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第34話 ゴチソウの代償

 お話のほうの時間もすすみ、11月も下旬。前回から数日ほど経った頃である。

 


 ここ、ひまわりが丘商店街の喫茶店「アネモネ」の店内では、草壁圭介がご満悦な表情を浮かべて、ナイフとフォークを握っていた。

「ふぉああ!うんっまっそぅ!!」


 甘い香りをただよわせるタマネギソースを乗せて、鉄板皿の上でジュウジュウ言っている厚手のステーキ肉を前に興奮さめやらぬ表情。

 もともとそれなりに値のはるお肉だが、丁寧に叩いてマリネ液にしっかり漬け込んだせいで、ナイフじゃなくてフォークで切れそうになぐらいに柔らかいのだ。

 そして、火の通りが絶妙。口に入れると肉汁の甘香ばしい旨みが舌の上にトロリと広がる。

 定番のタマネギソースも旨し。良く火が通っているせいでタマネギの苦味がしっかりと微妙な酸味と甘味と香りに昇華している。

 ソースの味付けは少し塩加減を利かせている。隠し味にお醤油が入っていたりするのも日本人好み。だから。


「ライスにメチャクチャ合う!」


 肉食べて、ライスを頬張ると、肉の旨みと米の甘さが口のなかで最高のエンゲージ!



「それに、この付け合せのポテトサラダが、またウマイ!」


 一口食べるごとに、そんな調子の草壁だった。前回プリンアラモードを食べてたゆかりとまったく同じ様子だと思ってもらったらいいかもしれない。


「いいなあ、うまそうだなあ……」

 目の前のカウンターで草壁が、”シャリアピンステーキ”なるものに舌鼓を打っている様子を、うらやましげに見ているのはこの店のマスターである。

 本日も白いノリの利いたカッターシャツをパリッと着こなしているもはいつものこと。だが、自分の店で出している料理を食べている客へ、情けない視線を向けているのは普通じゃないことだ。


「いいなあ……彼ばっかり」

「材料費結構するんですよ」


 どんなにマスターが何か言いたげに隣に立つ辻倉あやを見たところで、エプロン姿のままあやはソッポむいてマスターを無視するのだった。


「うちのキッチン使っといて?」

 マスターが軽く皮肉を言うと、あやがすまし顔で

「最初からずっと据え置きの私の時給の件と合わせて、ここで話し合いの場を設けましょうか?」

「……」

 と切り返され、黙り込むしなかった。



 わかりやすく言うと、今、草壁はあやのお手製シャリアピンステーキの定食セットをこのアネモネのカウンターでごちそうになっているのだった。


 なぜか?


 事情は割りと簡単で、以前、今木恵と田村隼人の両名から誘われたダブルデートが最終的になぜか鬼ごっこに変った際、草壁の機転でなんとか無事逃げることができたお礼。と、そのあたりに絡まって草壁にはいろいろと迷惑をかけたことの諸々を含めたお詫びも兼ねている。

 もちろん、そのころにはマスターも、草壁とあやが付き合っているというのはただの芝居だということは知っていた。



「この前の遊園地で、そんなにいろいろあったの?あやちゃん」

「なんか、たくらんでいるとは思ったけど、もう、しつこくって」

「僕の機転で無事に、やつらの魔の手から逃れられたんです」

 草壁とあやがそういうふうに言うのだが――

「話を聞いてると、いっしょに鬼ごっこ楽しんでたとしか思えないが……」

 マスターは不思議そうに小首をかしげるばかりである。



 そして店内にやってくる新たな客の姿。

 見ると、お向かいの整骨院の娘、今木恵だ。つまりあの騒ぎの首謀者の一人。

 草壁とあやが付き合っているということには完全に懐疑的な彼女だったが、そちらはともかく草壁との仲もまったく進展しないままである。

 さらに彼が終業後、わき目も振らずにバイトに掛けて行くことになってからは時々お昼を学食で食べるぐらいが、ここのところの二人の接点となっていた。

 で、そんなとき、喫茶店の前を通りがかったら草壁が珍しくなんか食べているので気になって飛び込んでみたのだった。


 先輩もいたんですね。奇遇ですね。と、わざとらしいことを言いながら、ついでに辻倉あやに向かっても、アッ辻倉さんもいたんですか?知らなかった。と本当は彼女の存在まで確認して入ってきたくせにわざとらしいことをいいながら、草壁の隣にちゃっかり腰を下ろした。


