最後のだけは興味があります。
「よし。それじゃ今度は君の番ね」
「ガ? (へ?何が?)」
「今度は私の質問に答えてもらうわ。私が喋ったんだから、あなたも当然喋ってくれるわよね?」
「ガー…… (えー……)」
少し……いや、かなり気が進まないかなー?
別にこいつの話僕にとって有益なものでも何でも無かったし?
どちらかと言うと時間を無駄に取られただけだし?
そんな義理は無いかなー?
「はい。えーとか言わない。大丈夫よ。別にそんな高度な質問はしないから。あなた達の知能が生前に比べて弱ってロクに使い物にならないことは既に証明済みなんだから。簡単な受け答えをしてくれるだけでいいわ」
……あーあれだわ。
うん。
今ちょっと「怒」の感情が復活しそう。
ここまで明確に馬鹿にされると流石に怒りたい。
怒れないのが我ながら残念過ぎる。
なんで平常心なんだろーなー全くよー
「ウガ? (それで?あんたの質問は何?)」
「あなた達さ、今の生活に満足してる?」
「ア? (は?)」
何言ってんだこいつ?
「してるわけないよね?うん。あ、いいの。何も言わないで。私はちゃんと分かってるから大丈夫」
「ウーガー (待て待て。僕はまだ何も言ってな)」
「満足してるわけ無いよね当たり前よね?あなたは本来なら今日も平和な日常の最中で日々を過ごしていた筈。家族、友人、恋人。会社や学校。あなたを取り巻く環境はきっと皆素晴らしかったに違いない」
あ、すいませんちょっと喋らせてもらえますか?
「ウー (僕はそんなこと)」
「でも!それは神農製薬という会社の研究によって、そこで働いていた一人の研究員によって壊されてしまった!これが一体どれ程までの絶望なのか……その発端を見た目撃者の一人として、原因を作ってしまった社員として、それは私にも痛いほど分かる……」
あの、盛上ってる所悪いんですけどちょっと黙ってもらえます?
「事実私も家族と友人を喪ったわ。死還人に殺されるような悪いことをした人達では無かったのだけれどね。きっと……彼の暴走を止められ無かった罪が私に返ってきたのでしょう」
…………ふーん。
「半君達……半死還人の私にも感情はある。失なった感情も少しはあるのだけど、怒りと哀しみは……憎悪だけは消えることなく私の中で渦を巻いている。世界の理を弄ぶ研究をした神農製薬に対して。その研究を推奨した幹部に対して」
「……ガー? (……それお前もじゃない?)」
「えぇそうよ。だから私は復讐を遂げたら死ぬつもりよ。こんな世界で生きていてもしょうがないし。……今は復讐だけが私の生き甲斐よ」
そうなんだ偉いねー
頑張ってね応援してるよー
「だから、あなたも私と一緒に来ない?君達でも、同じ志を持つ者なら歓迎よ。それに、割りとあなた知能はそこまで損なわれていない死還人のようだし、普通の人間が仲間になってくれるよりは心強いわ」
そうなんだー
頑張って……
ん?
なんか変なとばっちり食らってる。
「ガーウアー (いや、いいです。興味無いんで。別に僕復讐とかかんがえてませんし、この生活に満足してるので。わざわざ活動不能になるリスクを負ってまでやる理由が僕には無いので一人で勝手にひーこらやってて下さい)」
「そうよね!ありがとう!誰だってあんな会社に復讐したいと思わないわけが……思わないの?」
「アー (そう言ってるじゃないですか)」
「で、でもでも!こんな世界を気に入るわけが!」
「ゴアー (何も考えないでいいこの世界最高ー)」
「家族や友人は!?日常生活は!?」
「アウーア (死んでるから関係無い」
「でも!娯楽要素も」
「ガ (しつけぇ)」
「そんな……!」
「ガウ (お前さぁ、半僕達なら少しは分かるだろ?生前の頃に比べて僕達は価値観が変わってる奴のが多いんだ。そりゃ復讐心に燃えている奴もそれなりにいるけど、基本僕達はのんびりしてるんだ。人間を見つけたら狂って襲いかかりはするけども)」
なんか勘違いしてるんだよねこの女。
言いたいことが分からないでも無いけどさ。
「でも、どうしてもあなたに着いてきて欲しいの!他の死還人はロクに話し合ってくれないし、下手したら襲いかかってくるし、実を言うとちゃんと話せたのはあなただけなの」
「ウーア (そりゃ運が悪かっただけだな。ちゃんと話せる僕達は他にも沢山いる)」
「どうしても……駄目?」
「ウガ (駄目)」
「どんな報酬を払うって言っても?」
「ガガ (僕達に報酬もクソもあるか。欲しいものは適当に奪って手に入れる)」
「……いずれは疲労で動かなくなるあなたの体を、本社に戻って半永久的に活動出来るように強化すると言っても?」
「ガー (話を聞こうか)」
そーいうのを先に言ってくれないとさー
困っちゃうよねー
うん。
内容次第では協力してやらんことも無い。
……何か忘れてるような気がするけど、まぁいいか。
多分、大したことじゃないから。
よし。
さぁ話せ。




