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Eternal Return ~永劫回帰~  作者: 天野 花梨
Daily Activities -in Junior High school life-
8/100

パンダ事件


1.パンダ事件


 期末試験も終わり残すところ夏休みを待つだけの、ゆったりとした学生には一番幸せな時間にどっぷりと不幸な少年2名が何故か廉の部屋で泣きながら課題している。


「停学って普通は、家に居ろって事だよな?なんで、自分の部屋に居ないんだよ!」

 廉が悪態を吐きながら自分の部屋に入って来る。

「停学って、学校に来るなって事でしょ?課題さえこなせば外出禁止とか書いて無かったし、百歩譲っても寮の中だから外出にはならないよ!っていうか廉、課題手伝ってよ。多すぎだよ~。3日では足りないってこの量は………」

 ため息をしながら課題を眺める玲音。

潤は既に悠貴を見るに見かねたのか手伝っている。

 廉は(確かに、夏休みの課題分くらいの量があるな)と思っていると。

「ほら廉、遠慮せずにここに座ってさぁ~。お好きなのどうぞ」

 痛々しい傷と青アザだらけの笑顔で課題を差し出す玲音。

「なんで自分の部屋で、遠慮なんかしないといけないんだよ!」と廉は、ぶつぶつ反論しながら原因が自分にあるため仕方なく手伝う。


「試験終わったのに……。また勉強会?」

 スーツ姿の千景が現れた。

 潤がつかさず「千景先輩、この問題解き方教えて」と千景までも巻き込もうとしているが、千景は溜め息をつきながら周りを見渡し「忘れている様だが、そろそろ時間だぜ。玲音の親父さん時間には厳しいよな?」と言うと、他の全員が思い出した様に声を揃えて「ああっ!」と叫ぶ。

「親父自身は、時間守らないのに、自分以外の人には時間にうるさいんだよな。支度しなきゃ」と玲音は愚痴る。




 櫻グループ傘下のホテルのロビーで玲音達5人はスーツ姿で時宗達が来るのを待っていた。


「その顔にスーツは目立ち過ぎだな」と千景が苦笑する。

「言ってやるな。直視すると吹き出しそうだから俺は敢えて見ない事にした」と廉が笑いながら言う。


 スーツを着用すると千景も廉も身長があるのと、落ちた感じでよく似合っており年より上に見える。

 潤の背丈は廉や、玲音や、千景の3人と並ぶと低く見えるが、この年代の平均身長以上はあるのと、着こなしが上手く映えて見える。

 玲音と悠貴も怪我さえなければ、スーツを上手く着こなしできているはずだが、今はスーツが反対に傷を目立たせて残念な状態でいる。


挿絵(By みてみん)


「仕方ないだろ。フォーマル着用のレストランなんだから、そうでなければこんな恥ずかしい格好するか!」と玲音は怒る。


 そんなことを話している所に時宗達が現れた。

 時宗は、自分の息子を見るなり大笑いした。

「玲音。聞いてはいたが、なんだその顔は!パンダ顔負けだな?せっかくだから記念撮影でもしておくか?」と自分の子供を茶化す。


『正直すぎるよ。おじさん』と玲音以外の子供達の思いがシンクロした。


「時宗、いくら親でもそんな風に言っては、いかんだろう。小さい頃のお前もいつもアザだらけだったじゃないか?」と笑いを堪えながら2人の大人が言った。

「俺帰る」と完全に玲音はへそをまげた。

「おいおい、夏休みひとりで留守番するのか?玲音」と廉がなんとかなだめる。


 笑いを堪えながら時宗は、「まぁ、ここではなんだ。取り敢えずレストランに移ろう」と誘導する。


「貸し切りならスーツ着る必要性無いじゃないか!」と玲音は、まだふてくされている。

「俺が悪かったよ。そんなに怒るな玲音。楽しく過ごそう」と時宗は玲音のご機嫌を直す様に諭す。


「では、みんな揃った事だし、そろそろ始めよう。

 今回の君たちの探索に同行させて貰うメンバーの紹介をしていこう。

 まずはこの私、櫻時宗だ。君たちのスポンサーとしてしか協力することが出来ないがよろしく。

 そして私の右隣に居るのが君たちが探している遺跡の研究を長年やっている考古学者の伊集院誠だ。もし君たちが遺跡を発見することが出来た場合は学術的な証明、研究、遺跡の検証など君たちが学園に戻った後も責任もって引き継いでくれる」