「先輩、結構豪勢なもの食べてるんですね。珍しい」

 隣に座るなり、恵は草壁の目の前にあるディッシュに目を丸くした。

 食べかけのステーキ肉は結構な厚さがあるし、サラダにスープまで付いている。たしかこのお店って、ステーキなんてメニューなかったはずだけど。

 恵が目の前のマスターに聞いた。

「ここって、こんな料理できましたっけ?」

「失礼な言い方するね……」

 ちょっとムッとするマスター。あんまり深いことは言えないが、事実を伏せておくわけにもいかないから簡単に

「これは、あやちゃんが、彼のために作った特別料理のシャリアピンステーキだから、うちのメニューにないのは当然だよ」


 マスターの言うことに間違いはないが、言い方が微妙なので横であやが弱った声を出した。

「そんな言い方しないでくださいよ!」


「カレのために、特別に……」

 いつもあやがわざとらしく言う、私達付き合ってます宣言と違って今回はかなりの特別扱いを自分とは関係ないところでしている。これって、ただのお芝居とは次元が違う話じゃないの?

 しかし、まだそこのところ、完全に信じ切れない恵はただ混乱するしかなかった。


(この二人って偽装恋人じゃなかったの?ピアノのほうは?……一体どうなってるの?)



「先輩、本当に辻倉さんと付き合ってるんですか?」

 恵は隣で悠長に肉を頬張る草壁に体を寄せるようにして聞いた。おにいちゃんの食べてるステーキ、おいしそう、どんな味がするんだろう?とか思いながら。

 ちょうどそうしていると、恵のもとへとあやがお冷の入ったコップを持ってきて、ちょうど草壁の背後あたり立った。


「そう……だよ……」

 今回は打ち合わせ抜きの芝居。未だにこんなことをしなきゃいけないのかわからないので、草壁がチラチラとあやを盗み見るが、こういうときあやは知らぬ顔をする。

 だんだん、難しいセリフばっかりこっちに丸投げしてくる舞台監督にちょっと腹がたってきた草壁、やおら立ち上がり

「だから……こうしてるんじゃないか」

 あやの隣に並ぶと、彼女の肩に手を置いて軽く抱き寄せてみた。

 ちょっと悪乗り。けど、そういうところがあるのがこの男。


 なんとも言えない表情でそんな草壁を見上げる恵。あやはどうしていいかわからずこっちも草壁に肩を抱かれたまま固まっていた。

 一人、ステーキ食べてる時みたいな顔してご満悦の草壁を見ながら、マスターは思うのだった。


(彼、ああいうところ直さないと、そのうちえらい目にあうぞ……)



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 そんな中、とある日の双葉荘では、草壁と若女将の芳江がまだ宿泊客の姿もまばらな午後の旅館のロビーの片隅で向かい合って話していた。

 議論の中心には、ついこのあいだ雇いいれたばかりのバイトのことだった。


「今は草壁クンが頼みなのよ」

「そうは言いますけど、僕も学生だから、そんなに毎日のようには来れませんから」


 例の使えない3人組みの渡辺、岩城、福田なのだが、一週間経っても初日と様子があまり変らないのだった。未だに3人合わせて1人分の働きすらないのが現状らしい。

 

 岩城はなんでも乱暴に扱うので皿をすぐに割る。「また割れた!この皿ヤワすぎる!」

 渡辺は洗い物そっちのけで残飯あさり「さすがに旅館の夕食、おいしいものばかり」

 福田はすぐ電池が切れる「もう動けない」

 3人が毎日のように吐くセリフがこれだそうだ。



 ところで、草壁が入れないときの洗い場の応援には、空いてる社員が入る。というより、誰でもいいから社員か仲居さんでちょっと手の空いている人を応援に入れるのだが、この3人を使うというのは1人前の仕事以上に骨の折れることらしい。あの子たちと一緒になんかできない。という人もちょいちょいいたりするのだった。


「昨日も洗い物終わったのが夜の11時よ?そのうち終電車なくなるんじゃないかって思ったから、とうとう私が最後手伝ってなんとか……ねえ、わかるでしょ?」


 

