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第49話 お地蔵さんが…… ①

 春の陽気のせいでそろそろ重いコートに袖を通す機会も減りつつあるような3月の真ん中の頃のお話。


 ひまわりが丘にあるとあるマンション、の307号室では、その夜、簡単な飲み会で盛り上がっていた。

 

 そんなことは今までにも何度となく紹介してきた風景なのだろうけど、その日の飲み会はいつもとはちょっと違っていた。それは通常4人であるはずのメンバーのうち一人が欠けていたのだった。


「あいつ、とうとう里帰りしたんですね」

「金欠に耐え切れなくなったみたい。お小言と引き換えに小遣いせびりに行ったんでしょう」

 

 とダイニングテーブルに隣同士腰掛ける草壁圭介と長瀬ゆかりの二人がそんなことを話しながら、ビールの入ったグラスを傾けていた。

 ここで言う『あいつ』とは長瀬亮作のことである。そうあれほど嫌がっていた実家への帰省だったがとうとう彼も仙台へと帰ったのだ。

 ゆかりの言うとおり、背に腹は変えられないということだろうか?金がないから帰ったのかどうかは不明だが数日間は向こうで過ごすということなのには違いない。というわけで、この日の飲み会は草壁とゆかり、そしてルームメイトのオジサンのツルイチさんの3人ということになっている。


 

「お金が理由じゃないかもしれませんよ?ねっ、草壁クンもそう言ってましたよね?」

 そう言ってゆかりと草壁の会話に入ってきたツルイチ。このオッサン、だいたい4人で飲むときには、静かにグラスを傾けていることが多いが、3人しかいないせいか今日は、妙に口数が多かった。それにしても、と草壁は思った。つまらないこと言い出すなよって。


「なんですか?それ?」

 そんなこと言われたらゆかりも気になる。


「きっとゆかりさんを怒らしちゃったから、逃げたんじゃないか?なんて、ね」

「怒らしたって何がですか?」

「ほら、この間、ゆかりさんの教室でやった教室焼肉のことですよ」



 ツルイチの言うのは、前回、亮作と草壁、ツルイチの3人がゆかりのピアノ教室に押しかけて焼肉パーティーを開いたことを言っているのだ。確かにあれはまずかったらしい。ゆかりはその言葉を聞いて、眉をひそめた。


「あのあと大変だったんですから!教室に焼肉の匂いがずっとついて消えないし!」

「あれは、我々もちょっとやりすぎだったかって思ってたんですよ」

 ツルイチが剥げ頭を掻いて照れ笑いするが、そのくせ、肉の欠片すら残らなくなるまでパーティを続けたのだった。もちろんゆかり自身もしっかり味わったのは言うまでもない。



「二人とも知らなかったでしょうけど、あの焼肉のあと、見学希望の親御さんを迎えることになってたんですからねっ!」

「そうなんですか?」

 もちろん草壁は知らない。そして、それがどうなったかというと……。


「うちの教室にやってくるなり、子供のほうが『お母さん!お腹すいたっー!』って言い出すし」

「そんなにうまそうな匂いが出てたんだ……」

「なに、感心してるんですかっ!?」

 ゆかりに睨まれて草壁もツルイチもしばし黙った。


「それからその子のお母さんがなんて言ったって思います?」

「さあ……」

「『この教室は香ばしいですね』って、笑われたんですよっ!教室を香ばしいって!」

「……すみません……ところで、そのお子さんの入会は?」

「するわけないでしょ?!お母さんがずっと愛想笑いして、そのまま音沙汰なしです!」


 草壁もツルイチも苦笑して俯くしかなかった。

「ああいう所で悪ノリするところがあの子の良くないところなのよね……。一度みっちり説教してやらないと」

 と眉をしかめるゆかりを見て草壁が思わず

「やっぱりお姉ちゃん怒らせたのが怖かったのか……」

「実家の両親より私のほうが怖いって言いたいわけですか……」


 ジトリと睨むゆかりの鋭い視線から、草壁は黙って顔をそむけるしかなかった。



 こんな風にして、長瀬亮作を抜きで3人で集まっているのは、珍しい光景には違いないが、多少それに事情もないわけではなかった。とても詰まらない事情だったが。

 というのは、草壁が近所のスーパーの半額叩き売りにうっかり手を出して買ってきた、ただでさえ安い鶏肉がもうそろそろ食べきらないとヤバイことになりかけてきたせいだ。

 彼は大慌てでそれを全部から揚げにした。しかし大量の鶏のから揚げを消費するために頼りにしていた、同部屋の長瀬亮作が急に実家に帰ってしまったため、鶏肉消費要員として、かわりにその姉の長瀬ゆかりが隣の部屋から呼び出しをくらった。そういうことだった。実につまらない理由で彼女は呼ばれたが、酒がついていたら、このお嬢様、基本的に断らないので、今、ここに至っている。


