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私の趣味は嫌われ王子をデッロデロに甘やかすことです!~バレンタイン特別SS~【2月限定アップ】

作者: さくらぶし

ギリギリ間に合った……!

2月限定アップです。3月以降は非公開にする予定です。

連載に先駆けて、ちょっとだけ短編とは違う部分もあります。

 今日はバレンタインデーです。と言っても、異世界(こっち)ではそんなもの存在しないんだけどね。でも似たようなイベントの日が今日である。なんでも、『女神が統括神から"愛"の称号を承った日』だそうで、今日はいつもお世話になってる人や愛する人に感謝の気持ちを示す日なんだって。……女神の正体を知ってる私としては、そんな呪われた日なんて祝わないでもいいのにと思わんばかりだけど。

 日本で言えば勤労感謝の日とバレンタインデーが合わさったようなものだけど、どちらかと言えば『恋人たちの日』のイメージが強いみたいだから、私的にはバレンタインデーで。


 日本(むこう)に居たときはそんなイベントなんて興味なかったし(甘いものがそんなに得意じゃない)、せいぜい会社で取り仕切っている人に集金してもらって終わりにしてた。でも。ですが。だがしかしっ!今回の私は違いますよ!なんてったって、殿下がおりますからねっ!




 現在調理場に来ております。バレンタインデーと言えばやっぱりチョコかなと思ったんだけど、異世界(ここ)にはチョコという食べ物は存在しませんでした。じゃあ何をプレゼントしようかって迷っていたんだけど、多恵さんは気付いてしまったのですよ。殿下は手作りというものを貰ったことがないのだと!

 幼い頃から、むしろ生まれてすぐ"祝福"(という名の呪い)を授かってしまったので、こういう人と関わるイベントを全くしたことがないそうです。……誕生日さえも、誰からも祝われることなく独りで過ごしていらっしゃったんだとか。~~~っ!いっつも思うんだけど、今すぐタイムマシンに乗ってその頃の殿下をぎゅぅーっと抱き締めたい!貴方は愛される御方だって。今はまだいないけど、絶対に皆に愛される日が来るんだって教えてあげたい!涙を堪えながら震える小さな殿下をドロドロに甘やかしたい!心の底から笑って欲しい!

 殿下は過去のことを多くは語らない。語っても、平気だからって顔をする。全然平気じゃないのに。辛いのを押し殺して私に向かって笑うのだ。

 その度に思う。過去に飛べたらって。でもそんなこと出来ないのはわかってるから、今デロデロに甘やかす!殿下が、心の底から笑ってくれるまで。笑っても止めないけどねっ!


 という訳で、手作りディナーをデザート付きで振る舞おうと思っている。私の作るものだからたかが知れているけど、それでも殿下は喜んでくれると思うんだ。

 横でごちゃごちゃ煩い外野をいなしつつ、料理長に色んな食材を貰って作り上げていく。……まぁ材料を切って煮込むだけなんだけど。デザートは流石に一人じゃ作れないから、料理長に手伝ってもらいつつ見映えよく完成させた。うん、フルーツって偉大ですね!



※※※


 コンコン


 多分、っていうか絶対殿下はまだ執務室にいると踏んで私室には向かわずにこちらに直行した。案の定、扉の下から明かりが漏れている。早く戻るように言っても、私がいないと遅くまで残る癖は直らないみたい。


「……はい?」

「失礼します」


 殿下の部屋まで来る人は滅多にいないから、若干訝しげな返事だった。ちなみに私は午後からちゃんとお休み貰ってから、もう戻ってこないと思っていたんだろう。


「…………タエ?どうして……出掛けたんじゃ?」


 心底不思議な様子で殿下が聞いてくる。お休みは貰ったけど、なんで出掛けたんだと思ったんだろう。そっちの方が私には不思議だよ。


「こんな日にわざわざタエが休むから、てっきり誰かと出掛けたのかと……」


 …………あぁ!だからなんかちょっと寂しげだったのか!