 芳江が疲れた顔をしている。いつも顔だけは明るい人が珍しい。まあ、客前じゃないというのもあるのだろうが。そんな芳江から

「あの3人を纏め上げれるのは、あなただけなの」

 と、おおよそ嬉しくない褒め言葉を頂く草壁だった。じゃあ、クビにして新しいの雇ったらいいのにと思うが、バイト風情が言えるセリフじゃなし。

 とんでもないことになってきたなあと思って、しばらく草壁は頭を抱えていたが、やがて


「あの、こういうのはどうでしょう?」

 そのとき、草壁がおもむろに口を開いた。




 ちょうどその頃、商店街の喫茶店アネモネのカウンターには二人の客が並んでお茶を飲んでいた。


「久しぶり、今日はお休み?」

 マスターがそう言いながら水の入ったコップを差し出した客は、さきほど店に足を踏み入れたばかり。

「いいえ、教室へ教えに来ただけだから、夜には向こうに戻ります。あ、私、レモンティーいただけますか?」

 それは、喫茶店お向かいにあるピアノ教室の先生、長瀬ゆかりである。現在、双葉荘の寮に住み込んで旅館の掃除などの仕事を忙しくこなす毎日を送っている。


 するとゆかりとは空席を2つ開けてカウンターに着いているもう一人の客が、あまり彼女のほうを見るでもなく、まるで独り言のようにポツリと呟いた。


「最近姿を見ないですけど、忙しいみたいですね?」

 そちらは、今木恵である。

 たまに彼女もここに顔を出すようになって久しい。来れば、カウンターに座るのもいつものことになりつつあった。


 ゆかりと恵。あんまり接点がない二人だった。恵に比べて、ゆかりのほうがちょっと意識しているのかもしれない。返事の声音が妙に改まった響きになっていた。

「ええ……まあ……」

 考えてみたら3つほど年下の恵に、年上のゆかりが気を使っているみたいなところがあった。



 ゆかりのそっけない返事のあとしばらくの沈黙。

 目の前の女子二人のなんとも言えない関係を知っているだけにうかつに口も挟めないマスターも黙って注文の品を作るぐらいしか、間を持たせることができない。


 やがて、口を開いたのは恵だった。

 相変わらず、ゆかりのほうを見ようともせずに口にしたセリフは、静かな店内にはよく響いた。


「顔を合わさなければ、そのうち離れてしまうし、普段会ってたら、友達も恋人に変ったりすることってあるもんなんですね……」


 客席の二人からは見えないところで、マスターが紅茶の葉っぱを大量にシンクの上に撒き散らしていたりする中、ゆかりは突然の恵みの言葉にキョトンとなった。

「はあ?」


 ゆかりの視線を無視して、飲み残しのコーヒーをグッと飲み干す恵。

「先輩と辻倉さん、本当にできてたんですね」


 恵と一緒のようにグラスの水を飲んでいたゆかりがその水をちょっと吹いたりしていると、カウンターの中のマスターが焦った声を上げた。


「め、恵ちゃん!」


 恵はそのすべてのことを無視すると、カバンからサイフを取り出した。

「彼氏のために、特製のステーキをわざわざここで振舞ったりなんかして。まさか本当にそこまでなってるなんて思いませんでした。じゃあ、ごちそうさま」

 そんな言葉をお勘定を残して恵は店を出て行った。




(やれやれ、困った子たちばかりだよ。なんで草壁クンが関係してくると話がいつもこじれるんだ?)

 それから、恵の去ったあとの食器を下げたりしている間、ずっと不機嫌な顔して黙り込んでいるゆかりを見てマスターも弱っていた。

 

「分かってると思うけど、あの二人、ただそういう芝居してるだけだからね」

「なんでマスターがそんな弁解じみたこと言うんです?」

 こういうことになるとなかなか機嫌の直らないゆかり。

「ランチの件だって、草壁クンに世話になったお礼だけど、プレゼントしたり二人で会うよりも、ここなら気軽にできるからって、あやちゃんのほうから申し出があってさ。気を使ってるんだよ、あやちゃんなりに」


 優しく教え諭す言うにマスターの言葉に

「気を使う必要なんてどこにもないと思いますが」


 ツンとソッポを向くゆかり。いちいち反応がひねくれている。

 マスターも密かにため息ついて黙り込むしかなかった。



”顔を合わさなければ、そのうち離れてしまう……”


 取り澄ました顔で黙り込むゆかりの頭の中で、さっきの恵の言葉が何度もリフレインしていた。お互い忙しくて、ゆっくり顔を合わす機会もない現実。

 しかも、お互い『ただの友達』同士――。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 そのころの長瀬ゆかりが普段、双葉荘でどのような生活を送っていたかにもちょっと触れておく。


 葉月家のお手伝いさんだったころの制服は割烹着と白手ぬぐいを姉さん被りだったゆかりだが、旅館に配属されると制服は薄い青色したツナギに作業着となった。これに野球帽のようなツバのついた帽子が御そろいとなっているが、要は旅館の清掃員の制服である。


 葉月家ではお掃除ばかりやらされていたが、旅館では……やはり掃除ばかりやらされた。

 客室の清掃、廊下、ロビーの掃除。そしてもちろん各フロアに設けられているトイレの掃除。


 一応、葉月家のお手伝いというのはメインの仕事じゃなくなったとは言っても、暇があったらそちらの用事も時々頼まれることもあった。

 つまり、請け負わされる業務の幅は以前より大きくなったのだ。



 葉月家の仕事だけしていたらいい頃は、お昼どきや午後なんかには休み時間もかなり余裕を持って取ることができたが、今は食事休憩以外にまとまった休憩がない日もしばしば。

 そのわりには体がそんな生活に慣れたせいか、最初のころほど疲労は感じていないらしいのが、このお嬢様のたくましいところ。


 未だにあのオンボロ寮に一人で寝泊りしているが、寝つきは割りとよく、寝覚めも悪くなかった。

 

