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ゾンニート  作者: 竜獅子
第1章 ゾンビになった少年
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見つけました。

「それで?その生徒手帳の持ち主ってどうやって探すのよ?顔見知りの友達ってわけじゃないんでしょう?」

「ガー (友達じゃ無いし顔もハッキリとは分からない)」



 そこそこ距離はあったからな。

 流石に顔の判別までは出来なかった。



「なら、そんなの不可能よ。名前だけ分かっても、正常な世界なら一発でしょうけど今の世界じゃ生死が分からなければ死還人(ゾンビ)になってるのかも分からない。時間の無駄よ」

「ゴーア (いや、こいつは僕達(ゾンビ)になっていて、さっき見たからすぐに見つかる筈だ。周りに僕達(ゾンビ)が付き添っていて車椅子に乗っている奴がそうだ)」



 彼等(ゾンビ)の助けがどこまで続いているのかは知らないけど、まぁ別に居なかった所で拓也とやらが車椅子無しで動けないのは間違いない。

 だからそれを目印に探していけば――――



「あ、あれじゃない?」

「ガ (あ)」



 うん。

 居た。

 大して探すまでも無く居た。


 ……てゆーか君何やってるの?

 そこ女性服を扱ってる店だよね?


 えー……もしかしてそういう趣味?

 えー……


 なんか尋常じゃなく話しかけるのが嫌になってきた。

 苦労してここまで来たけど、それさえも別にどーでもいっかなーって思うくらいには嫌になってきた。


 嫌悪感というものがまだ僕に残っていたのが驚きだ。



「どうしたの?あれでしょ?あなたが探していたの。話しかけないの?」

「ガー…… (あー……うん。どうしよう)」



 なんかさーこいつさー遠目で見ても分かるくらいに嬉しそうに服を選んでるんだよねー

 僕さ、どうしたらいいのよ。


 はぁぁぁぁぁぁ…………

 すっごい気は進まないけど話しかけることにしよう。

 後々モヤモヤ感を抱えて行動するのは嫌だし。


 これでもし、記憶能力に問題がある僕達(ゾンビ)なら問答無用に頭を吹き飛ばすとしよう。


 それぐらいしないと僕頑張れない。

 ……よし。

 行くか。



「ガーウ (よう。何してるんだ?)」

「ゴア? (ん?なんだあんた?)」


「ゴガウ (別に。通りすがりの君達(ゾンビ)だ。見た感じ元男なのに女性服を選んでるから少し気になってな)」

「ウガー (あぁこれ?誤解を招く前に言っておくけど、これは僕が着るために選んでるんじゃないよ)」


「アウガー? (そうなのか?なら何の為に?)」

「ゴーア (彼女の為に。生きてるのか死んでるのかは分からないけど、一昨日が彼女の誕生日でね。こんな世界で誕生日を祝うなんておかしな話に聞こえるかも知れないけど、いつ死んでもおかしくないこんな世界だからこそ、ちゃんと祝ってやりたくてね」


「アァァァ (彼女が居たのか?)」

「アーガー (まぁね。もっともプレゼントの用意をしようと一緒に逃げてた友達とここまで来たのは良かったんだけど、僕達(ゾンビ)の人を襲う力を侮っていたみたいで僕は噛み殺されて、こうして君達(ゾンビ)の仲間になっちゃったから元彼女になるのかな」



 あ、なんか切ない。

 悲しくないけど切ない。


 誤解しててごめん拓也。

 君凄い良い子。


 んーだとしたらあの叫んでいた女が拓也の彼女?

 でもあんな下らない物の為にって言ってたのもあの女なんだよな。

 ……もしかして裏では嫌われてた?



「ゴウー (全く……彼女には悪いことをしたよ。流石にちょっと誕生日プレゼントを取りに行く為に僕達(ゾンビ)が多くて危険なショッピングセンターに行くわけにはいかないからさ、適当な嘘で説得して……あの時僕はなんて言ったんだったかな?……あぁそうだ。僕達(ゾンビ)は音に敏感だから花火とかの音の鳴る物を取りに行こうって言ったんだ。あれがあれば注意を反らすことが出来るかもしれないってね」



 ……駄目だ。僕泣きそう。

 泣けるだけの感情が無いけど、それが復活するぐらいにこいつ良い子。

 なんて彼女想いなんだ……!



「ガーウアー (他の友達にも悪いことしたな。僕のせいで責められて無ければいいんだけど)」



 しかも人間……死還人(ゾンビ)出来てやがると来た。

 こいつ、下手したら僕より稀有な死還人(ゾンビ)なんじゃないか?

 意思疏通は当然、感情面もあまり損なわれて無いし、過去の記憶もある。

 こいつは何を失ったんだ?



「ガー (一つ聞かせてくれ。お前が僕達(ゾンビ)になってから、何を失ったんだ?)」

「ゴアー (あ、僕が失ったのは抑制力と学習能力。一度決めたことや欲望……人間を食べたいという気持ちを絶対に抑えることが出来ず、恥ずかしながらさっき僕はそこのエスカレーターから転げ落ちたのだけど、段差が危険だから次は気を付けないといけないという考えが出来ないんだ)」



 友達に会いたくても会ったら食べてしまうし、ここから出ようにも段差が下れなくて出られない、か。

 よし。

 ここはちょっと柄じゃ無いけど軽く手伝ってやろう。



「ガウア? (なぁ、あんたはここから出て、仲間の元に行きたいか?)」

「……ウーガ (そりゃ勿論。でも、それは出来ない。僕はもう普通に歩くことが出来ないから下の階に行くことは出来ないし、何よりも会えば友達を食べてしまう」



 実はどっちともどうにかなっちゃうんだよなーこれがまた。



「ガーウガー (大丈夫大丈夫。下の階には僕達が手伝って連れてってやるし、仲間も大丈夫)」

「アァウ? (どうするつもりだ?)」

「ガウー! (この女が代わりにお前の言葉を翻訳してくれる!)」

「え?何?」



 言葉が通じなくても、言葉を通じさせてくれるこいつが居れば大丈夫。

 正直ゾンニートらしからぬ行動だけど、こんな話を聞かされたら放っておくことも出来ないしな。



「ウーガ (てなわけでよろしく頼むぞ)」

「だから何がよ!?」



 話聞いとけよなー

 全く。


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