「伊集院誠です。小さな疑問から学術的な事は何でも相談して下さい。高等科から考古学の授業も受け持っているから、暇な時は何時でも私の考古学教室に遊びにおいで考古学の面白さ教えてあげるよ」

「左隣に居るのが加藤雅治。櫻グループの海洋開発部門の統轄本部長だ。今回ヘリでの島の行き来、海上での必要機材提供操作をしてくれる」

「加藤雅治です。海は男のロマンが詰まった場所だ。海上、海中、海底ご希望とあらばどこにでも連れて行ってあげるよ。

 海の素晴らしさや、面白さをめい一杯体感して将来は是非、海洋開発部門に来てくれよ」

「おいおい。ここで勧誘するなよ………。この2人はエキスパートだ困ったら何でも相談するといい。

 この2人には何人か部下が同行してくるがその連中には当日会わせる。

 後、本日仕事の都合でここには来てないが、リゾート開発部門であの島で整備開拓している、統轄部長の齋藤拓哉という人物があの島の責任者だ。

 既にあの島に開拓、整備のために現地入りしている。島のことは彼がよく知っているので島の事で知りたい事は彼に聞けばいい。

 私達は以上だ。今度は君たちが自己紹介してくれないか?まずは、立案者からお願いできるかい?」と時宗は子供達にふる。

挿絵(By みてみん)

「五十嵐千景です。趣味はネットサーフィン。気になった事はとことん調べるタイプです。この5年間、遺跡の事を知り色々自分なりに調べていました。多分あの場所に、有ると思うのですが、それを立証すべく実際に今回の調査が出来る事を嬉しく思ってます」