「昨日、僕のところにあと4,5日は仙台にいる予定だって連絡がありましたよ」


 ゆかりの軽い愚痴のあとは、いつものとおりのお気楽なご宴会。3人なら3人でいつもよりは少し静かながら、草壁作の鶏唐揚げをつまみながらもグダグダな感じで話も続くものだ。そこで、再び亮作の話が登場すると、ゆかりが急に意外そうな顔をしだした。


「へえ……それはいいけど、じゃあ、あの子コンサートどうするつもりなのかしら?」


 コンサート。そう実はゆかりと亮作は3日後に開催予定のクラシックのコンサートに二人そろって出かける予定があったのだそうで……

「――4,5日仙台にいるなんて言ってるところを見ると、あの子、コンサートのこと忘れちゃってるみたい」


 と、ここでゆかりはふっと我に返ったように言葉を終わらせると。思案顔に独り言みたいな呟きをした。


「――けど、そうなったらコンサートのチケット一枚余っちゃうわ……」


 すると隣に座っている草壁が軽く右手を上げながらニヤついている。このお調子ものが何を言いたいかはすぐわかる。そしてその思惑に乗ってあげてもいいわけだが、あんまり意気投合している様子も見せる訳にもいかず……。なにしろ目の前にはツルイチさんがコップ酒を煽っている。嬉しそうに乗っかっては「草壁とゆかりはすっかり出来ている」みたいな噂を立てられないとも限らない。そこで、ただ不思議そうな顔をしながらとぼけてみた。


「草壁さん、クラッシック音楽なんて興味あるんですか?」

「あります!」

「返事の元気はいいけど、初耳なんですが?」

「ちょいちょい聞いてます!」

「じゃあ、今回のプログラムは分かりますか?ラヴェルのピアノ協奏曲に、ラフマニノフ……」

「いい曲ですよね」

「草壁さん、ひょっとしてラフマニノフって曲名と思ってません?」

「えっ?」

「その顔は思ってたって顔ですよね?」

「あ、あんまりマイナーな作曲者は知らなくて……」

「ラフマニノフって超メジャーですけど」

「ラ、ラヴェルのピアノ協奏曲って何番ですか?……」

「喋る度に、ボロが出てくるんですけど!普通ラヴェルのピアノ協奏曲というと番号はつかないです。――そんなクラッシック知らないし興味がないって人とコンサート行って途中で居眠りされちゃったりすると、こっちが興覚めなんですよねえ……」


 ゆかりが意地悪に突っ込んでくるものだから、草壁も次第にオロオロしだした。

「初心者だから詳しくはないけど、本当にCD買ったりしてるんですから……」


「何を?」

「リリークラウスのモーツァルト」

「……初心者のわりには渋い選択ですね……」


 この草壁の話は実話である。そしてそんな彼がクラッシックに興味を持ったりするようになったのは当然、お隣で少し白けた様子で草壁に意地悪な突っ込みをしているゆかりの存在のせいでもあるわけで……


「まあ、それなら折角のチケット、リサイクルに回してもいいけど……」

「せっかくのチケットをゴミみたいに……」

 草壁が少しムクレタ。しょうがない。二人でどこか行こうなんて誘ってもいい顔しない彼女だ、それがこんな形でも二人でお出かけを認めてくれただけでも良しとするか――。


 するとしばらく一人で静かに飲んでいたツルイチが

「リサイタルをリサイクルするんですな!」

 ものすごいつまらないダジャレを言って飲み会が終了……とはならなかった。一応、お嬢様がツルイチのギターに乗せて一曲歌うまでは中々この部屋での飲み会がお開きとはならない。

 しかし、そんなこんなで二人でのお出かけまでは話が決まってその日は終わった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 ひまわりが丘商店街にある喫茶「アネモネ」と言えば、ゆかりとその親友辻倉あやの二人が「完全自由出勤」という本人たちの都合だけで好きに顔を出せばいいという、いい加減なバイトシフトで時々ウエイトレスとして働きに出ているお店だ。

 木枠格子のガラス扉を、カランコロンとドアベルの音高く中に入ると、少々くすんではいるものの黒光りする板張りのフローリングや妙に豪華なシャンデリアに出迎えられる。モダンのモの字もないような昭和の息吹きが漂う店内。

 落ち着くといえば、落ち着ける空間である。ただ、スカッと垢ぬけた感じはハッキリ言って、ない。


 ただこういう所だからこそ、比較的年齢層の高いお方たちは好まれるかもしれない。そして若者は敬遠しがちなのも確か。



 そして、今日であるが、この店には珍しく若者が多いのである。


 ちょうど、先ほどの飲み会で草壁とゆかりがコンサートへのお出かけを約束した次の日。


 ウエイトレスのゆかりとあやの二人が同時出勤。これは稀にあること。いや、稀ではなく割とよくあること。本当は二人同時に必要なほど忙しくはないが、ここのマスターがこの客寄せパンダ1号と2号をなんとかつなぎ留めるために「完全自由出勤」といういい加減なことを許しているせいである。