 

 もらえるお休みも一泊二日みたいな日程のこともあれば、本日みたいに半休、つまりお昼に上がって翌日朝早くの出勤。なんてこともあった。いずれにしてもまとまった休日というのはほとんどない毎日。


 それでもオンボロ寮じゃなくて、今ではすっかり住み慣れたひまわりが丘のマンションで寝れるというだけで体も気分も随分と楽になるものだった。


 


 その日も、午後ゆっくり目にひまわりが丘についたゆかりは、数日ぶりの自宅ですごす夜に向けて、簡単な夕食の買い物でもしようと近くのスーパーで買い物をしていた。


 駐車場も充実しているので、車で来るにはちょうど便利でそこそこ売り場も大きいから、普段の買い物なら生鮮食料品から日用雑貨までそこだけで済ませることのできるような店舗。


 幼稚園のお帰りに子供といっしょに買い物カートを押す奥様たちがちらほらと見えるようなそんな時間帯のことである。


 

「何作ろうかな?あんまり買いこんでも、明日になったら、向こうに行っちゃうから使いきらなきゃいけないけど……かと言ってお惣菜の味はもう飽きちゃったし」


 って思いながら、まだ空の買い物かごを下げて売り場をウロウロしているとすぐ目の前で同じように買い物カゴを下げている草壁の姿を見つけた。



「草壁さんもお買い物ですか?」

 後ろから声を掛けたら、結構面白い顔をして振り返った。そんなに驚かなくても。私だって一応、ひまわりが丘在住なんだから、このあたりに居たって不思議はないはずなのに、人の顔を見て「なんでこんなところ居るんですか?」って不思議そうな顔をする。私は双葉荘の人じゃないんですが。


「夕食の買出し。ゆかりさんお休みですか?」

「半休もらって帰ってきました。朝にはまた双葉荘ですけど……なんか、結構いろいろ買ってるんですね?まとめ買いですか?」


 

 草壁だって一人暮らし、しかも一応自炊派。なのでスーパーで買い物はするのである。しかしそんなゆかりの言葉通り、草壁の買い物カゴに今入っている食材は普段の彼の買い物にしては量が多かった。


 

 それにはこんな事情がある。

 実は今晩、同部屋の長瀬亮作とツルイチの2人分の夕食もまとめてつくることになっていたのだ。


 基本的には、各自勝手に自分のペースというルームシェア生活を送る草壁たち3人。だが、一人結構マメに自炊する草壁が夕食を作る時に、他の2人からついでに自分たちの分も作ってくれないか?というように頼まれることもたまにあった。

 亮作からは月に2,3度ぐらい。ツルイチの場合、夜は遅くなることも多いので頻繁には言われないがそれでも今まで4,5回ぐらい作っていただろうか?

 もちろん、タダで頼まれる訳じゃない。基本実費払い、とは言ってもそれなりにお礼がわりの色はつけてくれた。例えば実際のところ300円かな?と思っても4、500円ぐらい出してくれる。手間賃代わりという意味もこめて。

 どうせ作るなら一人も二人も三人も大した違いはない。しかもそれで食費はちょっとお得になる。言われたら草壁も案外と快く応じていた。


 味のほうも案外と好評。

「うん、しっかりと出汁をとって味噌汁をつくるなんて感心です。今の定食屋なんていい加減なところも結構ありますからなあ」

 ツルイチなんかからは味噌汁に毎回お褒めの言葉を頂いたり。

「草壁クンの味付けって、少し甘めなんだよね。安心して食べられる味で結構スキだよ」

 亮作からの受けも良かったりする。



「へえ。そうなんですか……」

 そんな事情をひとしきり耳にしたゆかりは感心したような声をあげた。それを見て、草壁が

「ゆかりさん夕食どうするんです?」

「まだ、全然決めてなくて、ほら、まだ買い物も決まっていないでしょ?……いいなあ……私、一人分だけちょっと作るのも大変だなって思ってたんですよねえ……いいなあ亮作は作ってもらえて」


 ゆかりがおねだりするみたいなことを言うので草壁は思わず吹きだした。


「期待されても僕の料理の腕は、完全に素人ですから。それでよければうちで今晩は一緒に食べます?」

「あ!いいんですか?」

 言われたゆかりが急に嬉しそうな顔をした。それはいいがあんまり期待されても困る。草壁が改めて大慌てになって念を押した。

「何度も言いますけど、普通っていうか、大したことのないありふれた晩飯ですからね!」

「いいんです、それで。じゃあ、お代どれだけだしたらいいんですか?」

 

