第五章:押しかけ女房(回想)
ここで少し、炯香とあの神王の昔話をしよう。
〜西の国〜
その国は天より抜け出して来た狂魔(狂った悪魔のこと)が沢山いた
それを狩るのが黒蝶(月翳りの兇手)そう炯香の母、薇莠の役目だった
炯香の母は縁盟界に属する半神半魔だったがその強大すぎる力と月をも翳らせる美貌のせいで人界のものからは求婚され、それが嫌だったので秋姫の母(神王)に相談したら、人界の帝を紹介してきて、「一度やってみたかったのだ、仲人を、などと言いながらかってに婚約を結んだ」それでも必死に逃げた薇莠だが、だんだん心がその男に引かれていき最後はあきらめるように仕方ないといって婚約を受け入れ翌年に結婚。その後3年目に炯香を産み、育てた。しかし薇莠は炯香が5歳のときに何者かによって殺されてしまい炯香の父もそのとき同時に殺され、炯香は誰にも頼らず妹と二人で宮廷という地獄で生き延びていた。しかし炯香が王になってから4年の年月が過ぎたときその悪夢は起こった。なんと炯香たち王族の次に位が高い家臣が、謀反を仕掛けてきたのである。
炯香は3歳になった頃母から剣の稽古を受けていたし月翳りの兇手(黒蝶)の名を次ぐために人の殺し方も学んでいた為に一命は取り留めたが妹の香華はまだ母が死んだ頃二歳で幼かった為、学んでおらず助からなかった・・・。
そして息も絶え絶えになりながら炯香が
「母上、香華やっと、やっと貴方たちのお側に・・・私も・・・行きます」と言っていたところに、人影が現れ「師匠の子はコイツか?」と横にいる臣下に聞いている。
「はい、そうです。」
「そうか・・・そこな童子・・・お前生きたいか?」
「生きたい・・・です。」
生きたいとなぜか思ったそしてこの国を、この世界を変えるのだ、と
その数秒後・・・ついに、炯香は気を失ってしまった。
「そうかならば生かしてやろう、他ならぬ師匠の頼みだ・・・この者にその気がなかったら問答無用で見捨てようかとも思ったが、そうではないらしい」
そんな声が聞こえた気がした・・・