第五章:押しかけ女房(其の一)
どこからか「帝―何処にいらっしゃるの?」という声が響いた
(言わんこっちゃない・・・)
「帝、炯香様・・・あの、お客人がいらっしゃっています・・・」
「誰だ?」
「近衛花音様です・・・」
「げっ・・・」
「は?どんな方ですか?花音様とは・・・」
「この国一の美女で帝が3年前転んだ花音様にお声を掛けたところ、一目ぼれしたらしく・・・それはもう毎日宮中で働いているお父上様に会いに来るついでとか言って帝を追い掛け回している・・・俗に言う『押しかけ女房』ですね・・・」
「ほう・・・それは、それは・・・あれ?帝?」
「早速お逃げになられたようで・・・」
「あの、お茶をもらえるかしら?」
「はい?ただいま」
侍女がお茶をとりに行くと炯香は王室に戻った・・・
「で、どうしたの・・・蕣?」
(それが押しかけ女房が・・・来た・・・と)
「ああ、花音様のことでしょう?」
(花音というのか?)
「そうらしいよ・・・蕣そろそろ姿を現しなさいよ!私が一人で喋ってる、馬鹿みたいじゃない・・・!」
(へーい)
そういうと蕣が人化した
「これでいいのか?」
「うん・・・。」
「で、その女は花音というのか・・・。」
「その女ってこの国一の美女のことを・・・。」
「だって炯香より綺麗じゃなかったもん・・・。」
「私と比べては可哀想よ?私の母上は人間じゃないんだから・・・」
「月翳りの兇手の子・・・か?」
「そうそう・・・。」
「あの、お茶お持ち・・・はっ!誰ですかその女人は・・・?」
「ああ、これ?仲良くなった貴族の方・・・」
(これって、おいおい、苦しいいいわけだなぁ・・・)
「そうでしたか・・・すいません」
「いいえ・・・お気になさらず・・・」(ヤバイいつかばれる・・・)
「で、帝は?」
「ああ、そこで花音様と追いかけっこをしているよ・・・?」