 しばらく、なにか言いたげにじっとゆかりの顔を見たのち、

「ご馳走しますから、いいですよ」

「そんなあ!他の二人からはお金とっているのに私だけ特別扱いしないでくださいよ」

「費用なら、他の二人からもらった分であと一人分ぐらい充分捻出できそうだし」

「そういう問題じゃないと思います。私もちゃんと払いますから」


 ゆかりの言うことのほうが正しいんだろうが、草壁の言いたいことはもうちょっと違っていたりする。少し拗ねるような顔をしながら、彼はこんなことを言い出した。


「だって……」

「だって、なんですか?」

「本当は、ご飯でも誘いたいけど、来てくれないんだったらせめてうちの夕食ぐらいオゴらせてもらいたなあって」

「それとこれとは話が違うことじゃないですか!で、他の二人からはいくらもらってるんですか?」


 350円をゆかりから押し付けられるようにして手渡される草壁だった。



「まだデートとか言ってるんですか?もうそういうのは諦めてください。ところで、帰り私クルマで来てるからいっしょにマンションまで戻りますか?」


 またもや鉄壁のガードにあって、ちょっとふてくされ気味の草壁にゆかりがそう言うと。

「僕、帰りにちょっと寄るところがあるから歩いて帰ります。先に帰って置いてくだささい」


 というわけで、二人はそのスーパーを出るところで一旦わかれた。




 さてその日の夕刻頃。

 時間に余裕を持って、長瀬ゆかりはおとなりの307号室。つまり草壁たちの部屋へ夕食をご馳走になるために顔を出した。

 

 実費で300円いくかいかないかという、ごくありふれた晩御飯をご馳走になるだけのこと。手ぶらで来るとばかり思っていたら

「これ、差し入れです。冷蔵庫に冷やしてあとでみんなで食べましょうよ」

 そう言ってアイスクリームを4つ持ってきた。

「気を使わないでいいっていったのに、ただの普通の晩飯ですよ?」


 アイスクリームと言ってもこのお嬢様がガリガリクンを4つ買ってくるわけはない。近所のコンビニで手に入るがちょっとお値段の張るハーゲンダッツ。多分今晩の食費より高いぞ。



「あれ?ツルイチさんと亮作は?」

「ああ、二人とももうちょっとしたら帰って来るってメールがありました」

「ん?ということは一緒に行動してるんですか?まさか、また揃って競馬に?」

「さ、さあ……ぼくはそこまで詳しいことはわかりませんが……あっ、料理まだ出来てないんで、掛けて待っていてください」



 そういうとエプロン姿の草壁は、ゆかりに背中を向けてキッチンで忙しそうに調理に戻っていった。

 途中、ゆかりが「何作っているですか?」と覗き込むと、期待されるほど大したものは作ってません。恥ずかしいのであんまり見に来ないでください、と言って、ゆかりをシンクから引き離そうとするので、仕方なくゆかりは草壁の背後のダイニングテーブルに大人しく座ってテレビをぼんやりと見ているしかなかった。



 草壁の場合、料理の腕なんか完全に素人。

 ゆかりのほうが料理の腕は確実に上だということは重々承知のことである。期待されても困るのだった。


 作れるレパートリーはたかが知れている。しかも自炊歴は一人暮らし歴と同じだから、経験だって少ない。

わざとらしく、レシピ本をめくることもできない。というか作りなれない料理を作って失敗なんてことになったら目も当てられない。というわけで、本日の夕食もごく普通の献立を予定していた。


 

 一方、テーブルに座って草壁を見守るゆかり。

 いいにおいがするのは、お鍋の様子をみないでもよくわかった。

 見ていると、草壁はあわただしく動く。しかも、ちょっとした揚げ物をしたり、別鍋では煮物を作っていたり。あっ、切った食材を置いておくのに、ちゃんとステンレスのバットとか用意してるんだ。案外とマメなのね。それに包丁捌き結構上手。あれレンコンだよね?うわっ料理用の刷毛とかもある!草壁さん、道具ちゃんと揃えてるんだ。なんとなく包丁の切れもいい感じ。ちゃんとマメに磨いでるのかな?



