エンカウントです。
「ゴア (お、もう朝か)」
「アーウ (悪くない景色ですね。街はこんなですが)」
「綺麗なものね。ここ暫く朝日なんて見る暇が無かったから、一層綺麗に感じるわ」
こうして朝になるまで歩き続けてきたが、やはり中々思うようには距離を縮めることは出来ない。
はぁ……
乗り捨てられた車やら崩れた外壁とかが散らばって無ければ美桜に車を運転してもらって楽できるのに。
こう物が多いとむしろペースを落とすことになってしまうからなー
全く。
逃げるなら逃げるでもっと綺麗に逃げろよー!
「ゴーガ (そう言えば美桜さん、結局ショッピングセンターを出発してから一度も休憩を入れて無いみたいですが大丈夫なのですか?)」
言われてみればそうだな。
疲れ自体は感じてるみたいだから、かなり体に堪えてる筈なのだが。
「私もこうして試してみて初めて知ったのだけど、どうやら歩いたりする程度では疲れは感じないみたい。それでも体には疲労が蓄積されているだろうし、前みたいにあなたを担いで運んだりするみたいな一定の運動量を越えると人並みに疲れは感じるわ」
そういうものなのか。
便利なんだか不便なんだか。
「ゴガ……ガ? (なるほど。でもそれならどこかで一度休憩を……ん?)」
「ア? (どうした?)」
「ガウ (あれ。見てください)」
「ウーガ (人間だな。かなりまとまった数が居るな。20人くらいか。人喰い衝動は大丈夫か?)」
「アーウ (これだけ離れていたらまだ大丈夫みたいです。もう4~500mくらい近づいたら多分襲いかかりに行ってしまうと思います」
僕達と人間達の距離が大体1㎞。
朝日がまだ昇り始めのお陰であいつらは僕達の存在に気づいていない。
本気で襲いかかればどうにか出来ない数では無いが、無事では済まないだろう。
んー……よし。
面倒だし迂回しよう。
ここからなら拓也の仲間が来た本屋も近いし、そっち方面に行こう。
「ガー (美桜、1㎞程先にまとまった数の人間が居るから迂回するぞ)」
「了解。どっちへ向かうの?」
「ウーア (僕に着いてきてくれ。折角だからこのまま拓也の仲間を見かけた場所に向かう。美桜と拓也は他に人間が居ないか周りに気を配っていてくれ」
「ガー (任せてください)」
「なるべく頑張るわ」
確かここからならそこの路地を曲がって坂を上がって行ったら……
「ぬぉぉぉぉぉ!!?ゾンビ!?く、クソがぁ!こんな所で……死んでたまるかよぉぉぉぉぉ!!!」
「まさかこんな所で出くわすなんて……!いい!?打ち合わせ通りにいくわよ!」
嘘ん。
まさかの別の集団との遭遇!?
しかも連中あらかじめ僕達と遭遇した時の対策を考えてるみたいで、360°囲まれてしまった。
ここは……美桜になんとか誤魔化してもらって僕達に敵意が無いことを伝えて…………
「ガァァァァァァァ!!!」
拓也ぁぁぁぁぁ!!!
ちょ、おま!
「アァァァァァァ! (待て待て待て待て!落ち着け!てか止まれ!お前が暴れたら余計面倒なことに!美桜!なんとか誤魔化してくれ!僕がこいつを止めるから!)」
「う、うん!」
止ーまーれー!!!
頼むからー!!!