 とはいえ、この二人がいるだけで華がある。

 知る人ぞ知る、ではあるが、「おたくの商店街にきれいな看板娘がいるんだって?」と言えば、答えるほうは「どっちのこと言ってんの?ピアノの先生?それとも電気屋の娘?」と返ってくるような二人なのである、それが揃っている。

 さらに店のカウンターにも若いのが3人も腰かけている。


「ねえねえ、あやちゃん!もう草壁さんと付き合ってるなんて嘘、通用しないんだから、一度どこか一緒にお出かけしようって!」

「やめてよ!田村君。お願いだからエプロンの裾ひっぱらないで!」

 以前からちょいちょいとあや目当てでここにやってくるナンパ高校生、田村隼人である。――いや、彼は実はもう高校を卒業して来年から大学生となるのだが、行動は相変わらず。しかもあやが田村から逃げるために「草壁と付き合っている」とつき通していた嘘が、前々回の草壁の失態によって崩壊してからはさらに彼がしつこく迫ってくるようになっていた。


 で、もう一人だが

「結局、先輩、いくらもらって辻倉さんの彼氏役を引き受けてたんですか?」

「貰うわけないだろ!」

「ほら、そういうところが先輩が甘いっていうんですよ。その受け答えじゃ『なんにも貰ってないけど、確かに彼氏役は引き受けました』って言ってるようなもんじゃないですか!」


 そう、彼女も商店街にある「今木整骨院」の娘の今木恵。ブラコンをこじらせた挙句、なんとなく実兄の面影の漂う草壁に片思いを寄せる彼女。こう言うと、秘めた思いを引きずって鬱々としていそうだが、違う。

 狙いを定めたら割と思いを隠そうとはせずに、草壁を追いかけている。

 そして追いかけられてる草壁だが、現在、しっかりアネモネのカウンターに腰をおちつけて、横にはべったりと恵に張り付かれている状態で固まったままである。

「……」

 草壁にしても、やりにくいのだ。あやと付き合っていますなんて芝居は論外として、本命のゆかりが「わたしたちはただのお友達でございます」となっている状態で恵に付きまとわれている状態がなんとも宙ぶらりん。

 恵が「恋人として付き合ってください」と言ってきたなら「ノー」とも言える。が、友達とも恋人ともはっきりさせないままに、親しげにされても断る理由がまったく見当たらない。まさか「君の存在が僕には迷惑だから、もう近寄ってこないでくれる?」なんて厳しいこと言えるわけもなく。そしてそんな彼の優柔不断なところに恵は付け込んで来ては……。


「そんな失敗繰り返すなんて、先輩お疲れなんじゃないですか?」

「そうかな?」

「ちょっと手を貸してください」

「ん?手?」



 この光景を見ながら、少し苦笑気味ながらもマスターがまんざらでもなさそうな顔をしている。

「まあ、にぎやかでいいわ。この店で5人もこんな若者が恋愛話してるなんてあんまりないからね……」


 じっさいは、全員すれ違いだらけの恋バナではあるが、年金と病院の話よりは爽やかかもしれない。


 

”ねえ、あやちゃん、じゃあさ、真面目な話。いままで彼氏作ったことないの?”

”ないです”

”く、草壁さんと同じミス犯してる!それじゃあ今までの『わたしたちお付き合いしてます』は嘘だって、あやちゃんも認めちゃってるわけじゃん!”

”だからと言って田村君とお付き合いしますってならないから!”

――すると、カウンターそばに立つあやの方へ体を傾けたまま、田村がそんな感じで調子よく喋っていたのを急に止めて、不思議そうな顔してこんなことを言い出した。


「5人の若者?それ正確に言うと、4人の若者と――」

 そこで、田村、あやの横に同じように棒立ちしているゆかりの顔をちらっと確認したあと

「――1体の地蔵、じゃないっすか?」



 彼の言う地蔵とは、あやのとなりの同じくエプロンをつけて突っ立っている、長瀬ゆかりのことである。彼女が不機嫌なときに時折見せる、あの能面のような無表情。その表情のまま、棒杭のように直立不動の仁王立ち。地蔵っちゃあ地蔵にも見える。


 で、ゆかりがなぜそんなに不機嫌か?

