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Eternal Return ~永劫回帰~  作者: 天野 花梨
Daily Activities -in Junior High school life-
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旧友

1.旧友


 時はさかのぼること一週間前。


 日本櫻グループ本社事務局ビル内統轄長室


「お帰りなさいませ統轄長。廉様より郵便物が届いてます」と秘書の藤堂が出迎える。

 時宗には、各重要都市を拠点にその都市それぞれに専属の秘書を何人か配属しており、時宗の直属の補佐とその世界中に点在する秘書達を管理指示統轄しているのが、この藤堂十碧(とうどう とあ)と言う男だ。


挿絵(By みてみん)


 廉の父親【橘准一】の生前は右腕として働いており、亡くなった後を引き継いぐ形で就任した26歳の身のこなしから頭の回転まで何を取っても【スマート】と言う言葉が似合う男だ。

  橘准一が亡くなった後の引継ぎとはいえ26歳の若者はグループ内1、2を争う程異例の出世となり、当初社内各所から疑問視する声もあったが、短期間にそれを撥ねつけるだけの実績と時宗の信頼を得ている。


「あぁ、思ったより早かったな。悪いが雅治と誠に連絡を入れて、こちらに来るよう伝えてくれないか?」

「今からですか?」

「あぁ、あらかじめ前もって話を通してあるから大丈夫だよ」

「しかし、統轄長。今日はこれから今進行中の3案件のプロジェクトの中間報告会議が予定に入っていますが?」

「えっ、そうだっけ?2件ではなかったっけ?」

「いえ、一昨日1件プロジェクト暗礁に乗り上げかけているという報告で、統轄長が緊急に経緯を聞くと担当者に伝え、本日16時より内容確認と今後の対策会議をセッティングされましたが………」

「あぁ、そうだったね………困ったなぁ。他の2件は定例報告かい?」

「私が聞いているのは、緊急性の高のはその1件だけですが……」

「そうか、ではその2件の担当者にできるだけ簡潔な報告にするように伝えてくれ。それで2時間くらい時間は取れるだろう?」と言って時宗は移動しながら廉から届いた報告書を読み始めた。



 3時間後


 2件の定例報告会議が終わった後、時宗は会議室からあくびをしながら出てきてぼやく。

「なんで、あんな明瞭な案件なのに、あんなに解りにくく複雑な資料を作りあげるかな?しかも、ただ報告書を読み上げるだけで、こちらからの質疑には、何故すぐに応答できないんだ?

 今の中学生の方が、分かりやすく明瞭な資料作って来るぞ!あの部所の人事は少し考え直した方が、いいんじゃないか?」とぼやく。


 すると統括長室・秘書室フロアで藤堂が時宗を出迎える。

「伊集院教授と加藤様がお見えになっております。先程の廉様からの報告書のコピーをお渡しして統括長室で待ってもらってます」

「おお来たか!」と喜び急いで自分の部屋に戻る。

 伊集院誠は考古学者でフロンティア学園で高等科と大学で教授としても在籍しており、考古学研究の傍ら教壇に立っている。

 加藤雅治は櫻グループの海洋開発部門の統轄本部長である。

 2人は、ともに時宗の幼馴染みであり、幼少時代から今に至るまでずっと一緒に過ごしてきた管鮑の交わりと言えるほど親密な付き合いをしている友人である。

「時宗、相変わらず忙しそうだな。呼び出されたのに1時間も待たされたぞ」と伊集院が皮肉を言う。

「お前は、会社のトップに居るくせに、"Punctuality is the soul of business."と言う言葉を知らないのか?」と加藤は呆れる。

「知ってるさ。『 時間厳守は仕事の極意』だろ?

 でも、俺はお前らに例の報告書に目を通す為の十分な時間を作ってやったんだよ!」と時宗は笑いながら誤魔化す。

挿絵(By みてみん)

「あぁ驚いた。本当にこれを中学生が突き止めたのか?」と伊集院は驚きを隠せない。

「あぁ、御高名な考古学者様も真っ青だろ?