 目の前の草壁が、包丁を使い終わるタイミングを待ってゆかりが声をかけた。


「あれ、おいしかったですか?」

 

 ん?と刷毛を持つ手を止めて草壁が振り返る。

「あれ、ってなんですか?」

「えっと、なんて言ったっけ……あっ、そうそう、シャリアピンステーキ!」

 怒ってるわけじゃないが、妙に明るい笑顔は明らかにわざと作っている。口元をちょっとゆがめていると余計に皮肉な色が浮かんで見える。

「知ってるんですか?」

 まただ。と思いながらもいきなりの言われて草壁も驚く。まったくデートには応じてくれないくせに皮肉だけは忘れない。

「知られちゃまずいの?」

「別に、まずくはないですよ」

「私がいないほうが、何もかもうまくいったりするもんなんですねえ!」

「……知りませんよ!」

 ゆかりがからかうような笑顔で、実に嫌味なことを言っていじめてくるので、草壁もちょっと腹を立てたようにして、ゆかりに背を向けて黙り込んだ。


「あっ!何?からかわれて怒ってるの?」

「別に……」

 少し、悪ふざけが過ぎたかと思いながらゆかりが明るい声で、草壁の背に声をかけるが、急に口数が少なくなった彼の返事はそっけなかった。

 あんまりいじめすぎちゃったかしら?

 ゆかりもちょっと反省してみたりしている。

 そして、二人の会話が止み。ダイニングにはテレビの音だけが小さく響いていた。




 それから、どれだけ時間が経ったかは定かでない。おそらくほんの10分か20分程度のことだと思われる。


 ツルイチと亮作の帰宅してきた物音に、ゆかりは目を覚ました。

 黙って草壁の後ろ姿を見ているうちにダイニングテーブルの上で寝込んでしまっていたゆかりだった。


「おかえりなさい」

 ゆかりは、いつの間にか自分の肩に掛かっていた草壁のドテラを隣の席の背もたれにさっと掛けた。

 草壁の同居人の二人がその部屋に足を運んだときには、もうすっかり寝ぼけ顔もどこかに消えたゆかりが、何事もなかったかのような笑顔で二人を立って迎えた。


 

 

 そうして307号室は夕飯と相成った。

 考えてみたら、こんな夕食って本当に久しぶりだとゆかりは思った。

 小さなお茶碗によそったご飯と、割り箸じゃない塗りのお箸。それに味噌汁の入ったお椀に、オカズが二品。「オカズ足りなかったら、これでも使います?」と言って、テーブルの真ん中に置かれたノリタマ。

 本当に普通の夕食。それを1人じゃなくて4人ぐらいの人間で、軽いオシャベリをしながらゆっくりと食べる。

 一人暮らしになってもそうだし、増してや双葉荘の寮暮らしじゃあ、ちょっと味わえない時間だった。


 そして草壁の作ってくれた料理も、本人の謙遜のわりにしっかりとしているのだった。

 主婦歴の長い人だってこれぐらい家庭料理をしっかり作らないだろうと思う。いや、むしろそうじゃないから手を抜かずに作るのだろうか?

 けど、この料理、普通だと言うけど、ちょっと違うんじゃないかしら?



 4人でテーブルを囲んで雑談を交わしながら、ゆかりがそんなことを思っていた。

 



「ご馳走様!草壁クンおいしかったよ!……ふうっ、食後のお茶もうまい!悪いね、料理だけじゃなくてお茶まで淹れさせて」

 やがて全員、出された草壁の手料理を完食したあと、やはり草壁の淹れた熱いお茶を飲みながらしばらくまったりしているときだった。


「このあとアイスクリーム買ってあるから、みんなで食べましょうか?」

「ん?お姉ちゃん、そんなもの差し入れに持ってきたの?お酒かと思ったけど」

「……なんで私だったらお酒。みたいなことに勝手になるのよ!私、明日早いから今日はこれで帰って早く寝るわ」

「そうなんだ、残念だね。ところで、草壁クンさ、今日の料理、これ本当に350円でいいの?」


「うん……いいよ」


「そうですなあ、私も食べながらずっと思ってたんですが、昨日聞いてた献立とちょっと違ってませんか?」


 ツルイチの言葉を聞いてゆかりも草壁をチラッと見た。同部屋の二人は前日に今日の献立を聞いた上でお代を支払ったらしい。ゆかりは細かい献立まではあえて聞かなかったのだが、出された料理はとても350円には見えなかったのだ。


「そうそう、キノコの炊き込みご飯。って言ってたけど、イクラと三つ葉が入ってるなんて豪華すぎるでしょ?」

「牛肉のアスパラ巻きも、これいい肉ですよ。ちゃんとサシが入ってる。これ、すき焼き用かしゃぶしゃぶ用のいいやつでしょ?以前は切り落とし肉でしたけど。それに、一緒に素揚げしたレンコンそえて、中華風の甘辛餡かけて……手間かけてますねえ。レンコンのこの揚げ上がりは粉打ってるからでしょ?私わかりますよ。職人的な一手間かけてるし」