「先輩、たまにはこうやって自分でハンドケアとかしたらリフレッシュできますよ?」

「あ、ありがとう……恵ちゃん……」


 恵の言葉にうっかり乗って片手を差し出したところ、彼女からご丁寧なハンドリフレクソロジーを受けている真っ最中の草壁の姿。ちなみに、草壁の座っているカウンター席から、現在ゆかりが仁王立ちしている場所はやや右後方、4時方向と言った感じの位置となるため、草壁はゆかりがどんな様子をしているかは見えない。怖いから見たくもない。が、見えなくても分かっている。恵に手のひらのマッサージを受けている様子なんか目にした日には、そりゃどんな顔しているかぐらいは。そして田村が言った『地蔵』というワードが誰のどんな様子を指しているかも。


 ゆかりが、ギロっとおちょくってきた田村を睨む。


「うわ!お地蔵さんが睨んだ」

「『だるまさんがころんだ』みたいに言わないで!」


 ゆかりの隣で、思わずあやが叫んだ。なんか田村がこっちに目線をチラチラ投げかけながら「お地蔵さんが動いた」とか「お地蔵さんがレジ打った」とか言い出すから、まるで自分まで田村とツルんでゆかりをからかっているみたいになってしまっているじゃないの!


 最終的に、あやが脇に抱えていた丸いトレーで田村が頭を張られて一応の決着。


(賑やかなのもいいが、毎回毎回、うるさい連中だよな……やっぱりうちみたいな喫茶店には、年金と病院の話題で盛り上がっているほうが平和かもしれんな)

 付き合いきれなくなったマスターは、4人の若者と一体の地蔵に背を向けて、一人、店の仕込みのフルーツカットを始めるのだった。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 そうは言っても、そんな光景はある意味日常。

 そして、草壁とゆかりの二人がクラッシックコンサートに行く予定が、翌日と迫ったそんな時、ゆかりの元に弟の長瀬亮作から連絡が入った。


 因みに言っておくと、亮作の突然の帰省はやはり「お金」が目当て。前回ゆかりのピアノ教室で盛大に焼肉パーティーをやったことなんか、反省はしていない。またやりたくなったら、この暢気なお坊ちゃんはやらかすだろう。前回、草壁に語った通り、高校の教室で友達と焼肉パーティーと鍋パーティーと手巻き寿司パーティーを連チャンでやらかしたぐらいなのだから。

 ただ、もうわざわざ機材持ち込んでまでするのが面倒だから多分もうしない、と思っている程度である。



 当然、金をせびるといったって『パチンコでだいぶ擦ったからお金ちょうだい』などと正直なことを言えるわけもなく、”同じゼミの仲間と研修旅行に行く費用が要る”とか”使っているパソコンの調子が悪いから新しいのに買い替える”とかなんとか次から次へとありもしない出費を並べた挙句、そこそこの現金をゲットすることに成功した。

 

 しかし、そんな嘘をつき通すことに神経を集中していたせいか、姉のゆかりと行く約束をしていたコンサートのことをすっかり忘れてしまっていた。


 が、このお坊ちゃん、コンサートが明日に迫ったこのタイミングで急にそのことを思い出したのだった。彼は姉のもとへ連絡を入れた。

「ごめんごめん、すっかり忘れた!」

「いいのよ気にしないで」

 電話の向こうの姉の声はこの時点ではやさしかった。

「明日のお昼過ぎにはそっち着くようにするから……」

 しかし、亮作がここまで言ったとき、姉のゆかりの声が小さく漏れ聞こえた

「ええっ……」

 なんだか、ドッ引きのご様子な低いトーン。フランス料理のフルコース頼んだら、卵かけご飯が出てきたみたいな声をしている。

「あんたさ……せっかくそっちに帰ったんだから、そんなこと気にせずゆっくりしたらいいじゃない、私のこと気にする必要はないのよ。ねっそうすれば?」

 お姉ちゃん、急になんで帰ってくるなみたいなこと言い出すんだよ?とスマホ片手に亮作は呆気に取られた。

「前からの約束だし、こっちも楽しみにしてたし……もうこれ以上居たくないから、これ口実に帰るよ。チケットも取ってあるから」

 ここまで亮作が言ったところで、通話相手はしばしの沈黙。ん?なんかこっち悪いこと言った?と亮作は思うのである。間というか、空気というか、そういう微妙に重い感じがデジタル回線を通じてなぜか伝わるものなのだが……。


「ゆっくりしてればいいのに……」

 地蔵が小さく呟いた。

「僕が帰ってきたらダメなのかよ!」

 姉の不可解な対応に亮作が思わず叫んだ。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 次いで長瀬亮作は同居人ルームメイトである草壁圭介の元へも同じように連絡を入れた。


「あ、草壁クン!僕ね明日の昼までには帰るから!」


 こっちは事務連絡程度の報告。向こうからは「あっそ。お土産よろしくね」ぐらいの軽い言葉が返ってきてくるものと思ってると、急に通話相手が不機嫌になり、突き放すような調子で言い放った。


「いいよ、帰ってこなくて……」


「なんで、お姉ちゃんも、草壁クンも僕が帰るっていうとそうなるんだよ!」

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