 学説に囚われすぎて凝り固まった思考より、柔軟な思考力でないとダメなんじゃないか?」と時宗は皮肉を返す。

「末恐ろしいと言うか、楽しみだな?」と伊集院は自分の後継者にと期待している。

 それを察した時宗は、「残念ながら発案者は医者志望だ!今の所は遺跡調査は趣味止まりみたいだぞ?」と笑う。

「嘘だろう!彼は考古学者になるべきだ」と伊集院は嘆いた。

「五十嵐和也の息子だからな。本人が医者以外を目指しだいと言っても和也が自分の跡を継がせたいんではないか?」と時宗は説明を付け足す。

「和也の息子って千景か?」と加藤は呟く。

 五十嵐和也は加藤の親同士が親友で幼い頃から加藤家に出入りしており兄弟のように遊んだ間柄であり、和也は加藤の妹の夫でもあった。

「千景は情報システムに関しては天才と言っていい。天は二物を与えたもんだな」と加藤は千景を思い出しながら言う。

「誠が、あの孤島の辺りにあの遺跡の沈んでいる可能性が高い。と言うからあの孤島周辺買収していたんだが………。

 廉達からあの島の沖合いを探査したいと言われた時は、正直驚いたよ。

 あの子達のデータと誠の調べたデータは、ほぼ一致している。たぶんあの辺りに本当に眠って居るんだろうな」

 時宗は少年の頃に戻った様に楽しそうに探索の開始をほのめかす。


「しかし、中等科の学生が本気で、この探査機作るつもりか?」と設計図を見ながら加藤は驚く。

「あぁ、廉達より1つ下の葉月潤と言う少年が作るそうだ。だからまだ初等科の学生だな」

「卒業したら海洋開発部門に欲しいな。何とかしろよ時宗」

「それも残念ながら本人は、宇宙開発部門希望だ。将来自分の部下にしたけりゃ今のうちから手懐けておけよ。

 で、お前達の見解はどうだ?」と時宗は楽しそうに言う。

「この計画書を作る彼らなら、何の問題無いのでは?事故だけ気を付けてやれば下手な部下より役にたつよ」と加藤は報告書と設計図をまじまじと見ながら言う。

「しかし、何処からこの情報手に入れたのだろう?考古学者の間では確かに周知の事だが、一般のしかも中学生が知っている様なことではないんだが?」

 伊集院は報告書を手に取りながら不思議に思う。

「今度、会った時でも直接聞いてみろよ。

 俺は、廉や玲音達に世界的発見に参加をさせてやりたいんだ。少々危険も伴うけどな。昔、自分達が憧れた宝探しのようにな。

 だから、お前達がサポートって形で協力してくれないか?学生だから良くできて発見までだろう?

 そこから先の発掘研究は誠と雅治が引き継ぐという形でさ」と時宗は、ほぼ遺跡を見つけた期待感でいっぱいになっている。

「彼らは賛成するかな?自分達でここまで調べたのに俺たちが参入して」と伊集院は疑問視する。

「取り敢えず、お前達の計画に彼らの計画を入れてやってくれ。彼らの計画にお前達の計画が入れて貰うが正しいか?

 素直な子達だから大丈夫だと思うが説得はするよ」

「で時宗。肝心のお前は時間を作れるんだろうな?」

「あぁ微力を尽すよ」

「メアリーはどうしてる。元気か?」

「あぁ、先週電話した時は、今イタリアに居ると言っていたよ。

 今後の計画を2人で、2時間程打ち合わせしておいてくれ。その間に俺は、今日最後の仕事片付けて来るからさ。

 そのあと話の続きは他の場所に移ろう。久しぶりに3人で飲みに行くか?」

「お前はウダウダ言ってないで早く仕事を片付けて戻ってこい!」と加藤は時宗を追い払う。

「相変わらず手厳しいなぁ~。お前らは……」と時宗は藤堂に急かされながら急いで会議室に向かう。


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