「味噌汁にユリ根はいってるけど、わざわざこんなの買ったの?草壁クン、余りモノの野菜放り込んでいつも作ってるくせに?」

 何度か草壁の手料理を食べているツルイチと亮作から突っ込みが入るたびに、草壁は「いや、まあ……」と照れたような笑いを浮かべるばかり。


「それとさ、野菜と鶏肉の煮物なんて作るって言ってたっけ?僕聞いてたのは、胸肉余ってるからいつもの鶏から揚げちょっと添えとく、ってハズだったけど」


 亮作からそう言われたとき、相変わらず草壁は曖昧な照れ笑いを浮かべて

「ああ、それ。うん……けど、普段何食べてるか知らないけど、多分野菜不足してるだろうなあって思ってさ。もう寒いからサラダより暖かい料理でと思って」


 チラッとゆかりが草壁を見たが、彼はその視線に気づいていないみたいにして亮作のほうを見ているだけだった。



「まあなんにせよ、草壁クン、これ本当に350円でいいの?お足出てるでしょ?」

 ツルイチがそう聞くと、草壁はさらに照れたような様子で、頭を掻きながらこう言った。

「実はバイト代が入ったんで。それで、普段お世話になってるから、ごちそうしたいなあという。……ま、そんなところです」



「ありがとうございます!今日はとてもおいしかったです!」

 草壁の言葉を聞いて、笑顔のゆかりの言葉がダイニングに大きく響いた。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 その翌日、双葉荘に戻ったゆかりには、さらに新しい制服が支給された。

 割烹着、ツナギ、と来て今度は厚手のビニールエプロンをあてがわれたのだった。


「おい、あれ割烹着の子だよな?」

「ずんぐりした割烹着脱いだら、やっぱ、いいスタイルしてんなあ!」


 離れたところで、厨房の料理人たちの密かな噂の的になりながら、さっそく新しい職場に配属となったゆかりが目の前にいる先輩バイトたちに殊勝げに「よろしくお願いします」なんて頭を下げているのだが、言われた先輩の3人のほうは間抜けな顔で棒切れのように突っ立って、この美人エプロンをぼんやり見ているだけであった。



「こちら、今日から、洗い場のほうにも入ってもらうことになった長瀬さんよ。草壁クンが来られないときの応援にちょくちょく来てもらおうと思ってるから」


 時間帯としてはこれから夕食の準備が始まろうという夕刻前ぐらいである。いつものとおり、若女将の暢気そうな声が洗い場に響くと、ちょっと離れた一続きの厨房の料理人たちも

「あのお姉ちゃんが今度から洗い場くるんだってよ!」

「彼氏いるのかな?」

「いるだろ!あれぐらいの子なら」

「バカヤロ!仕事しろ!」



 厨房の料理人たちからも注目を浴びながらの簡単な自己紹介が済んだと思ったら……。


 若女将は相変わらずのマイペースで

「長瀬さんに、お仕事のこと、いろいろ教えてあげてね」

 という簡単な一言を、例の洗い場新入り3人組に投げつけて、さっさと厨房を後にした。



 草壁からここの新入り3人のことを何度か聞いていたゆかりである。若女将が去ったあと、おそるおそる先輩にあたるこの3人の様子を伺っていると、全員、固まっているばかりである。

 うわっ、反応がない!ど新人が目の前に立っているんだけど、なぜかこっちを見ない。目を合わせないようにして、固まっているじゃないの!どうなっているのよっ!



 仕方ないので、ゆかりのほうから

「最初、何をやればいいんですか?」

 と聞いてみたら、一瞬、わけの分からない間が空いて、やっぱり3人の誰一人ともゆかりとは目を合わせることなく

「さあ……なんでしょう?」

 と、同じように揃ってクビを傾げる。


「えっ、私、今ここに来たばかりで何もわからないんですけど」

 驚くゆかりに向かって、福田が当たり前のことみたいに

「僕らも仕事のことよくわかりません」

 波間を漂って、ようやく船に引き上げられたと思ったらそれも難破船だったというわけだ。



 そんなわけで、ゆかりと3人組が広い洗い場の真ん中で揃って呆然となって立ちすくんでいると

「割烹着のお姉ちゃん、コッチおいで!」

 と、調理場の板さんの一人がゆかりを手招きするのでそっちに行って見たら、こんなことを言われた。


「残念だが、あいつらは、全員使えない。最初は俺らが指示するから、それで動いてくれ」

 

 


 という訳で、調理場の板さんから皿の場所や、並べる場所とタイミング、そして作業の一連の流れまで、すべて指示を受けたゆかりが、それを他の3人へと適当に割り振るというふうに仕事が始まった。

 

「そうそう、それでいい!お姉ちゃん物覚えが早くて助かるよ。けど、割烹着着てたのはあれなんで?あっそうだったの?じゃあ家政婦さん?……違うの?今、便所掃除!なんで掃除ばっかりしてるの?……なんだよ、そのニヤニヤ笑って、『ちょっと』なんてもったいぶるなよ!あっその皿、向こうの下段の棚の真ん中にあるから」