 私がお休みを申告したとき、常にないことに殿下は吃驚した後、少し悲しげだった。その時は理由が分からなかったけど、私がどこかに行ったと思っていたのか。んもぅ、殿下ってば。


「出掛ける相手がいませんよ」


 それに、誰かと行くのなら絶対殿下がいい。殿下以外は却下です。


「そんなことより、夕食にしましょう?用意は出来てますので」




「これ、タエが全部…………?」

「はい。見た目はあまりよろしくないですが、味は保証します。これは、私の故郷の家庭料理なんです」


 私が作った料理を目の前にして唖然とする殿下。この国にはないものだし、一つの鍋のなかに具材がところ狭しと入っているから、初めて見る人には美味しくなさそうに見えるかも。

 私が作ったもの。そう、鍋です。熱々のお鍋さんです。冬の定番、お鍋さまです。

 なぜ鍋か。一つの鍋をつつくのって、家族とか友達とかしか出来ないと思うの。好意を持ってないと私は食べたくない。だからこそ殿下とつつきたかった。私が一番大事に思っている殿下だから。その意図までは通じなくてもいいけど、もっと殿下と近付きたい。甘えて欲しいって思うから。


「装って差し上げたいので、隣に座ってもいいですか?」


 殿下は少し呆けたあと、頬を染めながら勢いよく首を縦に振ってくれた。やだうちの殿下ちょーかわいい。





 しめまでしっかり食べた後(お米がないからパンで。意外と美味しかった)、トリを飾るのはものすごい時間をかけたデザート!これがなければ意味がない。


「タエ、これ…………」

「初めて作ったのでやっぱり不格好ですが……」


 万能玉でちゃんと冷やされていたデザートの蓋を開ける。そこには、色とりどりのフルーツタルト。


「私の故郷とは違うので知らなかったのですが、今日の"愛すべき日"には女性は手作りのフルーツタルトを差し上げる日なんだそうですよ。だから私から殿下に感謝の気持ちを込めて」


 女神が"愛"の称号を与えられた日、女性は歓喜に湧く草木から実を分けてもらい食卓にあげ、男性は自分の栄誉の象徴を女性に捧げたという逸話がある。最も、現代日本と同じように逸話は時代を経て幾分変わったものになったが、女性がフルーツを使ったお菓子をあげる習慣は残っているらしい。男性は女性の欲しがるものをあげなきゃいけないっていう高いハードルが出来たけどね。

 私は殿下に感謝している。こんな気持ちになったのは初めてだから。それを伝えたかったのだけど……


「ア、アンディ様!?」


 ぼろぼろと両目から涙を流すアンディ様。両頬を手で包んで涙を拭うけど、どんどん溢れだす。私なにかしちゃった!?


「ぼ、ぼく、こんなこと初めてで……」


 知ってますよ。だから教えたかった。誰かと過ごす特別な日が、とても素晴らしいことを。


「タエ、タエ…………ありがとう。すごく嬉しい……」


 頬に添えた手を重ねられて、上から握りしめられた。最近殿下から触れてくれるようになって、多恵は感無量です!


「僕もね、タエに何か贈り物が出来ないかって考えて作ったんだ。渡すタイミング逃しちゃったけど……貰ってくれる?」


 殿下が?私にっ!?

 どうしよう、ドキがムネムネするぅ~!


「これ……タエがくれた料理とかには劣っちゃって、すごく恥ずかしいんだけど、他に何もないから……」


 ………………ナニコレ。

 殿下から貰った紙片に書かれていたのは『タエの言うこと何でも訊く券』10枚綴り。

 ………………ナニコレ。

 ちょーーーーーーーかわいいんですけどっ!?なにこの『おこづかいないから肩たたき券作りました』感抜群な手作りチケット!かわいすぎでしょ!?狙ってんの!?


 …………落ち着こう。とりあえず1回落ち着いて。深呼吸しよ。スゥーーー、ハァーーーーー。……でも落ち着けない!

 嬉しすぎる!殿下の気持ちが!

 王子っていう枠組みのせいで出掛けることもままならず、かといって自分の手足となってくれる従者がいない殿下には、この手作りチケットが一番の贈り物だったのだろう。そうまでして、そこまで私のために考えてくれた殿下の気持ちが、何よりも嬉しい。ヤバい、私も泣きそうになる。


「あの、ごめんね?僕からはこんなもので。でも何でも叶えるから。休み欲しいとか、給料上げて欲しいとか。タエの望みなら、何でも」


 ごく自然に、さらっとそんなこと言っちゃう殿下。こんな、一使用人のために。やっぱり貴方は愛されるべき御方です。


「なら早速使っても良いですか?私アンディ様に――――――」


このあとの多恵さんの"お願い"は皆さんのご想像にお任せします。面白い"お願い"を送っていただければ、殿下から反応がある…………かも?

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― 新着の感想 ―
[一言] こんな彼女ほしい~
[一言] ギリギリで読めてよかったですヾ(*´∀`*)ノ 連載首を長くしてお待ちしてます☆
[一言] 殿下が可愛くて悶えます‼
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