「橘 廉です。千景とは小さい頃、玲音の家で合って、それ以来の友人です。ですが事故に合ってしまい、事故以前の記憶があやふやで殆ど覚えてません。

 千景の頼みで今回の計画を聞き、実行できるよう協力しています。自分に何が出来るか?わかりませんが足手まといにならない様に頑張ります」


「櫻玲音、スポンサーの出来の悪い息子です。訳有ってパンダ顔負けの姿してます」とふてくされて言う。


 (参ったなぁ玲音、笑った事を相当根にもっているなぁ)と玲音の言葉を聞き内心少し後悔している時宗。


 悠貴が場を読んで「下田悠貴ことパンダ2号です。こんな怪我してますが運動神経には自信が有ります。今回の調査で色々な冒険が出来るのが楽しみです。

 学術的な事は正直自信は有りませんが、体力には人一倍自信が有ります。役にたてるよう頑張ります」


 最後の潤がこの流れをどうしたものか悩んでいる。一番かわいそうな雰囲気だと廉は心底同情した。


「葉月潤です。残念ながらパンダ3号にはなれませんでしたが、機械組み立てたり作ったり、操作したりは、かなり自信有ります。

 なので将来パンダ3号というロケット作って、それには乗りたいと思います」

 潤は笑いながら答えた。



 大人3人は苦笑しながら「これから仲良くやっていこう」といい会食が始まり子供達は大人達と色々話し楽しい時間を過ごした。


 会食後、解散時に時宗は玲音に少し話しあるとホテルの喫茶店に消えて行った。

 残った子供達4人は、残った大人2人にタクシーで寮まで送ろうと言われて2手に別れて帰っていった。



2.親子の時間


 その頃、ホテルの喫茶店で親子2人


「そろそろ、そのパンダ顔の理由を教えてくれないか?」と時宗は玲音を真っ直ぐ見ながら言う。

「パンダ、パンダ言うな」と玲音はふてくされている。

「今回は、大怪我した生徒は居ないと聞いて居るが、どんな理由があれ他人を傷つけていい理由にはならないよ。喧嘩相手と両親の5組が、私の所まで来たよ」

「へっ?」と玲音は時宗から意外な言葉を聞き驚く。

「玲音。お前を信じて居るがお前はまだ未成年だ。私はこう見えてもお前の親だ。離れて暮らして居てもお前を保護監督する義務があるんだよ。だから知らないと言う訳にはいかない。それに、悠貴君巻き込んでいるだろう?理由によっては悠貴君のご両親に謝罪行かなければならない。怪我した上、停学まで玲音に付き合っているんだからね。きちんと理由を話しなさい」とやさしく諭され、玲音は事の一部始終と自分が感じた悔しさを話した。

「そうか、お前の気持ちはよくわかったよ。しかし、最初に言ったように、だからといって暴力が肯定されることはないよ」

 時宗は玲音の青アザを触った。

 玲音は痛いと飛び上がって「何するんだよ!」と驚く。

「お前が痛いと感じるように、相手も同じように痛いはずだ。殴られたほうも、殴った手も両方痛いはずだ。それはわかるな?

 お前の悔しさは私にも十分わかる。その場に居たのが私でも、玲音と同じ様に悔しい思いしただろう。

 でも他に見返す方法はいくらでもある。

手段を間違えては、いけないよ?わかるかい?」

 時宗は優しい顔で息子に寄り添い諭す。

「うん、暴力を振るったのは悪かったと思っているよ。校長先生にも言われたよ」

 玲音はうつ向きながら反省の言葉を話す。

「でも、今回はいい勉強になったね。悠貴君のご両親には私から謝って置くから、お前も改めてきちんと悠貴君に謝りなさい。いいね?」

「わかったよ 。悠貴には明日きちんと謝る」と素直に玲音は答えた。

「しかし、あの学校に入って、いい仲間出来て良かったな。玲音」

 今までふてくされていた玲音の顔が「うん」と言う言葉とともに、満面の笑みで答えた。

 その顔を見た、時宗は安心した。

「さて、学校の寮まで送るよ。門限に間に合うかな?

 明日はママが日本に戻って来るが、その傷が落ち着くまではママが心配するから会わない方がいいかもなぁ」と玲音の頭をぽんぽんと叩いて立ち上がった。

「ママ戻って来るの?」と玲音も時宗の横に並んで歩きながら答えた。

「あぁ、今回は3カ月くらいは日本にいると聞いたよ。だから、ゆっくり会えるよ。心配かけるんじゃないぞ?さぁ帰ろう」とホテルを出てタクシーに乗り込んだ。


 次の日、玲音は父親に言われた通り、自分の感情だけで行動した為に悠貴を否応なしに巻き込んだ上に怪我までさせた事を反省し、素直に「自分の喧嘩に巻き込んで怪我までさせてごめんな」と謝った。


 悠貴は「玲音先輩何言ってるの?あの喧嘩は僕の意志でやったんだよ?たぶんあの時、玲音先輩に止められていても僕はあいつらの言う事にめちゃめちゃ腹がたっていたからたぶん喧嘩していたよ。だから玲音先輩が謝るのはおかしいよ?」と不思議そうに言った。


 玲音はその悠貴の言葉は、いつも周りに居る形だけの友達なんかではなく真剣に自分と向き合ってくれる友人だと改めて確信した。「ありがとう。悠貴お前は一生俺の親友だ。これからも一緒に居てくれよ」と感動を隠せずに言った。

 悠貴は「勿論。もし、先輩が嫌がっても僕と潤は離れないよ?」と笑って応えた。


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