 今晩は宿泊客も少ないということもあって、調理場の職人たちもこの今まで謎だった美人な元割烹着に色々と暢気な言葉をかけながら、ちょっと和気藹々な雰囲気で仕事が進んだ。


 驚いたのは、ゆかりが一度で覚えたことを3人組みは未だに覚えてないということだった。


 そんなわけで、着任後約10分もすれば、草壁に代わる洗い場リーダー代行の役割を担うことになったゆかり。

 とは言っても仕事に慣れないものだから、自分がまず動いたあとこの木偶の坊たちに指示をするというのはかなり行動の効率が落ちるのはしかない。

 そして、やってみて気づいたのだが、きつくても自分が二倍動いたほうが、この3人に仕事をさせるより早いということだった。

 


 結局、3人組を迎えた初日の草壁もそうだったように、本番の洗い物にかかる前にすでにぐったりしてしまっていた。

 


 しかし、初日は、さすがに洗い物まで4人でまかせとくのはマズイと思った、女将レイコが派遣した増援を迎えることでなんとか終えることができたが、慣れない仕事に加えて、まったく非効率的な動きしかしない役立たずを使うというストレスのせいで、初日の仕事を終えたあとゆかりはあの寮で泥のようになって寝てしまった。




 問題はそれからだった。

 それまで掃除中心だったゆかりの仕事にだんだんと旅館のアルバイト仕事までが加わりだしたのだ。


 もっとアカラサマに言うと、草壁いないとき彼がときどき押し付けられていたような仕事をまるで草壁の代わりにやらされることとなった。


 10人乗りのワゴン車を運転して、少人数な客の送り迎え。

 夜のラウンジでのフードサービス係。

 客室の布団敷き。

 従業員の送り迎え。

 さらには、夜のフロント業務etc……。



 掃除や葉月家のお手伝いは昼間に終わるが、これらは夜勤仕事に近い。気がつけばもはや24時間体勢だ。

 

 もちろん毎日そんな調子じゃなくて、あくまで人手が足りないときのピンチヒッター。だが、その多くは「今日は人手が足りないし、草壁クンもいないから、お願いできない?」という若女将の依頼の言葉からもわかるように、草壁の不在の時に駆りだされることが多い。つまり、彼の代打みたいなもんだ。


 しかし、そうしてみると、ゆかりには気づくことがあった。

 洗い場の仕事、という触れ込みでこのバイトに入った草壁だが、いつの間にかいろんな仕事を押し付けられている、だけでなく、なんとなく先輩や現場の人たちからの受けもいいということ。

「草壁クンいないと、洗い場は地獄だよ。彼一人でなんとかまわしているんだから」

 初日に厨房の板さんはそんなことを言っていたが、考えてみたら草壁だってまだ新人みたいなものだろうに。

(なんだかんだで、しっかりしてるところあるのね)

 のほほんとしたお調子もの、って言う面ばかり見ているゆかりもちょっと彼のことを見直したりしていた。




 やがて一週間もすると……。


「岩城君。汚れた番重溜まってきたから、洗っておいて。半分片付けたら戻ってきてね!」


「福田君。その皿はあっち、で、この皿はあの棚」


「渡辺君!……って。何度も言うでしょ!食べ残しの料理から早く離れなさい!」

「でも、このブリの刺身うまそう……」

「……い、いくらなんでも、刺身はやめときなさいよ!」

「心配しなくても大丈夫です。ちゃんと醤油は用意しています!」

「私は、おなか壊すって言ってるの!そんな心配はしてませんっ!」



 すっかりリーダー役も板につくゆかりだった。




 そんなある日のこと、若女将からこんなことを言われたゆかり。


「最初はちょっと心配だったけど、立派に洗い場のリーダー役もこなしてるのね。さすがだわ。お義母さんも、面と向かっては言わないかもしれないけど、褒めてたわよゆかりちゃんの動き。大したもんだって」


 そんな言葉を聞いてちょっと苦笑するゆかり。

(心配って言うけど、全然フォローしてくれないじゃないの……)


「ゆかりちゃんも大変でしょ?本当、悪いと思ってるのよ、あれこれと仕事押し付けちゃって……」

 やっぱり、言葉とは裏腹にあんまり悪いとは思ってないような様子の若女将だった。ゆかりも半分あきれて何も言えずにいると、芳江はさらにこう続けた。


「けど、推薦の言葉どおりね」

「推薦?」


 洗い場に自分を入れたのは、若女将の判断ではなくて別の人の推薦があったからだそうで。となると――。

(レイコ叔母さんが、推したのかしら?)

 とゆかりが考えていると。


「草壁クンがね、自分の居ないときは、長瀬さんに任せたらいいって言うのよ!」



 あんにゃろっーー!




第34話 おわり


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