僕達を何だと思ってるんだ?
そんな便利な能力があったら今頃人類は死還人に探知されまくって喰い尽くされてる筈だ。
「まぁ別にいいわ。とりあえず、今日一日はこの辺をうろうろしてみる?もしかしたらひょこっと出てくるかも知れないし」
「アーウー (そうですね。お願いします)」
「ガ (よし。それじゃ美桜は引き続き拓也に付いて歩き回っていてくれ)」
「え、嫌よ。今度はあなたが押しなさいよ」
「ウガ (馬鹿。半死還人よりも死還人の方が聴覚は良いんだ。僕達が固まるよりもバラバラに二手に別れて探した方が確率が上がるだろうが」
「ん、言われてみればそうね。なら私はこっちに行くわ。あなたは反対側をお願い」
「ウー (はいよ)」
日も完全に登りきり、時刻は大体10時過ぎ頃といったところか。
静寂に包まれていたこの街も、ちらほらと人間達が活動する音で溢れ始めている。
今ならまだどこでどんな音がしたか聴き取りやすいから、出来るだけ広い範囲を歩き回ってみよう。
「……ウーガー (……居ないな」
あれから歩き回ること約30分。
拓也の仲間どころか人っ子一人すら見つからない。
……というか僕達でさえも殆ど居ない。
たまーに見かけはするのだけど、市街地程は僕達が居ない。
どこかに移動したのかな?
……まぁ別に僕達には用は無いし、それは別にどうでもいいん―――?
『……!……!……!!』
『………………!…………!』
人の声だ。
何を言っているのかは分からないけど、そんなに遠く無い。
僕が声のする方向に行くと…………
「だから駄目だって!俺は拓也の親友だし、あいつを裏切るようなことは!」
「もういいのよ?残念だけど、拓也は死んでしまった。……だから、」
「だから何だよ!?お前、あれ程悲しがってたじゃないか!」
「えぇ悲しかったわ。でもね?気づいたの。愛する者を私は失ってしまったけど、それならまた別の人を探せばいい。……こんな世界なんだから、倫理なんてあって無いようなものだし、何をしたって自由なのよ?……あなたもそう思わない?」
「それは……!」
「なら、自由にすればいいのよ。人間としての本能に従って。獣のように。ねぇ……私のこと、嫌い?」
「嫌い……じゃない」
「なら、好き?」
「……あぁ」
「嬉しい……!」
殆ど荒らされていない家の庭で、僕が本屋で見たうちの男女が二人、そこに居た。
あぁ……もう……面倒な場面に出くわしてしまった。
拓也に言うべきか言わないべきか……
周りに誰も居ないと勘違いしているのか、二人はそれはもう大きな声で啼きながら人間としての本能に従っている。
……よくやるよ。本当に。
考え方は間違っていないし、事実そういう世界になってしまったのだからしょうがないんだけどさ。
あーもー!
どうしたら……!
「うわぁ……朝っぱらから……うわぁ……」
「ウー…… (綾音……)」
「ガ…… (あ……)」
はいもう僕知りません。
戦略的撤退です。
ゾンニートを読んで下さりありがとうございます!
私の方から少しお知らせを。
最後の会話はなるべく表現を抑えるようにはしましたが、それでも不快になられる方がおられるようでしたら即時改稿致しますのでご報告下さい。




